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作品名:カルカナコトバ。 作者:

第13回   13


「カルカナ。」

「は、はい…!」


俺は手を差し出した。
カルカナは恐ろしい者を見るような目で俺を見つめながらも、俺の手を取った。


「カルカナ、大丈夫か?」

「は、はい!」


元気良くカルカナは答える。
だが、カルカナの身体は小さく震えていた。

一生懸命に笑おうとするが、その顔は笑顔とは程遠く、怯えたその瞳を俺は優しく手で覆った。


「ミ、カド…?」

「笑わなくていいから。カルカナには何もしないよ…ごめんな。」


カルカナの頬と俺の手の隙間から静かに涙が零れ落ちる。
その涙は紛れもない、カルカナの涙。
俺がカルカナの気持ちを感じとってしまった所為なのか、己の行動を後悔していたのか。
そこまでは流石に解らない。
だけどカルカナは、静かに涙を流していた。

そんな姿を見て、俺は何故か安堵していた。
その瞬間、俺の視界が真っ暗になった。
遠くでカルカナの叫ぶ声が聞こえた。

その声は、一度聞いている。

…あれは…たしか…。


あの時見た”夢”と同じ感覚に陥る。
いや、正確には”夢”ではないのだけれど。

そしてあの闇の中に、ランプをもった男・・・ミカドがいた。



『やあ。』



・・・これは夢じゃないんだよな。


『これは夢ではないよ。もうそろそろ自覚したらどうだい?』


そんなもんすぐ出来るかよ。
・・・でも確かに自覚しないとな。


『そうだよ。帝。大丈夫かい?』


何が?嗚呼、さっきのことか?


『君はとっさにコトバの力を発揮してしまったね。あれはあまり使わない方がいいよ。』


何言ってんだ。お前が使えって言ったんだろ?


『僕は使え何て言っていないよ。コトバを使う者として存在すると言っただけさ。』


…そうかよ。だけどさっきは仕方なかったじゃないか。
あーしないと俺は死んでたんだろう?


『…君は光を敵に回す必要はないよ。己の運命を受け入れることも大切だよ。』


運命を受け入れて、俺が殺されたっていいとでも言うのかよ。


『それが運命なら逆らう必要はない。』


…ミカド、それは違うと思うぞ。
運命だからという理由をこじつけて、そこで何もしないのは生きてるとは言わない。
抗う事も、逆らう事もしなけりゃいけない。

運命だからなんて諦める必要こそ、ない。


『…君は僕なのに、よくそこまで言えるね。』


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