夢一が目覚めたときには病院のベッドで横になっていた。少し起き上がり、びっくりした表情をした。左足がテーピングのようなものでガチガチに固められ、左足も少し宙に浮き、動かないようになっているからだ。
「そうか。俺は怪我したのか。」
夢一は冷静になり左足を少しさすった。 この病室の中は6つのベッドが並べられ、夢一は窓側のベッドに運ばれたのだ。まわりは年配の人ばかりだったが夢一は特に気にしなかった。窓は開けられ、そこから風が吹き抜けてくる。夢一はフッと窓の外を眺め、物思いに耽った。
「なんでこうなったんだろう・・・」
夢一はつぶやいた。
「夢一」
その声に夢一は振り向いた。
「父さん・・・母さん・・・」
「あまり元気そうじゃないな。」
夢一の覇気のない表情に父親がそう言った。
「メロン買ってきたわよ!夢一好きでしょ。これ食べて早く元気になってね。」
母親は笑顔で手に持っていたスーパーの袋から大きなメロンを取出し夢一に見せた。しかし夢一はそれを見たところで特に反応はなく、その代わり左膝をさすりながらこう言った。
「んで、俺の左足ってどうなのよ。どんな怪我なわけ?」
「・・・」
母親の笑顔は消え、そして両親二人は無言になった。
「そうか・・・そんなに良くないんだ。」
夢一はそんな両親二人の態度からそうつぶやいた。
「夢一・・・このことをお前に言うのは非常に心苦しいんだ。最初先生からそのことを聞かされたときは本当につらかった。」
「父さん、俺の膝はそんなに悪いの・・・?早く言ってくれないか。」
夢一はイラッとしながら言った。
「なら言おう。」
父親は一呼吸おいてからこう言った。
「約一か月で退院できるとのことだ。それからは松葉杖を使いながらではあるが歩くことはできるとのことだ。これがまた約一か月ほど続く。それからは
もう通常通りの生活が送れるとのことだ。」
夢一はポカンとした表情をした。
「・・・?それの何がつらいっていうんだ?」
「通常の生活は遅れるわけだが、膝が完全に治ったわけではないんだ。」
「どういうこと?」
「全力で走ったり、飛び跳ねたりと激しい運動ができなくなるということだ。」
「それってつまり・・・」
「・・・お前はもう野球ができなくなるってことだ。」
父親の言葉に母親がむせび泣き始めました。父親も下を向き、何かを堪えているかのような表情をしていた。夢一はというと目を丸くさせ、「えっ・・・」と一言そう言葉にしただけでそれからは表情を曇らせ、苦笑した。
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