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作品名:広がる世界 作者:空谷 碑路

第4回   第四話「質問」
現代には、科学では証明できない事が多々ある。
ナスカの地上絵・モアイ・ピラミッド・オーパーツ・宇宙の真理・宇宙人等。
しかし、30年近く生きていた中でも、それらに遭遇した事はないし、そんな事とは無縁だと思っていた。
目の前にある、現実を目にするまでは。
最初に本がしゃべりだしてから30分はたった。
話の内容は、本を捨てるな!とか、つまらない人生だ!とか云々。
親にだって、ここまで言われた事はないほど言われた。
ここまでくると、人間は不思議なもので、目の前にある非現実的なことを、現実として受け入れてしまうものだ。
本が話す事に慣れてきたので、煙草を吸おうとしたら、
「火気厳禁!本は可燃物!!カバーがなかったり、本が汚れていると、古本屋で安く叩かれるぞ!!!」
と、ありがたいご指摘をいただいた。
いっそうの事、古本屋に売って来るか…。 と、頭の中をよぎった。
そんな事を考えていると。
「おい、お前」
「はい…」
本に「おい、お前」なんていわれるのは、世界中探しても俺だけだと思う。
逆らうと面倒なので、俺は素直に返事した。
そして、今度は正しい本の扱い方について30分説教が続いた。
いくら夏の日が長いといっても、流石に日が暮れてきた。
これから、やることはいっぱいあるのに。
しかし、お構いなく説教は続く。
俺は、とにかくこの現状を打破しなければいけないと思い、話の合間をみて、おそるおそる本に話し掛けた。
「あのぉ…ありがたいお言葉は嬉しいのですが、いったい俺に何の用ですか?」
自分でも、馬鹿な質問をしたと思っている。
でも、この状況が変わるのなら、何でもいいと思った。
そうすると本は、
「コホン…いい質問だ」
さっきまで、とめどなくしゃべっていたのに、生意気にも咳払いをした。
でも、好感度はいいようだ。
等と、安心するのもつかの間、今度はとんでもない事を言ってきた。
「お前、今の自分の人生を、変えてみたくないか?」
と、えらそうにふんぞり返って、本は言った。

つづく


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