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作品名:サイレントジェラシー 作者:nottnghill_ann

第2回   2
   東神奈川で起きたカットサロン店主夫婦の事件は、早い段階で解決をみた。
  「カットサロン・スパイク」は、最近増えだした「1,500円カット」が売り物のカット専門店で、
  反町に二号店を出す程に店は繁盛していた。
   事件は「怨恨」の線が有力で、初動捜査の段階で数人の容疑者の名前が挙がっていた。
  事件発生3日後に、反町店の店長である被害者夫婦の甥の小松肇が自首をしてきた。動機は単純だっ
  た。小松の運営方針と技術に疑問を抱いていた、被害者である小松洋一郎といさかいが絶えず、被害
  者が店長更迭を画策している事を嗅ぎつけた容疑者である小松肇が、話をつけるために訪れた際、話
  し合いが不調に終わり、カッとなった肇が二人を絞殺した。

   署に缶詰状態は思いがけず3日で解かれた。

  「わざわざ、県警本部から出っ張って来る程ではなかったのによ。所轄の実力を思い知ったか」と、
  陰口を言われながら県警本部の応援部隊は引き上げて行った。


   *****
 

  「お前はカニは好きか?」
   川島がデスクでパソコンを使って事務仕事をしていた時、隣の席の松岡が訊いてきた。

   担当している事件もなく、平和な一日だった。

  「はあ……? カニですか……?」

  「うん、タラバガニだ」

  「好きですけど、余り食べた事ないです……って言うか、食べられる様な身分じゃないし」

  「隣からカニをもらったんだ。どうだ? 今晩、俺の家でいっぱいやるか?」
   川島は松岡から誘いを受けた。

  「今晩……ですか……でも、いいんですか?」

  「いいから言ってるんだよ」

  「じゃあ、有り難くお邪魔します」
   川島は答えた。

  「そう来なくちゃ。おっ、6時だ。じゃあ、行くか!」
   そう言って、松岡は早速帰り支度を始めた。

  「エーッ……!」
   川島は慌てた。まだ、心の準備が出来ていなかった。

  「課長、自分と川島は今日は上がらせて頂きます」

  「お疲れ」
   課長の真山が答えた。

  「おい、帰るぞ」
   松岡は帰る体制になっていた。

  「ちょっ、ちょっと……待ってください」
   川島は急いでパソコンをシャットダウンした。

  「お先に失礼します」
   川島が課長と課員に挨拶をし、コートを手に取った時には、松岡はすでに廊下に出ていた。

  「急に伺って、奥さんはビックリするんじゃないですか?」

   松岡の妻の顔が浮かんだ。

  「大丈夫だよ。もう準備をして待ってる」

  「……」
 
   松岡に誘われてから、まだ15分と経っていなかった。いつ、妻に連絡を取ったのだろう? 
  もしかしたら、既にそういう話になっていたのかもしれなかった。
  
  「今晩、署の若いのを連れてくるぞ」「分かりました。カニの他に何を用意すればいいですか?」
  「刺身でも用意しておいてくれ。それから、お前の自慢の手料理も」
   川島の承諾を得てもいないのに、そんな会話を交わしたのかもしれない……妻は、夫の言葉を信
  じて準備をする……夫婦と言うのはそういうものなのか?



  「お前も今年一年頑張ってくれたから、お疲れさん会と忘年会だ」
   廊下を歩きながら松岡が言った。署内で、こんなに嬉しそうな顔をする松岡を見るのは久しぶり
  だった。

  「遠慮なくお邪魔します」


   *****  


  「あそこだ」
 
   マンションに着いた松岡は、三階のベランダを指さした。
  カーテン越しに部屋の灯りが漏れていて、その灯りが川島には温かく感じられた。松岡が少し羨ま
  しかった。

   松岡は、毎日帰る度にこうして自分の部屋を見上げ、漏れる灯りに安らぎを感じているのだろう
  か……

  「お洒落なマンションじゃないですか?」
   ベランダの腰板が、淡いグリーンのカーボングラスになっているマンションを見上げながら川島
  が言った。妻同様、松岡には似つかわしくなかった。

  「ローンが終わる頃が俺の人生が終わる頃だ。官舎よりずっといいよ。金に代えられない価値って
  やつだな」
   松岡は持っていた鍵でオートロックを解除した。

  「自分で開けるんですか?」

  「そうだよ。まだるっこしい事は俺の性に合わない」

   何故か、川島はホッとした。


   *****


  「たくさん食えよ!」
   
   横浜市神奈川区片倉にある松岡のマンションのダイニングテーブルの上には、カセットコンロに
  かけられた土鍋から出汁の香りが漂い、タラバガニが所狭しと用意されていた。

  「おい! ちょこちょこ動いていたらゆっくり出来ない。いい加減にお前も席につけ!」
   居心地が悪そうにしている川島を見て、松岡が妻に声をかけた。

  「これが最後よ」
   酢の物が入った小鉢をそれぞれの前に置いて妻は席についた。

   鍋の他に、刺身の盛り合わせや漬物なども並べられていた。

   誘いを断っていたらどうなっていたのだろう? 自分の思い通りにならず、豪華な刺身の盛り合
  わせを持て余し、妻を前にして不機嫌そうに酒を飲んでいたのだろうか? 二つ返事で承諾した事
  を少し後悔した。松岡に対して意地悪な気持ちを持つ川島が存在していた。

  「紹介するよ、と言っても初対面じゃないだろうが、俺の面倒を見てくれている川島君だ。化石の
  ような俺に我慢して付いて来てくれている。こっちは化石の一歩手前の瑛子。お前からもちゃんと
  礼を言え!」

   恐らく、普段は妻の前でこんなに横柄な口の利き方をしないのだろう。
  「俺の女房だ」と、夫婦であるという事を、自分の前で誇示したいような松岡の態度に、川島は不
  快な気分になった。

  「化石とは上手く表現したのね。本当にいつもありがとうございます」
   瑛子が松岡の言葉を受けて、笑いながら川島に頭を下げた。

  「面倒をみてもらっているのは自分の方です」
   少し癪だったが、素直に頭を下げた。

  「どうぞ」
   瑛子にビールを勧められて、川島はグラスのビールを一気に飲み干した。
  
   何故、意地悪な気持ちが沸き、癪に障ったかは分からなかったし、それに、何故か居心地も良く
  なかった。それでも宴は始まったばかりで、このもやもやを晴らすには早く酔いつぶれたかった。

  「ほら! 取り分けてやれよ!」
   また、松岡が瑛子に命令口調で言った。

  「気が利かなくてごめんなさい」
   瑛子はそう言いながら、鍋の中で良い具合に煮えている野菜やカニを器に取り分けた。

  「ありがとうございます」
   礼を言った瞬間、瑛子と目が合った川島はさりげなく視線を逸らした。

   カニと酒は美味しかったが、会話は余り弾まなかった。松岡が何かにつけ、命令口調で瑛子に物
  を言うような所も気に食わなかった。

   瑛子は、そんな松岡に黙って従い、一生懸命川島に気を使っていた。

  「だいぶ酔ったな」

   空になったカニの足がテーブルの上に沢山散らばった頃、松岡は急に立ち上がりソファーに横に
  なった。

  「お客様をほっぽらかしにして失礼でしょう?」
   瑛子が呆れた様子で言った。

  「悪いな。お前が来てくれて嬉しかったんだよ。それもあって、今日は酔いが回るのが早い。お前
  は遠慮せず、ゆっくりして行けよ」

  「はあ……」
 
  「大丈夫なの?」
   瑛子が心配そうに声をかけたが、酔いつぶれた松岡はソファーでいびきをかき始めていた。

  「初めてなのよ。主人が部下を連れて来たのは。それなのにお客様をほったらかしにして寝ちゃう
  なんて。ごめんなさいね」
   夫の様子に、瑛子が申し訳なさそうに謝った。

  「カニはね、毎年お隣から頂くの。お隣はカニが苦手らしくてね、でも、大事な仕事関係の人なの
  で『苦手』とは言えないみたいなのね。今までは、主人の妹夫婦にお裾分けしていたのよ。でも、
  今年は署の部下を誘う、って。『署の部下』って川島さんの事。川島さんがとペアを組めている事
  が嬉しいのよ。本人が言う様に、こんなに早く酔いつぶれたのがその証拠」

  「松岡さんとはいつもぶつかって……自分は、生意気な事ばかり言ってるんですよ」

  「それが嬉しいのよ。私からも改めて御礼を言わせてくださいね」
   瑛子は改まって、川島に礼を言った。

  「じゃあ、もう少しお邪魔していてもいいですか?」

   意地悪な気持ちは何処かに吹き飛んでいたが、癪に障る気持ちは残っていた。

  「松岡もそう言っているでしょう。川島さんを早く帰したら、また私は怒られそう。たくさん飲ん
  でくださいね。はい、どうぞ」
 
   お酒を飲んでいる瑛子の頬が、ほんのり赤く染まっていた。定年間近い松岡の妻の瑛子は、自分
  より遥かに年上だろう。長い間、松岡の「妻」だったという自信と安心感が感じられたが、それ以
  上に「大人の女性」の雰囲気が漂っていた。


   松岡が寝入ってから、何故か瑛子は饒舌になり、二人の会話が弾んだ。


  「もうすぐ50歳よ。結婚して20年。長いでしょう?」

  「結婚願望がない」という「川島の結婚観」の話題が終わった後、突然瑛子がそう言い出した。

  「……」

   酔いがまわるのも早くなっていた。そのせいか、余り自分の事を話すのが好きではない川島も饒
  舌になっていたが、瑛子の一言で、一瞬酔いが覚めた様な気分になった。

  「自分の中で、そういうのよく分からないんです」

  「そうよね……」
   そう言って瑛子は俯いた。

   二人の間に沈黙が流れた。
  
   川島は俯いている瑛子を見ながら、お猪口の酒を飲み干した。クラッとした……それは、酒のせ
  いではなく、瑛子の物淋しげな雰囲気のせい……だと思った。

  「あー、もうこんな時間だ……」
   
   川島が腕時計を確認した。時間は11時を回っていた。

  「警察の独身寮にお住まいなの?」

  「いえ。松岡さんと同じで寮は出ました。ああいう所苦手なんです。今は篠原です。岸根公園から
  歩いて10分もかかりません」

  「じゃあ近いのね。これに懲りずにまた遊びに来てくださいね。それから、主人の事もくれぐれも
  よろしくお願いします。主人はあんなだけど、根は優しいのよ。ただ、不器用だから上手く伝えら
  れなくて」

   瑛子の会話には「主人」という言葉がたくさん登場していた。

   川島が汚れた食器をキッチンに片付け始めた。

  「いいのよ。そのままにしておいてね。明日も早いのでしょう?」

  「いいんです。やらせてください」
   川島は、片付ける手を休めなかった。

  「子供の頃、こうやって手伝いをしたんです」

   瑛子が洗剤を使って汚れた食器を洗い、隣で川島はお湯で洗って食器を水切りカゴに納めた。

  「居心地がいい……」
   ポツリと川島がつぶやいた。

   ……さっきまでは居心地が悪かったのに……

  「何が?」
   瑛子が訊いた。

  「こうして手伝いをしている事が……」

   川島が布巾で拭いた食器を瑛子が食器棚に納めていた。

  「相性がいいのよ。きっと……」
   最後の食器をしまい終わった瑛子が言った。

  「相性……?」

  「川島さんと私……後片付けの……ね」

   最後の言葉は言い繕っている様に聞こえた。

  「はあ……」

   片づけが済んだのに、川島は流しの前に立ったままだった。

  「どうしたの? ぼんやりして」

    ……ぼんやり……

  「僕、ぼんやりした子だったんですよ」
   川島はキッチンの流しに寄りかかって、突然話を始めた。



   川島の両親は、川島が小学校一年生になった年に離婚をした。
  原因は、友人と人材派遣会社を共同経営している母の志津子が家庭を顧みなかった事と、双方の異
  性問題だった。当時は今と違って「人材派遣」の需要が少ない時代だったが、今後「派遣雇用」の
  形態が増加すると考えていた志津子は、生活の全てを仕事に費やしていた。
   川島は、仕事が忙しい母に代わって、同居していた志津子の母の山内ゆき子に育てられたが、決
  して「おばあちゃん子」ではなかった。ゆき子は実の娘の志津子に遠慮している様なところがあっ
  て、孫の川島に対する態度にもそれが充分に表れていた。
 
  「お母さん、いい加減にして。達也を甘やかさないでね。やるべき事をきちんとやらせてね」
   夜遅く、仕事から帰って来た志津子に叱られている祖母を何度も見てきた。

  「達也は男の子だからね、男の子はね……」
   志津子は達也にもいろいろな事を要求した。だから、窮屈で息苦しかった。
  でも、母は大好きだった。勿論、祖母も。仕事を持つ母と、遠慮している祖母に「愛されている」
  という事を感じていたが、ただ、時々不安になる事があった。二人とも、よくため息をついていた。
  ため息をつく時の母と、祖母は辛そうな顔をしていた。

  「僕が悪いのかもしれない……」
   ため息をつく母と祖母を見ている間に、そう思うようになり、ため息をつく事がなくなる様に、
  二人に気に入ってもらえる様に「ぼんやりしていちゃダメだ、良い子にならなくちゃいけない」そ
  う考えた。
   
   しかし、川島の努力は無駄になった。幼稚園の年長組に上がったと同時に祖母のゆき子が亡くな
  り、それから一年後に、母の志津子が家を出て行った。
   
   川島が小学二年生の秋に、父の俊郎は子連れ同士の再婚を果たした。川島に年子の血の繋がらな
  い弟と、生まれたばかり腹違いの妹が出来た。継母の美奈代は、家庭的な女性だった。
   美奈代には、ため息をついて欲しくなかったから、それに気に入ってもらいたかったから、川島
  は言う事を聞いて「良い子」になる努力をした。でも、基本の「ぼんやりした子」は消えなかった。
   血の繋がりのない弟は「利発で要領の良い子」で「良い子」になろうとする川島の上を行ってい
  た。進んで美奈代の手伝いをして父の俊郎からも可愛がられていた。負けたくなくて、弟と競った。
   
   ある日、学校から帰るとお客様がいた。美奈代の実母の恵子だった。

  「こんにちわ」
   川島がきちんと挨拶をすると恵子が褒めた。

   おやつをもらって、自分の部屋に行こうとした時「達也君はどう?」恵子が美奈代に訊いている
  声が聞こえた。川島は足を止めて、二人の会話に聞き耳をたてた。

  「いい子なんだけれど、ちょっとぼんやりさんで。一生懸命お手伝いをしてくれたりするけれど、
  返って足手まといになったりするの。人に気を使わせる子って……ああいう子供の事を言うのよね」
   美奈代が答えた。

   川島は手に持っていたケーキを落とした。

   決めた……努力をするのはやめよう……「ぼんやり」な子でいよう……嫌いだ!……ため息をい
  っぱいつかしてあげよう……そして、心を閉ざした……



  「はいっ、熱いから気をつけてね」
   瑛子は、立ったままでいる川島に熱いほうじ茶が入った湯飲みを渡した。

  「美味しい……」
   
   香ばしいほうじ茶をすすった川島が笑みを浮かべた。熱いお茶が胃に沁み渡って温かく穏やかな
  気持ちになった。それは……瑛子の気持ちの温かさに川島は感じた。

   瑛子も川島の隣で立ったままでお茶を飲んでいた。

  「ぼんやりって、ちょっと違わない?」

  「そうかなあ……?」

  「だって、お母さんとおばあちゃんのため息を気にしていたなんて……神経のある子供だったのじ
  ゃないの?」

  「神経のある子供……って?」

  「神経が細やかで、優しい子」

  「どうなんだろう……」

  「辛かったの?」

  「辛くはなかったけれど……」

  「どうした? 何が辛いんだ」
   ソファーで寝入っているとばかり思っていた松岡が言った。

  「聞いてたの? 川島さんの子供の時の話よ」
   瑛子は松岡の傍に行って話しかけた。

  「そうか……」
   そう言って松岡はまた眠りについた。
 
  「変な人……」

   瑛子と川島は顔を見合わせて笑った。

  「辛くはなかったんですけどね。でも、辛いって思った方が良かったのかもしれない」

  「どうして?」

  「感情がないみたいな気がして……」

  「どうして警察官になったの?」

  「うーん……人を裁きたかったから」

  「裁くのだったら裁判官じゃなかったの?」

  「人間が嫌いになったんです。だけど、それじゃいけない、そう思って。刑事になったらいろんな
  人間模様が見れるかなあ……って。テレビの見過ぎだったかもしれないけれど」

  「……」

  「あっ、でも、彼女とかはちゃんといたんですよ。でもね、いつも言われてた。川島君の世界には
  入れない、って。マイペースで、ぼんやりしてたんですよ。きっと」

  「静かな感情?」

  「エッ……? 僕の中では静かじゃない……」

  「良かった……」
 
  「どうして?」

  「静かな感情が怖かった時があったの」
 
  「分からない」

  「分からなくていいのよ。私の方があなたより長く生きているんだから」

  「……」

   二人の視線が絡み合った。
 
  「すっかり綺麗になって。お陰で助かったわ」
   重い空気を振り払うように瑛子が言った。

  「じゃあ、これで失礼します」
   川島は帰り支度を始めた。

  「松岡を起こすわね」
   瑛子はソファーで寝入っている松岡を揺すったが、完全に寝込んでいるのか、松岡は目を覚まさ
  なかった。

  「そのまま寝かせてあげておいてください」

   起こさなくていい……川島はそう思った。

  「本当に失礼な人よね」

   そう言いながら玄関まで見送ってくれた瑛子の手に、川島は小さな紙切れをそっと渡した。

   瑛子は怪訝そうな表情で、チラッと紙切れに書かれた文字を見たが顔色一つ変えなかった。

   ……紙切れには川島の携帯番号が書かれていた……

  「おやすみなさい」

   外に出て、ドアの鍵とチェーンをかける金属音を聞いた川島は、ドアの向こうにはまだ瑛子がい
  るという事を感じて、しばらくの間じっとドアを見つめていた。

   川島が出てすぐに鍵とチェーンをかける、という瑛子の動作が心の動揺を表している様に感じら
  れた。

   マンションのエントランスを出て、三階にある松岡の部屋を見上げた。
  カーテン越しに動いている人影が見えた。一つの影がかがんで、少しすると二つの影がもつれるよ
  うに消えて行く様が確認された。

   瑛子がソファーで酔いつぶれている松岡を起こし、抱えて寝室に連れて行ったのだろう。

   また、嫉妬の気持ちが沸き起こったが、川島はそのまま動かず部屋を見つめていた。

   しばらくすると、また一つの影が戻って来て、カーテンを少し開けかけたが、カーテンは開かな
  かった。

   リビングルームの灯りが消えた。

  「かかってくるだろうか?」
   ズボンのポケットから携帯電話を取り出して、携帯電話をじっと見つめた。


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