昼休憩。夢一はいつも売店のお弁当を注文していた。その日もいつものように売店へと足を運び、棚に積まれた弁当の中から好きなものを選んだ。今日はから揚げ弁当。夢一はそれを取り、レジへと並んだ。
「あれ。下林じゃん。」
夢一の後ろから声が聞こえた。振り返るとそこにいたのは野球部に所属している川崎だった。彼は夢一と同期で野球部へと入った新入生の一人である。夢一と違いまだレギュラーといったわけではないが、それでもかなりの実力者ではあるため、来年には3年生を抜かしてのレギュラーではとされている。ポジションはショートだ。
「川崎か。お前も今日は買い弁か。」
「そそ。部活前にちゃんと食べないともたないからさ。弁当のほかにおにぎりも二つほど追加。」
と並んだすぐ隣の棚からおにぎりを適当に二つほど選んで手に持った。
「鮭と梅干か・・・普通だな。でもしょうがないか。」
「変えたら?」
「いや変えない。男に二言はない!」
「何か意味違う気が・・・」
「細かいことは気にしなくて良いってことよ。それより脚の具合はどうなん?」
川崎は夢一の脚の状態を見た。
「あのときはほんと驚いたぜ。骨が折れる音ってあんな音するんだなって。今思い出してもぞっとする。」
「じゃあ思い出すな。」
と夢一は川崎の頭を少し小突いた。
「具合的には順調なんじゃないか。ただ順調に回復したところでもう野球ができない身体ではあるけど。」
「そりゃあそうだけど・・・下林はこのまま野球辞めたらいったい何やるんだ?」
「辞めたら・・・そういえば具体的には何も考えてないな。」
「考えてないのかよ・・・そしたらさうちのマネージャーとかやらね?」
「マネージャー?」
「そうそう。マネージャー。そしたら野球やらなくたって野球に関わることもできるだろ。」
「嫌なこった。」
夢一は一蹴した。
「見てるだけなんてごめんだね。やっているからこそ野球は面白いんだろうが。」
「そうだけど・・・でもどうするんだよ。このまま辞めちまうなんてもったないだろ。もう一回戻ってこいよ。」
「悪いがもう野球のことは思い出したくないんだ。」
夢一はレジで会計をさっさと済ませ先に教室のほうへと歩いていった。
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