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作品名:カルカナコトバ。 作者:

第9回   【二日目〜幻影と現実と】
俺が目を覚ましたのは、暖かい日差しが差し込む朝ではなかった。
まだほの暗い闇に包まれた午前四時頃。

隣で眠っていたはずのカルカナの寝息はなく、俺の腹部辺りにずっしりとした重みを感じた。

俺はその重みで目を覚ましたのだ。
ゆっくりと瞼を開ければ、そこにはカルカナの姿。


「カルカナ・・・?お前・・・何して・・・?」


カルカナは俯いているせいで、髪が顔にかかり表情が見えなかった。
ぼーっとした視界がだんだんとはっきりしていく。
カルカナの背に、あの大きな翼が広げられている。

俺は起き上がろうとするが、カルカナが乗っている所為で起き上がることが出来なかった。


「カルカナ・・・退いてくれないか。」

「・・・ミカド、お話があります。」

「なら、先にどいて・・・っ?!」


カルカナを退かそうと俺はカルカナの肩に手を伸ばした。
その時だ。俺の手をカルカナが振り払ったのだ。
パシッという渇いた音が、部屋に響いた。

・・・なんで、手を払われなきゃいけないんだ・・・!!

軽い苛立ちを感じたが、それよりも胸を締め付ける感情が大きかった。
未だカルカナは俯いたままで、表情が読み取れない。
だが、口元が見えた。

悔しげに、唇を噛み締めていた。

俺が無理やり身体を起こすと、カルカナはトンッ・・・と軽く後ろに飛び、ベッドから降りた。


「カルカナ・・・話ってなんだよ。」

「はい。それは・・・。」


と呟き、カルカナが右手を前に出す。
すると光り輝く杖が現れた。
それをカルカナは伸ばしていた右手で取り、俺に杖の先を向ける。

その杖は、アンティーク系の形をしていた。
取っ手の部分は綺麗に加工されているのか、光沢を帯びており、ワインレッドの色・・・だと思う。
ほの暗いこの闇では色までは識別できなかった。

俺が呆気に取られていると、カルカナが杖を向けたまま口を開いた。


「カルカナ・リング・シスファン、これより貴方を抹消致します。」

「…は?」

「・・・問答無用!!!!!」


そう言ってカルカナは、翼をバサッと出し、一度羽ばたかせ、俺に向かって飛んだ。
一度振り上げてから俺の顔面目掛けて、杖を思いっきり振り下ろす。

ヤバい。
そう思うだろ?誰だって。
俺は別に瞬発力があるとかそんなんじゃないけど、間一髪でその杖をよける事に成功した。
そして俺は後ろから回り込み、カルカナの両手首を取った。


「いきなり何だよ?!カルカナ!」

「私は逆らえないのです。だから、貴方を…殺さなければならない…。」


カルカナはそう言った。
だが声は震えていた。震え、涙を堪えているようだった。
誰に逆らえないっていうのだろう。

俺には・・・解らなかった。


「・・・誰に逆らえないんだよ!」

「・・・それは・・・貴方には関係の無い事・・・っ!!はなしッ、はなしてぇ・・・ッ!!」

「誰が離すか!!俺はまだ死にたくなんてねぇんだよ!」

「…解ってください・・・!」

「解らねぇよ!」


俺は後ろから怒鳴った。
カルカナは声を押し殺して涙を流している様だった。
バタバタと手首を離せと言わんばかりに暴れる。

だが、俺は男だ。
少女が暴れたくらいで離すような貧弱な男ではない。


「カルカナは…カルカナはこうしないと…っ!」


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