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作品名: 作者:銀河

第5回   5

目の前には綺麗な海が、広がっていた。
荒々しくうごめく波が私の心を表しているようだ。
そう、人の心もこの海のように、荒々しい表面と、湖みたいに、穏やかな表面を見せる…私の心は…いったいどっちなのだろう?
『次は、漣ノ。次は、漣ノ…』列車のアナウンスが、到着を告げた。
「さぁ〜降りるぞ」
高志は後ろで言っていたが、私は

「高志の練習している海だ〜」

といい、一目散に駆け出した。
駅は無人駅で、国道を挟んで、そこは海が広がっていた。
私と高志は道路を渡り、ビーチに入った。
「綺麗ね…」
人が、ロマンチックに語っていたら…
「そうか?そこに、ゴミなんて落ちているけどな…ハハハ」
「何よ〜人が感動に浸っていたのに!!」
ゴミは落ちていたけどこの波たちが、いつかは洗い流してやると言わんばかりに、海は綺麗だったのだ。
そう思ったとき、高志が、私の胸の内を悟ったのか、こんな事を言った。
「ここの海は、普段は荒々しいが、今日はそうでもない…だから、ゴミが落ちているんだよ、運が悪かったのかな?」
私は、すぐに、
「そうかもね」
と言った。


この時間が、続けばいいと思ったのは気のせいだろうか?



桜はずっと波を眺めていた。
今日は、砂浜にいつも居るはずの、ライダーたちも、今日はなぜか居ない。
俺が、一番この海が綺麗だと思うときは、夕暮れと、朝日が昇る早朝だ。
それを、桜にも見せてやりたいと思ったせいだろうか…俺は、こんなことを言い出した。
「今日は、ここに泊まって行かないか?」
うん?何を言い出すのだ?俺…



いきなり、高志が
「今日はここに泊まっていかないか?」
と、言い出した。
「いったい何を考えているの?お金だって無いし」
「金があればいいのか?」
「そういう問題?」
「金なら、ちゃんとあるし、この近くに、以前使った民宿があるんだ。民宿といっても、とても綺麗だぜ。温泉もあるしな」
「じゃ〜泊まっちゃうかな〜」
「桜に、ここの夕日を見せたいのだ…それを見てからだと、もう列車は無いんだ…いいだろ?」
彼の、瞳が恋しそうに見つめる…。


その民宿は、民宿といった感じではなく、旅館に近かった。
料金は、少々高かったが、高志が、奮発をして払ってくれた。
部屋は、10畳と二人にしては、少し広かった…全体的に見て、客はそんなに泊まってはいないみたいだ。


とりあえず、親にそれぞれ電話した。
俺は、山岸先輩の家に泊まる。
そして、桜は昔の友達の家に遊びに行くと連絡した。
まぁ〜初歩的な嘘になってしまうが…。
ここの民宿は、何と言ってもご飯がおいしいのだ。
海産物から山の倖まで、ピンからキリまである。
なので、少々料金設定が高いのかもしれない。
「トホホホホ…」



そんなわけで、おいしい夕食を終えた。
「あ〜美味しかったね」
「だろ、ここの民宿は回りの宿屋とは一味違う。そこが、いいのかもしれない」
「そうね、高志がそう言うのもわかる気がする」
「さて、何をする?」
「そうね…海でも見に行かない?」
「そうだな…海、見に行くか?」
そういい、俺たちは、ツッカケを履いて、砂浜へ出た。
月は、三日月で、暗い砂浜をてらしていた。
周りには、俺たちのほかに居ない…。



数分たち、桜は飽きたのか、砂山を作り始めた。
地面にかがみこみ、小さい背中が月明かりに照らされている。
その時、彼女が俺に背中を向けながら言った。
「高志、知ってる?人が死んだらどこに行くか…」
「さぁ〜どこに行くんだろうな?天国にでも行くんじゃないか?」
「本当にそう思う?」
「ああ、そうじゃないか?」
彼女の瞳が、こちらを向いている。

真実を、知りたそうに…

「でも…でも、彼はそんなところには行っていないわ…」
「彼って…いったい誰?」
彼女は、ハッと目を見開き、俺を永久に失ったような目で見つめた。
「ごめん…なんでもないの」
「何でもないわけないだろ?俺に、ちゃんと話してくれ」
桜は、最初から最後まで、話してくれた。
俺にだ。
俺は…残酷すぎて、想像がつかなくなっていた。


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