「カルカナ。」
「は、はい…!」
俺は手を差し出した。 カルカナは恐ろしい者を見るような目で俺を見つめながらも、俺の手を取った。
「カルカナ、大丈夫か?」
「は、はい!」
元気良くカルカナは答える。 だが、カルカナの身体は小さく震えていた。
一生懸命に笑おうとするが、その顔は笑顔とは程遠く、怯えたその瞳を俺は優しく手で覆った。
「ミ、カド…?」
「笑わなくていいから。カルカナには何もしないよ…ごめんな。」
カルカナの頬と俺の手の隙間から静かに涙が零れ落ちる。 その涙は紛れもない、カルカナの涙。 俺がカルカナの気持ちを感じとってしまった所為なのか、己の行動を後悔していたのか。 そこまでは流石に解らない。 だけどカルカナは、静かに涙を流していた。
そんな姿を見て、俺は何故か安堵していた。 その瞬間、俺の視界が真っ暗になった。 遠くでカルカナの叫ぶ声が聞こえた。
その声は、一度聞いている。
…あれは…たしか…。
あの時見た”夢”と同じ感覚に陥る。 いや、正確には”夢”ではないのだけれど。
そしてあの闇の中に、ランプをもった男・・・ミカドがいた。
『やあ。』
・・・これは夢じゃないんだよな。
『これは夢ではないよ。もうそろそろ自覚したらどうだい?』
そんなもんすぐ出来るかよ。 ・・・でも確かに自覚しないとな。
『そうだよ。帝。大丈夫かい?』
何が?嗚呼、さっきのことか?
『君はとっさにコトバの力を発揮してしまったね。あれはあまり使わない方がいいよ。』
何言ってんだ。お前が使えって言ったんだろ?
『僕は使え何て言っていないよ。コトバを使う者として存在すると言っただけさ。』
…そうかよ。だけどさっきは仕方なかったじゃないか。 あーしないと俺は死んでたんだろう?
『…君は光を敵に回す必要はないよ。己の運命を受け入れることも大切だよ。』
運命を受け入れて、俺が殺されたっていいとでも言うのかよ。
『それが運命なら逆らう必要はない。』
…ミカド、それは違うと思うぞ。 運命だからという理由をこじつけて、そこで何もしないのは生きてるとは言わない。 抗う事も、逆らう事もしなけりゃいけない。
運命だからなんて諦める必要こそ、ない。
『…君は僕なのに、よくそこまで言えるね。』
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