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作品名:続 闇の権力者たちの近代日本史 作者:佐々木 三郎

第9回   偵察用トモカサ
偵察用トモカサ

柴崎に付き合ってくれ。ああ。坂本と東郷は啓太を訪ねる。偵察用トモカサの集めた情報です、選んでくれたたら編集します。これはすごい、と東郷が見入る。東郷さんなら安くしますよ。平和目的、悪用はやめてくれ。これは世界平和のためだろう、俺もこの家業から足を洗うつもりになっている。悪い、盗撮なんかは良くない。品の悪いことはしない。
 で新婚の生活は。良い旅行をさせて頂きました。奥さんは。できたみたいです。早射ちマック。出会い頭だったのでしょう。ともかくおめでただ祝杯をあげよう。そんなこと言ってられないでしょ。啓太は冷静だ。東郷この画像解説してくれ。
 奴はバチカン近くの教会の神父が表の顔だ。この教会だ。バチカンでは三番目の位置らしい。法王の次か、いや、二番目がいるな。そいつは判らないが実権は奴が握っている。実権を握る奴は表に出ないからな。でニューヨークにアジトを持つようだ、やはりアメリカは人種のるつぼ、目立たないのだろう。で奴と被告人らとは。ああ、年に数回会合している。裏は。アジトは教会の近くのビルだ。東郷はテナント契約のコピーを見せる。さすが。登記簿謄本なども頼む。これだ、こっちは保険契約。失礼しやした。柴崎さんこれをDVD30分ぐらいにまとめてくれ。あいよ。田中、大平を築地に誘う。

 坂本の携帯がなる。アンだ。腹減った握り寿司食いたい。わかった、築地の本願寺で待っていろ、半時間でそこにゆく。はい、待ってます。待てよ、何でアンは日本語を、坂本は電話を切って東郷にきく。外国語は日本人が考えるほど難しくはない、言葉とはこういう場合どういうかとやればいいのだ。それはそうだな。
へい、お待ち30分版DVD2丁、旦那と東郷さん。いくらだ。いいですよ。ただほど高いものはない。では、寿司は旦那の奢り。よし手を打とう。
 本願寺でアンを拾って行きつけの割烹へ。田中と大平は既に着ていた。アンは美味いと感激する。その食欲はすさまじい。歩き回って腹が減ったのであろう。アン、どうやって日本語おぼえた。そんなの簡単よ。鰻重食べたい。話したら注文してやる。イギリスからの学生がそんなの簡単と言ってた。どこで。原宿。これくれた。指差し会話英米編。

 アン、今日日本に着いたばかり、すごいねえ。田中が驚いて見せるとアンはそんなことないですと返した。すごいねとそんなことないです、これペアね。何がすごいかは分からなくても「そんなあことないです」と答えるよう教わったらしい。先ほど東郷さんが言ってたとおりだな、坂本がと言うと、大平が、言語は声だけではない、顔の表情、口の動きからも読み取っていますよねと話を引き取る。
 その通りです、口の動きを真似ると現地人に近い発音が可能です。アンが大平を増幅させる。発音ができると聴きとるのが容易になります。さすがオックスフォード。いえ、そんなことないです。東郷さんもあんなふうにして。ああ、商売柄、英仏独伊、スペイン、ロシアは喋らなくてはならない。喋らなくてはならないのか、坂本は東郷に酒を注いでやる。東郷は貴子が言っていた以上の男だ。いえ、そんなことないです。これにはアンも一本取られたな。東郷は冗談を言わない男だ。
 一本とは柔道ですか。一本勝ちの意味とセットポイントの意味があるが坂本さんがいったのは後のほうだ。では2本取り返すと。1ッポンアドバンテージ、アーン。田中がアンの手を上げる。鰻重も食べたい。それだけ食うて大丈夫か。だって美味しい。若いって素晴らしい。田中、肩入れするじゃないか。我青春を謳歌せんだ。若い娘といると楽しいな。
うなぎ握ってもらったら。さすが新婚さん。坂本はうにの握りを注文しながら「奥さんにも持って帰らないと家に入れてくれないぞ」と啓太に言った。大丈夫です、内のはそんな女ではありません。ご馳走様。技ありだな。
 会話とは回話でもある。話が回るから盛り上がるのだ。アンの演技は完璧だった。東郷も話に加わるようになってきた。迫真の演技はありませんがこれは新しい情報ですと坂本が田中大平に言うとご所望なればと東郷。観たい。
俺も俺もと。嫌だわ、アンは感がいい。著作権の問題があるかな。そこをなんとか大統領。うむ、近々に届けましょう。さすがデゥーク東郷。鰻がきた。
これ鰻重。似たようなものだ。もっと大きいの。明日東郷さんが食わしてくれるだろう。ほんとうれしい。

 その夜、アンは坂本を襲った。待て、話せば分かる。私から逃れられると思って、観念しなさい。大柄の白人女には肉体的に抗らえず犯されてしまった。なんでこうなるのだと坂本は思った。貴子にも同じ事をされたの。ねえ、どっちが良かった。黙して語るべからず、眠り狂四郎だ。
 男の情欲は視覚によるところが大きいが女はどうか。受胎願望、征服でアンの行動を説明できない。無性に女が欲しくなることがあるがあれか、女だって男が欲しくなることがあると声がしたが誰の声かはわからなかった。愛欲の世界は奥が深い、西田所長の愛欲理論はどうか、彼の理論越えなければならん。
 坂本が夜中に空腹を覚えて目を覚ますとアンが笑っていた。ああ夜が怖い。
お寿司食べる。しっかり食べて。それから。馬鹿ね。どうやら貴子の入れ知恵か。共有されている。贅沢言わないの、男冥利に尽きるではないか。それはそうだが。格好つけるな、二人をものした、祝杯ものだ。そうだな。そうだ。俺がそんなにもてるわけはない。それが男と女の間というもの。自答は果てしない。あるがままに。見る、感じる。そういうこと。
 その後明け方まで坂本は再び犯されるのだが防戦一方ではなかった。機を見ては攻勢に転じる。守も攻めるも黒金の玉散る刃を受けよかし。もうだめ赦してとアンが叫んだ気もしたが定かではない。発情した女は人種国籍を問わず可愛いが、このたびは大型レスラーに組み伏せられた感は否めない。


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