「?!……」 俺は驚きながら本をまじまじと見た。 人間なんていうものはげんきんなもので、さっきまで何も変化なのないもには興味をもたないが、こうやって劇的に変化をすると思わず見てしまうものだ。 怖いもの見たさ? いや…、好奇心の方が強いだろう。 見てみると、さらに驚く。 俺の産まれた日から、最近の事までが書いてあった。 「なんなんだこの本は?」 そんな事を呟いてみたが、問題はそこではない。 買ってきたときには何も書いてなかった本に、文字が書かれているなんてとても気味が悪い。 とりあえず、俺は落ち着く為に煙草を吸った。 そして、今にいたるまでの事を思い出してみる。 「………本を買ってきて、帰ってきて夕日を見て、飯作ってるときにこの本が気になって、最初は何も書いてなくて、次に読んだら俺の事が書いてあった。それ以外何もしてないし、見当も付かない」 つけたばかりの煙草を消したが、また、新しい煙草に火を付けた。 「落ち着け…落ち着くんだ……落ち着けるわけないよ!こんな経験した事がない。…それもそうか。こんな経験した事がある奴の話を聞いた ことがあるなら、こんなに驚かないもんな。ひょっとして俺だけがまだ未経験?そんな馬鹿な」 そんな、独り相撲をしても、状況は変わらない。 再度、本の表紙を見てみる。 「マイ・ブック」と、しっかり書いてある。 指で突っついてみた。 何も起きない。 おそるおそるページを開いてみた。 文字がぎっしりと書いてある。 今の俺は、道端に落ちているエロ本を拾って、家にもって帰ってきたような心境だ。 「いかん…変な気分になってきた。」 俺は一呼吸置いて、落ち着いて見せた。 別に誰に見せるわけでもないが・・・。 心を決め、本を読んでみる。 読んでみると、今まで自分が経験してきたいやな事が大半を占めている。 ますます気分が悪くなった。 気味が悪いので、思い切って捨てる事にし、いざゴミ箱に持っていこうとしたら、突然本がしゃべりだした。 「捨てるなー!」 俺は驚いて本を手放した。 「いて…今度は不法投棄か?本をゴミ箱に捨てようとするし、ゆびで突っつくし、ずいぶんとつまらない事しか憶えてないし、なんなんだお前は!」 好き勝手に本はしゃべりだした。
つづく
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