僕から見て、彼女はいつでも、とても幸せそうに見えた。 実際、何も知らずに彼女に接した人の多くにもそう見えていただろう。とても恵まれた、幸せな女の子。『世間知らずで箱入りの、甘やかされたお嬢様』だと。 一緒に過ごして知っていったことだが、彼女の境遇は、彼女にとってそう優しいものではなかったはずだ。それなのに、彼女はいつでも、とても幸せそうに見えた。
こうして思い返してみると、もういくつもの季節を彼女と共に過ごしているものだ。僕はその時々、楽しんでいたり、戸惑っていたり、時にはひどく苦い思いなんかもしているはずなのに、思い出してみると、今では全てが微笑ましい。 どうだろう、ひとつ、彼女との思い出話でも書きだしてみようか。 今しばらく、彼女とは会えない日が続くのだし、その間はどうせ、退屈で仕方がない。 それを書いている間は、僕は彼女を思い出しながら多少は面白く過ごせるだろうし、書き上げて彼女に会えたときに見せてやれば喜ぶかもしれない。彼女は幸せな物語がとても好きだから、ましてや自分が主人公の物語なんて、面白がるに違いない。そうしてきっと、一丁前に大仰な口ぶりで、批評してみせるのだろう。
|
|