死に神がむっとした顔になり、また蒼ざめた暗い顔に戻した。と、貧乏神と疫病神が同時に、お前はそのほうが似合っているぜ、と言い、こちらも負けず劣らず凄い顔でにやりと笑うと、死に神は苦虫を噛み潰したように、お前たちのほうがよっほど酷い顔だ、と顔を背けて呟いた。 「とにかく話はこれで決まりだ、善は急げというぜ。もう年も明け目出度い元旦正月だ、さっそく七福神のところへ掛け合いに行こうではないか」と、貧乏神は早くもその気満々とという表情である。 死に神が、うむ、異存はない、と言うのを、疫病神が思案げに、「そこで談合が上手くいったら、われらはどのような名前を名乗ろうか」と、思案げに言った。 「名前とは?」と、貧乏神がきょとんとした顔をすると、「ほら、あいつら宝船に乗り、七福神と称して悦に入るだろうが」と,疫病神がじれったそうに言うと、「そうだなあ、三凶神というのはどうだろう」と死に神が即座に答えた。 「三凶神?縁起の悪い名前だなあ、他にないのか」と,貧乏神が苦々しく言うと、「しようがあるまい、まさか新三福神と名乗るわけにもいくまいが」と疫病神が満更でもなさそうな顔で言った。そこで貧乏神も、「しょうがない。まあ、それで手を打とうかい」と渋々承諾した。 「では貧乏神の言うとおり、さっそく七福神に掛け合いに行こう」と死に神が言うのを、疫病神もうんうんと嬉しそうに頷いた。 「七福神も年に一度のかきいれどきだ。今頃は浅草寺にたむろしている筈だ、行こうぜ皆の衆」と、貧乏神は浮かれ口調で言った。 というわけで、大晦日の宵の口から呑んでいた濁酒の酔いにまかせてこの三凶神、つるんで浅草は浅草寺へとやってまいりました。
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