☆ 「こんにちは!!」 「あら、桜ちゃんいらっしゃい。待っていたのよ」 「おばさん、お世話になります」 「あら、何緊張しているの、自分の家だと思って」 そこは、5年前とちっとも変わっていなかった。 変わっていたとすれば、高志のおもちゃがなくなったくらいだ。 「高志は、今日どうしていますか?」 「高志はね、海に行っているわ、水泳部に入っていてね、合宿ですって」 「高志が水泳部ですか?」 「ええ、まぁ〜昔から海とか、プールが好きだったからね」 「そうなんですか」 そう、高志はプールが好きだった。 私が、引っ越していく日も、プールに行くことを約束した。
あの日も、暑かったな…。
「桜ちゃん、今日はすき焼きにしようと思うけれど、いいでしょ?」 「すき焼き、私大好きなんです」 「それじゃ〜いいわね。おばさんちょっと買い物に言ってくるから、留守番頼めるかしら?」 「ええ、かまいませんよ」 「じゃ、ちょっとお願いね」 そういい、おばさんは買い物袋を下げて、買い物に出かけた。 私は、その間に、飯田家の家の中を見て回ることにした。 一階は、きちんと整えてあり、あまり変わっていなかった。 二階には、寝室と、昔高志とよく遊んだ、子供部屋がある。 あの部屋は、かなり広く、二部屋取れるようにしているらしい。 きっと、片方が私の部屋になるのだろう。扉を開けてみた… 部屋は、きちんと片付けており、清潔感がある…と思ったら、部屋の半分だけだった。 おばさんがきっと私のために部屋を空けたのだろう…もう半分は、物がそのまま床に置いてある。 「たくもう…」
私は、片付けを始め、1時時間後には、終わった。そのまま、高志のベッドに、横になって、天井を見上げていた。幼稚園のころの記憶がよみがえる…。 「高志は、大きくなったら何になるの?」 「決まっているじゃないか、俺は水泳でオリン…オリン…まあいいや、水泳の選手になるの」 「ふう〜ん」 「桜の夢は何だ?」 「高志のお嫁さんになるの!! 」 「へ?お嫁さん?」 「そうなの」 「ふう〜ん…」 その後、高志気まずい顔していたっけ…そして、二人とも黙ってしまった。
☆ ふと気がつくと、あたりは夕日に照らされていた。 4時くらいだろうか… 床には、半そで短パンの男性が寝ていた…高志? 「たかし?高志、なのね!!」 しかし、彼からは反応が無い…熟睡しているのだ。 「床に寝るなんて」 仕方が無く、私は持ち上げようとしたが、やはり男の子だ、重い…それに、水泳をやっているせいか、体つきもいい。 私は、一瞬ぎょっとしてしまった…。 「このままでいいか」 あきらめた私は、高志をそのまま床においておいた。 一階に降りると、おばさんはまだ帰っていなかった。 今日から、飯田家に、お世話になるということは、高志とは一つ屋根の下で、生活をすること。 胸が高鳴っているのは気のせいだろうか…?
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