何かが聞こえてきたような気がする。 今日は日曜日のだから、目覚まし時計をセットした覚えはない。 意識を集中してみた。 音は、音でも何か不思議な音がする。 まだ、重たい目蓋を無理やり開け、部屋の中を見回してみる。 「!」 そこには、CDを聞きながら歌っているミルがいた。 いいかげんミルがいる事自体に慣れてきたはずなのだが、本の歌声で起きることはだいぶ辛い。 しかもまだ、朝の6時30分である。 こっちの行動に気付かないようなので、仕方がなく俺は起きる事にした。 洗面所に行き歯を磨くが、部屋からは相変わらずミルの歌声が聞こえてくる。 彼女が泊まっていて、綺麗な歌声で目覚めるのならまだ気分がいいのかもしれないけど、この状況はないだろう。 そんな事を考えていることも知らず、聴いている歌に飽きたのだろうか、CDを取り替えている。 「……まったく」 そんな独り言を呟きながら、俺はありあわせのもので朝食を済ませた。 奇妙な生活3日目の始まりである。 部屋に戻ると、ミルは煙草を吸いながらくつろいでいた。 それを見て俺は、何事も前向きに考えないと、この先やっていけないと思った。 「火にだけは気をつけてくれよ」 そう言うとミルは振り返り無言でうなずいた。 今聴いている音楽に夢中のようだ。 まぁ、口うるさく、わめかれるよりはましか…。 そう心で思ったら半年前まで付き合っていた彼女の事を思い出した。 お互いが空気のような存在になっていて、何の刺激もない毎日。 その状況に飽きてしまった彼女はこのアパート出て行った。 あの時に何か繋ぎ止める言葉があったら、どうなっていたのだろうか? 考えてみても時は戻らないし、戻ったとしても、あの時と同じように、俺は何も言えないまま、彼女が立ち去るのを見ているだろう。 「嫌な事ばかり読んだから、こんな事をおもいだしたのだろうか…」 そんな独り言に気が付いたミルが、話し掛けてきた。 「なぁ。他に面白いものないか?」 俺は無言のままテレビをつけ、チャンネルを「スーパーヒーロータイム」にあわせた。 その後、ミルがヒーロー達のアクションに夢中になったのは言うまでもない。 まったく、子供だな。 そう心の中で思ったたが、気がつくと俺も夢中になってヒーロー達のアクションを一緒に見ていた。 そんな感じで、貴重な休みの半分が終わってしまった。
つづく
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