20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:広がる世界 作者:空谷 碑路

第6回   第六話「休日」
今日、明日休みとあって読む時間は沢山あった。
自慢ではないが、昔から本を読むのは速かったし、仕事上書類を読む機会が多いので一日あれば読み終わるだろうと思ったんだけど、内容が内容なので、読む速さはかなり遅い。
おまけに、読んでる途中にミルが退屈しのぎにしゃべるので集中して読めない。
そんなことで、一日をつぶしてしまった。
まぁ、別に他にやることがないからいいけど、こんな休日の過ごし方はかなり
疲れる。
煙草が切れたので気晴らしに、近所の煙草屋に歩く事にした。
「まったく…なんでこんなことになったんだか」
そんな、ため息まじりの小言をこぼしながら歩き始めた。
夕方も近いのに、夏の日差しは容赦なく照りつける。
ミルが来てからというもの、心が休まった事がない。
まだ、一日しかたっていないのに。
この先、俺は一体どうなるのだろうか?
そんな事を考えているうちに煙草屋に着いた。
いつもの煙草を3箱買い、ついでにビールを一本買う。
休日の贅沢。
独りでいる特権だ。
自分自身の為に贅沢し、自分の為に生きる。
そんなことができる今の自分は、幸せなのかも知れない。
しつこいようだが、アパートにいる本の事を除いては。
アパートに着くとミルに早く続きを読めとか、退屈だとか等小言を言われる。
いちいち口うるさいが、別にこちらに危害を加えてこない事がわかったので、適当に返事をし俺は煙草を吸いだした。
夕飯は適当にパンでも食べて済ますか。
そんなことをボンヤリ考えていると、ミルが近寄ってきた。
「なぁ、秋。その煙草ってやつはうまいのか?」
「?!………」
興味深そうに煙草を見ている。
「……吸うかい?」
俺はそう言うと、ミルに煙草を差し出した。
ミルは器用に煙草をくわえると、俺に向かって煙草を突き出した。
どうやら、火を付けろということらしい。
でも、火気厳禁なのでは?
そう思ったが、本人が吸ってみたいというのならいいかと思い、煙草に火を付けた。
「ゴホ…」
どうやらむせたらしい。
しかし、本当に不思議な本だと感心してしまう。
少しすると、煙草に慣れたのか、むせなくなった。
「うーん、うまい!もう一本くれ」
そうせがんできたので、もう一本くわえさせ、火を付けた。
ペットは飼い主に似るというが、本も持ち主に似るのだろうか?
そんな疑問が頭をよぎった。
まぁ、ミル事態の存在を今の科学では証明できないのだから、無駄な事を考えないようにしよう。
貴重な休日は、奇妙な一日で終わりそうだ。
これから、また嫌な物語を読まなくてはいけないと思うと、少し頭が痛い。

                                つづく


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 2649