「それが現実よ」
「そんなものなのかな?」
「青春なんてそんなものよ」
直人は、麻衣子や友達と共に送る日常が好きだった。 これくらいくだらなくて、ありふれた日々のほうが世界を愛していけるのかもしれない。 これが青春だとしても、そう悪くはない。 なんだかんだいって今の生活が好きなのかもしれない。 自分に良く合っている。 しかし、卒業を前にして今の生活が「永遠に続け」と思うのか、「これももうすぐ終わる」と思うのかはわからないことではあるけれど。 そんなことを考えて、ふと寂しくなる。
「よし!今日は皆で遊びますか」
直人は、元気良く彼女にそう言った。
いろいろと考えることはあるが、今は友達と遊んでいたい。
「なによ、いきなり」
麻衣子が不思議そうな顔をした。 彼女は小さい頃からあまり変わらない。 かわらず接してくれる。 だから、一緒にいると心が安らぐ。 彼女の力は大きい。
「まぁ、いいでしょ?」
直人は少し照れながら、無邪気に笑った。
「変なの」
それにつられて彼女も笑う。 ずっと変わらない、日常。 直人はその日常をいつまでも守って行きたいと思った。 たげど、自分は麻衣子にとって何ができるのだろうか?
話している間に学校に着いた。 直人の通っている高校は、月岡市の朝日ヶ丘高校である。 教室はアルファベット順に9クラスに分かれており、その中の3−Aに入る。 麻衣子も同じクラスだ。
「しかし、何で直人とクラスが同じなんだろうね…」
「さぁ、腐れ縁じゃない?」
「腐れ縁ね…」
麻衣子とは中学でも同じクラスだった。 そして、高校でも。 何かの縁があるとしたら、やはり「腐れ縁」が一番ぴったりくるフレーズなのかもしれない。
「ちなみに腐れ縁は、離れようとしても離れられない関係、好ましくもない関係を批判的・自嘲的にいうときに使うのだ、ご存じ?」
麻衣子の言ったことには反応せず、机にカバンを置く。
「って、無視かい」
顔を上気させながら、麻衣子も隣の机にカバンを置く。
「しかし、何で席まで隣なんだろうな…」
「さぁ、腐り縁ってやつ?」
「それさっきも言ったぞ。それに『腐り縁』じゃなくて『腐れ縁』な」
「そうだっけ? まぁ、いいじゃない」
隣の席に麻衣子が座る。 これは個人的には少し困る。 なぜなら、授業中に寝る事が出来ないからだ。 どうして寝れないかというと、教科書の角で頭を叩き潰してくるのである。 冗談ではなく、本気で。 たまにシークレットアイテムとして辞書を使用する。 笑えないことだ。 この激痛には耐えることはできない。
彼女はああ見えて、勉強は結構できるから、困っている。 しかもテストが近くなると、なぜか家に押し寄せてくる。 いや、押し寄せるのではなく、押しかけてくる。 そして、いきなり人の家の冷蔵庫を開け、 「何もないな〜〜〜」 と文句を洩らすのだ。 決して何もないのではなく、彼女が頻繁にモノをかっさらうおかげで、冷蔵庫の中身が急激に減っているだけなのだが。
そんな事を思っていると、 教室のドアが開き、直人の良く知る人物が入ってきた。
|
|