★ 桜ヶ丘に夏が来た。 高校も夏休みに突入した!! 先輩の言っていたキャンプは延期になってしまった…噂では彼女が出来たとか。 木々が青々と茂り、そして、蝉時雨がすごい。 今日は、水泳日和だ!!しかし、部活は…休みだ。 久しぶりの休みだというのに、俺は行く当ても無く、水泳バックを持って、家を出ようとしたときだった… 「高志、どこ行くの?」 「お?何だ、桜か、市民プールに行ってくる」 「市民プール?私もいこうかな〜」 「え?お前も来るのか?」 「だめ?」 彼女の瞳を見ると、NOとは言えなかった…。
「すごい人ね〜」 市民プールは、すごい人で、ごった返していた。 「今日は、プールやめるか…どこか、違う場所にでも行くか?」 「そうね〜じゃ〜いつも部活に行っているという、海水浴場にでも行かない?」 彼女の瞳が、恋しく俺を見つめる。思わず、胸が『きゅん』となる… 「そんなところ行ってどうするんだよ」 「いいじゃない、ね?海に行こう?」 今は、まだ昼前の10時。これから、バスに乗って、列車に乗ったら… 「着くのは、1時になるけれど、いいか?」 「うん、いいよ」 彼女は、明るく言った。そして、俺たちは、バス停へと、向かった。
★ バスは、駅前に降ろされ、ここから、思いっきり、田舎の町へ行く列車に乗る。 一両編成で、オレンジ色ボディーのキハに乗る。 ここからは、完璧にローカルだ。 しかし、ここの景勝は有名で、この辺の人なら、この列車からの風景の評価は高い。 俺は、そうも思わないが…。 「この列車の風景は、本当に綺麗らしいぞ」 「言われなくてもわかるわ…この風景は、大切にしていかなくちゃ…」 切なそうに、遠くの家、山、田んぼを見つめる。 「そう…そうかもな」 俺は、今思った。そうか、彼女を入れれば…いい景色になるんだ…。 やっと、わかったような気がした…この風景の意味が…。
「あれがいつも合宿に使っている海さ」 俺は、窓から身を乗り出し、指をさした。 「あれがそうなのね。でも…誰もいないわね〜シーズンなのに…」 「だってそりゃ〜町外れのほうだし、人がたくさんいる海岸はもっと町よりだぜ」 「そうなの」 「そっちの方にでも行くか?それなら、もう一駅行くけど…」 「ううん…ここでいいわ」
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