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作品名:広がる世界 作者:空谷 碑路

第3回   第参話「接触」
「?!……」
俺は驚きながら本をまじまじと見た。
人間なんていうものはげんきんなもので、さっきまで何も変化なのないもには興味をもたないが、こうやって劇的に変化をすると思わず見てしまうものだ。
怖いもの見たさ?
いや…、好奇心の方が強いだろう。
見てみると、さらに驚く。
俺の産まれた日から、最近の事までが書いてあった。
「なんなんだこの本は?」
そんな事を呟いてみたが、問題はそこではない。
買ってきたときには何も書いてなかった本に、文字が書かれているなんてとても気味が悪い。
とりあえず、俺は落ち着く為に煙草を吸った。
そして、今にいたるまでの事を思い出してみる。
「………本を買ってきて、帰ってきて夕日を見て、飯作ってるときにこの本が気になって、最初は何も書いてなくて、次に読んだら俺の事が書いてあった。それ以外何もしてないし、見当も付かない」
つけたばかりの煙草を消したが、また、新しい煙草に火を付けた。
「落ち着け…落ち着くんだ……落ち着けるわけないよ!こんな経験した事がない。…それもそうか。こんな経験した事がある奴の話を聞いた
ことがあるなら、こんなに驚かないもんな。ひょっとして俺だけがまだ未経験?そんな馬鹿な」
そんな、独り相撲をしても、状況は変わらない。
再度、本の表紙を見てみる。
「マイ・ブック」と、しっかり書いてある。
指で突っついてみた。
何も起きない。
おそるおそるページを開いてみた。
文字がぎっしりと書いてある。
今の俺は、道端に落ちているエロ本を拾って、家にもって帰ってきたような心境だ。
「いかん…変な気分になってきた。」
俺は一呼吸置いて、落ち着いて見せた。
別に誰に見せるわけでもないが・・・。
心を決め、本を読んでみる。
読んでみると、今まで自分が経験してきたいやな事が大半を占めている。
ますます気分が悪くなった。
気味が悪いので、思い切って捨てる事にし、いざゴミ箱に持っていこうとしたら、突然本がしゃべりだした。
「捨てるなー!」
俺は驚いて本を手放した。
「いて…今度は不法投棄か?本をゴミ箱に捨てようとするし、ゆびで突っつくし、ずいぶんとつまらない事しか憶えてないし、なんなんだお前は!」
好き勝手に本はしゃべりだした。

つづく


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