★ 家も街も静まり返った頃、俺は天井を見ていた。 斜め左を見ると桜が寝息をたてている。 「ちくしょう…眠れねーよ」と一人で言ってみる。 あれは俺が小学6年の頃だった。 やはり、暑い夏休みの前に桜は引っ越していった。 「プールに行くって約束したじゃないか!!」 「高志ゴメンね…そのうちまた帰って来るから、そしたらさプールにでもどこにでもいこ?」 「ほんと?」 「うん、桜が嘘ついたことある?」 俺も桜の瞳にも水が溢れている。 「じゃ…またね」 「うん、きっとだよ」 そして、この街を去っていった…
朝日が窓から入ってくる今日で学校も終わり…五日後にはまたキャンプ…とにかく今年の先輩は燃えているのだ。 目を開けベッドから起きようと思った瞬間俺はぎょっとして、ハッとした。 桜がこちらを目の前から見ているのだ…。 「うわ!何だよ、いきなり」 「高志の寝顔が可愛いなと思って」 「かわいいとはなんじゃい!」 「あら、年上のお姉さんに向かってなんじゃいとは何ですか!」 「でも、精神年齢は俺のほうがうえだと思うけどな!」 「そうかもしれないけれどー」 実際そうなのだ、桜は実際天然ボケのところがある。最後の会話のように、語尾を延ばすところなど…まぁ〜そこが可愛いのかもしれない…。 「かわいいよ」 俺はぶっきらぼうに言った…。 「え?何が?」 やっぱりこいつは正真正銘のボケだ!! 「いいや、何でもない…」 桜ヶ丘に夏が来る…。
☆ 「さて、荷物はこれでよしと…」 私は坂野 桜、高校三年受験生。 山之上教育大付属山之上高等学校に通っている。 俗に言うエリート高校なのだが、そうでもない…。 もともと、女子校からの転移なので、8割が女子だが、男子も少々いる。 世間では、エスカレーターとも言うが、現実はそうでもない…。 恋愛もせずに、ただ黙々と勉強するのだ。 そんな生活に自棄がさして、クラスメイトに暴行や、最悪の場合犯罪にまで走る。 しかし、そんな奴らは先生の前だといい顔して、良い子ちゃんになるのだ。 これが、本当にエリート学校なのだろうか?時々疑問に思う…。 そんなある日、私もついに自棄が回り、親を困らせてしまった。 そんな親が提案したことは… 「桜、うちにこもっていてばかりはよくないな、そうだ…夏休みに、大学の下見と地元に有名なゼミがあるから、それを受けに行きなさい」 「その間、どこに寝泊りするのよ!!」 「以前住んでいたお隣は、お父さんの親友の飯田さんだったでしょ?」 母が、にこやかに言う。 「飯田さんには、もう話はつけてある。きっと、高志君もいるから、お前の励みになるだろう」 父は、タバコを吸いながら、私に言った。 「ちょっと、勝手に決めないでよ!!」 「いいじゃない、行ってらっしゃい」 とこういう流れで、飯田家にきてしまったのだ。
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