「自分の人生を変える?」 俺は、間抜けな声で言った。 今まで以上の、展開だったためかなり驚いた。 それ以上言葉が出ない俺を見かねた本は話を続けた。 「そう、お前の人生を変えてやる」 どうでもいいが、さっきからどうやって外国人ばりのリアクションをしているかは、しゃべるよりも不思議だ。 「本当に変わるんですか?」 また、説教をされるのが嫌なので、早めに言葉を返した。 「くどい!そのために俺は、お前の前にいるんだ。じゃなければ俺は本のままいたぜ」 いっそう、本のままでいてくれたほうが気が楽だった。 「まさか、変えたら魂をもらうとか、なんかいらない事が起るとか、そういう事があるとかいうんじゃ…」 「ない。俺は死神でも、詐欺師でもない。ただの本だ」 本は、そう言葉を返した。 「いやー…ただの本といわれても」 「何処から見ても本だろ?見かけがおかしいか?」 「いや…そうじゃなくて…まぁ、いいか」 「細かい事はきにするな」 本はそう言うと、さっきの話の続きをした。 「じゃあ、簡単に説明するぞ。俺の中に書いてあるお前の今までの人生を読んで、一番帰りたい所に帰ってやり直すんだ。期限は1週間。それまでに全部読んで決めるんだな。特に注意する点は、書いてある字が濃いところは、一番お 前の心の中で引っかかっている事。それを参考にしてみれば早いが…」 なぜか本は、言葉をとめた。 どうやら、困っているようだ。 俺は気になり質問をしようとしたが、本は話を続けた。 「うーん。お前の場合はまだ30年しか生きてないのに、最後のページまでうまってるし、全部濃い字だな。まぁなんとかなるか。読むのは俺じゃなし」 俺の人生って一体…。 「とにかく、よろしくな。俺は本のミルだ」 自分で本という自覚はあるらしい。 「えーと。俺は音浦 秋」(おとうら みのる) 本に、自己紹介をするのは少々ばかばかしいが、話の流れとしては自然なのだろう。 「じゃあ、最初のページに名前を書いてくれ」 そう言うとミルは、自分で表紙をめくった。 さっきからずいぶん器用な事をするけど、何処までこの本はできるのだろうかと、考えてしまう。 でも、一番肝心な事を聞いてないような気がするが、俺は言われるまま本にサインをした。 「よし。これで契約終了。まぁ、後は時間がないから中を読んで、帰りたい場所を決めてくれ」 正直、あまり中身は読みたくなかった。 さっき、本がいったけど、俺の人生あまりいいことはなかったし、はほとんど思い出したくないものばかりだから。 でも、変われるのなら、変わりたい。 そう思い、俺は本を手にした。 これから1週間、本との奇妙な生活が始まる。
つづく
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