『判らない事があったら聞いて下さいね?』と言ったものの、俺と彼女の仕事は基本的に被る所が無く、それ程、絡みも無かった。 昼休みに他愛も無い会話を少しする程度で、数日が過ぎた。
--そんなある日。
リコが俺が何処に住んでいるのか聞いて来た。 「俺!?俺は隣町の○○○だけど??」 「えっ!?私も○○○なんです!」 「家はどの辺?」 「▲▲デンキの近く!」 「ああ〜休みの日は良く行くよ!」 「じゃあ〜知らない間に何処かですれ違ってたかも??」 「だね!?」
「そっか〜イシザワさんも○○○なんだぁ〜…あっ!?」
何か閃いたのか、一人で頷いているリコ。 この子天然系??
「イシザワさん、もう一つ聞いてもイイですか?」
急に聞かれ焦る俺。
「うん。何?」 「イシザワさん、車通勤ですか?」 「そうだけど?」 「毎朝、道混みません?」 「う〜ん…割と裏道使うから1箇所以外は混まないかなぁ〜?」 「えっ!?」 「どうして?」 「毎日、1時間以上掛かってるから…」 「大通り使ってるでしょ?」 「はい…」 「ちょっと道狭いけど、裏道教えようか?」 「ホント!?」
俺は彼女の家から渋滞が少ない道を教えてあげた。
--翌日。 リコが駆け足で近付いて来て 「イシザワさん!凄く早く来れた!!ありがとう〜♪」と笑顔で報告してきた。
その笑顔を見た時、俺はなんとなく、リコを意識しだした。
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あの日以来、何となく話しをすることが多くなった。 そして、俺の中でリコの存在が段々と大きくなって来ている事を感じていた。
ただし、俺の中である一線を越えてはいけない!と言うブレーキが掛かっていた。 そう、足の障害の事。 どうしても、この事が引っ掛かって最後の一歩を踏み出せない。踏み出してはいけない。と思っていた。
だから、出来るだけ女の子のことは意識しないようにしていた。
リコの存在が大きくなって来ているのと、その気持ちの狭間でかなり葛藤した。
そして、リコのことを意識しない方を俺は選択した。 好きになっても、どうせ告白出来ずに終わることが判っているから…。
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