現代には、科学では証明できない事が多々ある。 ナスカの地上絵・モアイ・ピラミッド・オーパーツ・宇宙の真理・宇宙人等。 しかし、30年近く生きていた中でも、それらに遭遇した事はないし、そんな事とは無縁だと思っていた。 目の前にある、現実を目にするまでは。 最初に本がしゃべりだしてから30分はたった。 話の内容は、本を捨てるな!とか、つまらない人生だ!とか云々。 親にだって、ここまで言われた事はないほど言われた。 ここまでくると、人間は不思議なもので、目の前にある非現実的なことを、現実として受け入れてしまうものだ。 本が話す事に慣れてきたので、煙草を吸おうとしたら、 「火気厳禁!本は可燃物!!カバーがなかったり、本が汚れていると、古本屋で安く叩かれるぞ!!!」 と、ありがたいご指摘をいただいた。 いっそうの事、古本屋に売って来るか…。 と、頭の中をよぎった。 そんな事を考えていると。 「おい、お前」 「はい…」 本に「おい、お前」なんていわれるのは、世界中探しても俺だけだと思う。 逆らうと面倒なので、俺は素直に返事した。 そして、今度は正しい本の扱い方について30分説教が続いた。 いくら夏の日が長いといっても、流石に日が暮れてきた。 これから、やることはいっぱいあるのに。 しかし、お構いなく説教は続く。 俺は、とにかくこの現状を打破しなければいけないと思い、話の合間をみて、おそるおそる本に話し掛けた。 「あのぉ…ありがたいお言葉は嬉しいのですが、いったい俺に何の用ですか?」 自分でも、馬鹿な質問をしたと思っている。 でも、この状況が変わるのなら、何でもいいと思った。 そうすると本は、 「コホン…いい質問だ」 さっきまで、とめどなくしゃべっていたのに、生意気にも咳払いをした。 でも、好感度はいいようだ。 等と、安心するのもつかの間、今度はとんでもない事を言ってきた。 「お前、今の自分の人生を、変えてみたくないか?」 と、えらそうにふんぞり返って、本は言った。
つづく
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