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作品名: 作者:銀河

第2回   天然ボケ

家も街も静まり返った頃、俺は天井を見ていた。
斜め左を見ると桜が寝息をたてている。
「ちくしょう…眠れねーよ」と一人で言ってみる。
あれは俺が小学6年の頃だった。
やはり、暑い夏休みの前に桜は引っ越していった。
「プールに行くって約束したじゃないか!!」
「高志ゴメンね…そのうちまた帰って来るから、そしたらさプールにでもどこにでもいこ?」
「ほんと?」
「うん、桜が嘘ついたことある?」
俺も桜の瞳にも水が溢れている。
「じゃ…またね」
「うん、きっとだよ」
そして、この街を去っていった…



朝日が窓から入ってくる今日で学校も終わり…五日後にはまたキャンプ…とにかく今年の先輩は燃えているのだ。
目を開けベッドから起きようと思った瞬間俺はぎょっとして、ハッとした。
桜がこちらを目の前から見ているのだ…。
「うわ!何だよ、いきなり」
「高志の寝顔が可愛いなと思って」
「かわいいとはなんじゃい!」
「あら、年上のお姉さんに向かってなんじゃいとは何ですか!」
「でも、精神年齢は俺のほうがうえだと思うけどな!」
「そうかもしれないけれどー」
実際そうなのだ、桜は実際天然ボケのところがある。最後の会話のように、語尾を延ばすところなど…まぁ〜そこが可愛いのかもしれない…。
「かわいいよ」
俺はぶっきらぼうに言った…。
「え?何が?」
やっぱりこいつは正真正銘のボケだ!!
「いいや、何でもない…」
桜ヶ丘に夏が来る…。



「さて、荷物はこれでよしと…」
私は坂野 桜、高校三年受験生。
山之上教育大付属山之上高等学校に通っている。
俗に言うエリート高校なのだが、そうでもない…。
もともと、女子校からの転移なので、8割が女子だが、男子も少々いる。
世間では、エスカレーターとも言うが、現実はそうでもない…。
恋愛もせずに、ただ黙々と勉強するのだ。
そんな生活に自棄がさして、クラスメイトに暴行や、最悪の場合犯罪にまで走る。
しかし、そんな奴らは先生の前だといい顔して、良い子ちゃんになるのだ。
これが、本当にエリート学校なのだろうか?時々疑問に思う…。
そんなある日、私もついに自棄が回り、親を困らせてしまった。
そんな親が提案したことは…
「桜、うちにこもっていてばかりはよくないな、そうだ…夏休みに、大学の下見と地元に有名なゼミがあるから、それを受けに行きなさい」
「その間、どこに寝泊りするのよ!!」
「以前住んでいたお隣は、お父さんの親友の飯田さんだったでしょ?」
母が、にこやかに言う。
「飯田さんには、もう話はつけてある。きっと、高志君もいるから、お前の励みになるだろう」
父は、タバコを吸いながら、私に言った。
「ちょっと、勝手に決めないでよ!!」
「いいじゃない、行ってらっしゃい」
とこういう流れで、飯田家にきてしまったのだ。


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