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作品名:路地裏の猫と私 作者:じゅんしろう

第2回   2
まず初めに疑問に思ったのは、これだけの大所帯の食べ物はどうしているのかということであった。猫たちはとくに痩せているということもなく、子猫たちなんかは丸々と太っているものがほとんどで、全体に食べ物にこと欠いているようには見えない。人に対しては警戒するが、特別にぎらついた目つきで見返すというわけでもない。
 夜、路地に面した居間の窓際で、そのようなことを考えていたら、人の通る足音がした。と、隣の空き家のあたりで立ち止り、なにやらがさごそと音が聞こえ、すこしたって、また引き返してきて家の前を通り過ぎていった。そういえば、前から夜になると人が行き来しているということに気がついた。その時々は別に気にも留めなかったが、どうやら何かをしているらしい。また、男なのか女なのか、まずそこから調査をすることとした。
 次の朝、いつもより早めに起きて、隣の家の前にいってみた。玄関は特に変わった様子はない。ところが、玄関の横にある半畳ほどの物置小屋を見てみると、発泡スチロール製の小さな出入り口がある箱が二つ重なって置いてあった。その前には、プラスチック製の容器が三つ置いてあり、それぞれにキャットフードや水が入れられていた。それぞれほとんど残り少ない状態になっていた。なるほど誰かがここで餌を与えていたのかと、ひとり合点をした。子猫たちといえば、少し離れたところで、朝のラジオ体操よろしく何匹かがじゃれあっていた。子猫特有のジャブを繰り出し合っているもの、プロレスごっこをしているもの、背中を丸めて威嚇し合っていたかとおもうと、追いかけっこをしているものもいる。親猫たちは、じつと子猫の様子を見守っているというように見受けられた。
 しかしながら、どれどれが親と子なのかよくわからない。そうっと、子猫たちの方に近づいてみた。路地で遊んでいた子猫たちは、私に気がつくとすぐに散っていき、草むらでたしの様子を窺うようにしている。じつは私はある子猫に目を付けていた。子猫たちのなかで一番小さく、頭から背中にかけて大部分が真っ黒で、腹や足のあたりが白い、昔の漫画の、のらくろのような子猫であった。


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