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作品名:認知症の母と息子の介護会話日記。かいごさぶらい<上>「ただひたすら、母にさぶらう」 作者:kaigosaburai

第5回   認知症の母と息子の介護会話日記5

    「そんなこと、せーへんわっ!」お金、その(1)
2005/4/21(木) 午後 1:07
某月某日 会社に着いてしばらくしてから、母が通う老健施設(デイサービス施設)から電話があった。母に何かが(私、小心者ですが覚悟だけはしております)。

「00さんですか!?。お母さんのトートバッグからお給料袋が出てきましたので、お預かりしています」

「えっ!、給料袋ですか?」

「はい、0000さんと書いてあります。間違いございませんか?」

「はい、間違いありません。私の先月の給料です」

「00さん、こう〜言うの困ります。万が一と言うことがありますので、施設には必要なモノ以外、まして、現金等は絶対に持ってこないようにお願いしますね!」

「はあ〜、申し訳ありません。今度から注意します」(良かったー、金かー、小心者はこれやからあかん、と心中の私が言っている)。

我が家では、給料日にお給料を袋ごと、親父の仏壇に、お供えする慣習がある。先日、その慣習で仏壇に供えたばかりだった。

仕事を終え、急いで帰宅し、仏壇を見た。やっぱり、お供えしていた、給料袋がない。お供えした給料袋を2〜3日そのままにしておくことは、まま、よくあることなので、気にもしなかった。仏壇は、母の居室にある。その晩、母に。

「お袋ちゃん、あんな〜、給料は学校へ持って行ったらあかんで〜、給料もそやけど、お金もあかんねんで〜、分かった〜」

「きゅうりょうなんか、もっていってへんで、なにを、ゆ〜てんねんな」(アホかーと言わんばかり)の母の顔。

「今日な〜、学校から僕に電話があってな〜、お袋ちゃんの鞄に、給料袋が入ってたんやてぇ」

「あんたが、いれたんか〜」

「いや、僕は入れてへんけどな〜」

「ほんだら、だれやろなっ」と、小首を傾げ、母が言う。このぐらい人間余裕が欲しいものだ。(お袋ちゃんのほうが、腹座っとるわ)。

「お袋ちゃん、ティシュに包んで、何でも入れるやろ〜、入れて忘れたん違うかな〜」

「そんなこと、せーへんわっ!」(済んだことを、何をグタグタ言うてんねん!)と、言わんばかりの顔をしている。毎日、気をつけているつもりだが、マンネリの落とし穴、母はお金の区別をするような、そんな俗世とは無縁の人であることを、うかりとした、私の失態だ。


   「わーっ!叔父さんこんなとこにもあったわー!」お金、その(2)
2005/4/22(金) 午後 1:00
某月某日 昨日給料日とボーナスの支給日であった。母にそれらを見せ。

「お袋ちゃん、今日はな〜、ボーナスも出たんやでぇ、これや、見てみっ!」

「わー!、ほんとう、にいちゃん、がんばったからなっ!」母も笑顔を見せる。

「お供えしとくわな!」

「うん、ちゃんと、しときや〜」翌日、何気なく仏壇を見ると、ボーナス袋がない。

「お袋ちゃん、仏壇に、お供えしたボーナスしらんか〜」

「しらんよ〜、どうしたん?ないんか〜」

「うん、昨日、お供えしたんやけど、あれへんねん」

「ふ〜ん、どないしたんやろな〜」午後、姪が、夕食の用意とお掃除に来てくれた。私は、母の居室に入り、箪笥、衣装ケースや仏壇の小抽出し、などを捜し始めた。

「叔父さん何してんっ!」と、母の居室をうろつく私を見とがめて、姪が。

「うん、ボーナスがな、失くなってん」

「わー、えらいこっちゃんかー」と、姪が大声を挙げる。

「00(姪)も、ちょっと探すの手伝うて〜や」と、姪に声をかけ。

「分かった、え〜とお婆ちゃんの手の届く範囲やから〜」と、姪も心得ている。こうして、姪と二人で、母の居室を探すことおよそ半時間。

「ど〜や、00見つかったかー!」と、姪に声を掛けた。

「見てみぃー叔父さんこれだけあったでぇ〜」と、姪がティシュの束を4〜5個私に差し出した。

「一つ一つちょっと開けてみぃ」

「分かった、ひやーっ、叔父さん、00万円もあったわっ!」

「僕も、これだけあったわ」

「叔父さん、まだあるでー!」と、姪はなんだか面白そうに。

「そうやな、もうちょっとあるはずやから〜」私と姪のやり取りや、不審?、な行動に母は面白くないのか、ちょっとヘソを曲げたらしい様子で。

「なにしてんのっ!、ふたりでー、ゴソゴソとー!」案の定だ。

「うん、お袋ちゃんは心配せんでもえ〜よ、ちょっと探しものしてんねん」

「なに、さがしてんの〜?」

「大事なもんや〜」

「わたしもさがそうか〜」と、母が。

「え〜よ、もうだいたい見つかったから、00(姪)に手伝うてもろたから大丈夫やっ!」

「そうか、それやったら、え〜えけどなっ!」と悠然としている母。その母に、夕飯を出さなければならない時間だ。また、あとで探そうか、と思ったその時。

「わーっ!叔父さんこんなとこにもあったわー!」と姪が感心したような甲高い声をあげた。その場所は、母の敷き布団の下であった。


  「だまってあがってきて、モノもいえへんし、はらたつねん!」誰でしょうか?その(1)
2005/4/26(火) 午後 1:29
某月某日 母は頑として、、、。母が言うには「廊下に、どこかの白髪のお婆さんと白い服を着た子供が、勝手に上がりこんで、遊んでいる」と主張するのだ。

私が、廊下とリビングの間仕切りになっているドアを開けて。

「お袋ちゃん、見てみぃ〜な〜、誰もいてへんで、ほ〜ら、」と、言うと。

「さっき、そこに、おったわー!、にいちゃんがあけたから、にげたんやわー!」と、こうなのである。

「僕、玄関から入ってきたけど、お婆さんも、子供も、おれへんかったで〜」

「わたしは、いつもみてんねん、ふたりであそんでんのん!」と、腹立たしそうに言う母。

「そやかて、おれへんで〜」

「そやから、ゆうてるやろーっ、あんたが、きたから、どこかにかくれたんや!、それもわからんのーっ!」

「そんなこと、ないと思うけどな〜」と、母には聞こえないように呟いたつもりだが。母は、憤然として怒りだした。(やっぱり、地獄耳の母だ、聞こえていたのだ)。

「あんたわっ!、みてないから、そういうことゆーうねん、わたしは、いつもみてるから、わかってっんねん!」

「そやけど、その二人、なんで、お袋ちゃんが居てるときだけ、来るんかな〜」真っ向勝負を避ける私。

「わたしをな〜、としよりやおもうてバカにしてんのやっ!」成る程、母の言う事は筋が通っている。

「そんなこと、ないと思うけどな〜、それより、お袋ちゃんな〜、そんな、変な、二人が入って来てやで〜、遊びだけで、お袋ちゃんには、何か、悪さ、せ〜へんのかあ」

「わるいことは、せ〜へんねん、そこで(母は廊下を指差し)、わたしが、とおられへんようにしてんねん!」

「そんなこと、するん!」思わず、私も母に同調した(えーっ俺どうしたんかなー)。

「そ〜やねん、にいちゃん、なんとか、おいだして〜なー」

「何も、悪いことせ〜へんかったら、遊ばしといたったら、どう〜や」

「だまってあがってきて、モノもいえへんしぃ、はらたつねんっ!」この話、母が止めるまで、終わらないのだ。


   「こわいっ?、なんでこわいのん?」誰でしょうか?、その(2)
2005/4/27(水) 午後 0:56
某月某日 夕食後、私は竹で目釘抜き(刀剣に使用する道具)を作り始めた。母はテレビのCMが面白いのか。

「にいちゃんみてみ、はっははは〜っ!」と、満面の笑み。ほんとに可愛らしい笑顔である。その直後、母の声のトーンが変わった。

「またきてるぅー、ほんまにぃーっ!」と母が、リビングと廊下のドアを睨みつけながら、私に訴える。

「どうしたんな〜、お袋ちゃん?」私は、竹細工用の小刀を置いて、母に声をかけた。

「また、きてんねんでぇー、おばあさんとあのコがっ!」

「廊下の向こうにいてるんか?、何してるのん?」

「ふたりでな〜こっちみて、こそこそ、なにかしらんけど、はなしてるわー!」

「お袋ちゃん、聞こえてんのんか〜?」

「うん、ハッキリせ〜へんけど、きこえてるぅ!」

「そうか〜、あんな狭い廊下で、何話してるんかな〜」

「わからん?、そやけど、ずぅ〜と、わたしをみてんねんでぇ!」

「お袋ちゃん、気のせいちゃうか〜」取りあえず、言ってみた。

「なにゆーてのん、みてみぃーな、あそこに、おるやんかー!、あんた、みえへんの?、なさけないっ!」(可哀想なやつやなー)と言わんばかりに母が私を見る。

「うっう〜ん、、、、、、」(私には見えない、修行が足りないのか)。

「ほんだら、ちょっと見て来たろうか?」

「うん、にいちゃん、はよいって、みてきてぇ、もうきたら、あかんでぇ、ゆ〜て、ゆ〜ときやっ!」

「分かった、言う〜たるわ」私は、ドアを開け、廊下の中ほどまで行き。

「もう遅いから帰ってちょ〜だい、うちの、お袋ちゃんなあ、怒ったら怖いよ〜、早よ、帰りぃー!」と、誰もいない?、廊下の向こうに向かって叫んだ。

「でていったかー、にいちゃん!」と母の声。

「うん、帰ったわ!」

「もう、きたら、あかんゆ〜てくれたかぁー」

「うん、ちゃんと、言う〜たよっ!」

「やっぱり、にいちゃんにゆ〜て、よかったわ〜」

「お袋ちゃん、あんなあ〜、知らん人が勝手に入ってきて、何〜んも怖ないんか〜」

「こわいっー!、なんでこわいのん?、ここは、うちのイエやでぇー」まあ〜、そういう意味で聞いたのではないのだが。(お袋ちゃん、腹座っとるなー)。


   「いけへん、ねむたいゆーてるやろっ!」
2005/4/28(木) 午後 0:36
某月某日 そろそろ、母を起こして、デイに送り出す準備の時間だ。さっき母が、何時ものように。「おかあさ〜ん、もう、おきてもよろしいか?」と言っていたから、天気も良いし、さぞやご機嫌で。

「お袋ちゃん、さあー、起きよか〜?」と布団をめくると。

「きょうはしんどいねん、いややー」

「そやけど、さっき、起きても、え〜かー、言うて、言うとったやんかあ」

「そんなこと、ゆーてへんわ!」そりゃそうだ。(さっきは、もう過去やもんなー)。

「温いお湯で顔洗うたら気持ちえ〜よ、起きて、はよ、顔洗お〜な、おしっこもいかなあかんしぃ」

「おしっこ、でーへん!、かおあらいたないっ!」(わーっ、何時もハッキリしてるわー)心中感心する私だ。

「そんなこと、言う〜たらあかん。お袋ちゃんの好きな学校行く時間に遅れるでぇ!」

「びょうきやゆーてるやろっ!がっこうなんか、いったことないわっ!」こんな会話をしながら、なおも、私が、母の毛布を取ろうとすると、母は激しく抵抗。私の頭や腕を。

「なにすんの、いやや、ゆーてるやろーっ!」と言いながら、か細い手で叩き始める。

「なにすんのん、痛いやんか〜!」と私。

「はよ、かぶしてっ!、そんなことしたら、タタくでー、もうー!」と母。

「分かった、わかった、ほな、もうちょっと寝ときぃ〜、え〜天気で、青天やのになー!」

「なにが、あおてんや、はよ、かぶしんかいな!」少し、時間を置くしかない。慌てると、事態は益々悪くなる。私の経験則がそう言っているのだ。デイに送り出す、ギリギリの時間を見計らって。

「さあ〜、お袋ちゃん、起きるよう〜、おしっこ行こうか?」

「いけへん、ねむたいゆーてるやろっ!」と、一喝された。今日は、手強い。(まあ〜流れるままに、、、)。


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