20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:続 闇の権力者たちの近代日本史 作者:佐々木 三郎

第3回   カナンの証言
カナンの証言

 カナンの四国巡礼も二度目、一番札所霊山寺から落ち着いた気持で歩き始める。ただ歩くということが己を変えてゆくのであろうか。同行の山田常男は付かず離れず漂々と歩みを進める。一人ではない、と思えることが人を温和に柔和にするのであろうか。カナンの自問自答はつづく。

 あれは。揚雲雀じゃのう。揚雲雀。菜の花畑の小路を歩く巡礼たちの表情は穏やかである。天国とはかような地ではないか。あの人達には悩み苦しみはないのでしょうか。悩みのない者が巡礼などするものか、と常男が笑う。
 極楽とは楽の極みでありましょうや。そうよのう。苦の極みとは。地獄じゃろう。ああこれ。見共でござるか。否、お連れじゃ。少し楽にさせて進ぜよう、これに。そこは曹洞宗の門前であった。坐禅を組みなされ。ひー、ふー、みー、よーと数える。何も考えてはなりませんぞ。目は半眼に、眠ってはいかん。禅道場に喝が飛ぶ。激しく肩を打つ音。カナンは気合を入れられる。余計なことを考えるでない。

 一時間の坐禅が長く感じる。半跏でも痺れて立てない。膝の下を揉みなされ。どうしてかような姿勢を取るのでござるか。一番楽ですからなあ。楽ですか。左様、仏様を御覧なされ。足首を両膝に載せるなどできそうもない。いやいや、慣れれば楽ですよ、如何でしたかな。痺れましてござる。どちらから。ルソン島から参りました。某は米国でござる。それはそれは遠いところからようおいでなされた、かけ蕎麦を接待いたしましょう。
 おいしゅうござる。食事は黙って食べるものでござるよ。馳走でござった。なんの、ああ、そば汁は白湯を入れて飲み干しなされ。日本の蕎麦は身も心もゆったりさせますなあ。そうですなあ。御坊、何故それがしを呼び止めたのでありまするか。貴殿の悩みはあまりに重そうでのう、気の毒じゃから呼び止めた。私の悩みが解るのか。他人の悩みは解らない。ではなぜ。悩みの中身は判らぬがその人に大き過ぎる、重すぎる悩みは解る。

 悩みをなくするにはどうすればよい。誰にも解るはずもない。誰にも。自分で解決するしか無い、何かをしようとするから悩むのです。その何かを諦めれば良いのでしょうか。諦められますかな。ではどうすれば。悩みととことん向き合うのですな。とことん。虚心坦懐に。それは。己を空しくすること、あるがままに見つめる。どのようにして。欲を取り去ってゆく、悩みの本当の姿が見えてこよう。欲を取り去るには。無我になること。いかにして。それがため坐禅を組むのじゃ。
 坐禅で無我になれますか。人次第、百人に一人いるかいないか。無我とは。我を無くす、我を忘れる。考えることができなくなる。考えるから分からなくなる。考えてはいけないのですか。されば、遊びに興じる子供、仕事に打ち込んでいる人は考えているかな、芸に打ち込む人は考えているかな。あれこれ考えていると思いますが。初めはな、ある域に達すると思考は止まる、仕事の世界に、芸の世界に身をおくと己の目指すものが見えてくる。はあ。目指すものにひたすら近づいてゆくとき己を忘れる、これ無我の境地なり。
 無我になれば悩みはなくなりますか。無くならぬ、が、悩みが見えてくる。それで。慌てるでない、あなたの悩みはあなたが考えているほどに大きいのか、あるいは小さいのか、本当の姿が見えてくれば半ば解決できたに等しい。悩むほどのことはなかったと気づくことですかな、常男が尋ねる。十中八九は、ただ彼の悩みはあまりに重そうでお引き留め致した。
 悩みを考えるのではなく見つめるのですな。さよう、みつめるのです、されば真の姿が見えてくるでしょう。有り難き御説法謝し奉りまする。また折あらばお立ち寄りくだされ、拙僧はこれから法要があるゆえおかまいできませんが、もいちど坐禅を組まれよ、何、何時でもどこでも半畳の場所があればできますぞ。

 二人は禅寺を辞し次の札所に向かう。朧月じゃな。おぼろづき。菜の花や月は東に日は西に。カラス何故泣くの カラスの勝手でしょ。これお嬢さん、
鶴林寺は遠いかの。連れてったげる。小学生の女の子が二人、先に立つ。鐘が鳴っとるだろ、ここまっすぐじゃ、うちら帰る、さいなら。おおきに。
 おおきに、ですか。三歳の童とて導師なり。はあ。この国は人々が優しいのは何故か、考えずに見つめよか、禅問答だな、カナンは自問自答する。確かに坊主の話で気が楽になった。何故か、その何故かが良くない、どうしてか、これも同じか。風呂に入って夕餉にいたそう。はい。
 日本の食事は身体にやさしいですね。カナン、食事は黙って食うものじゃ、この食事に係わったすべてのものに感謝して食するものである。心得ました。カナンは質素な食材を料理を味わいながらそして感謝しながら食うことはなかった。我ながら身が締まり健康になったと思う。
 食後講話があった。不条理を不条理として受け入れよという内容であった。人は悪にもなる、善にもなるのは何故か、カナンは問う。人の心は善と悪が常に戦っているのです。悪を抑えるには。悪は欲から生じます、欲を抑えるのです。欲は悪ですか。悪ではありませんが悪をかきたて、善を抑えます。いかにして欲を抑えるのですか。欲望に囚われず程々にすることです、食欲は腹八分、性欲、物欲も程々に。
 悟りの境地とは、と常男が。あるがままに見つめられるということです。人は嘘をつく、故にだ人なのです。犬、猫は嘘をつきません。可愛い我が子をなくした親は何故自分だけがと嘆き悲しみます、それが人間界です。天界ではありません。嘆き、恨みは一時のこと、そこに救いを見出すことはありません。あるがままに見つめるとき真の姿が見えてくるでしょう。あなたは悟りの境地に近づいておられる。それがしが。巡礼を終える頃には御仏の心に触れるでありましょう。


 その頃、ゴルゴ13の炙り出しと謎の飛行物体トモカサの攻撃は激しさを増していた。Aの家が全焼した。火元はガレージ前に置かれた灯油と見られた。
発火原因は不明。メイドは買物に出かけていたオハラと電話で話していて火災に気づくのが遅れたと証言した。メイドは消防署に通報してから避難しているから落ち度は見当たらない。隣人らの目撃証言からガレージから黒煙が上がり建物に燃え移ったことは明らかである。
 灯油の納入、家族の買物を考えると放火の疑いが高い。爆薬、発火装置などは見当たらなかった。とすれば太陽光線しか考えられない。Aは歯ぎしりする。他の被告人らも脅しであることはすぐ察した。明日は我が身である。
機密書類は移したほうが良いのではないか。下手に動くと却ってまずい。静観するしか無い。そうだな。全員に徹底してくれ。

 紛争、テロを問わず使用する武器に対する熱線の照射は兵の戦闘意欲を削いでゆく。謎の飛行物体は戦闘関係者を恐怖に貶める。それだけ非戦闘員の安全は高まってゆく。戦闘には力の説得が言葉の説得より効果がある。主要国の政府高官のスキャンダルも国民の不信感を募らせる。やはり自分の国も闇の権力者たちに支配されているのかという気になる。
 とくにチベット、東トルキスタンでの弾圧には熱線の照射は熱を上げる。非弾圧者への誤射がない。各飛行物体が収集した武器を持った者、弾圧した者の情報は空母型飛行物体のデーターベースに記憶され、そこからランで各飛行物体に情報が配信される。攻撃型飛行物体はその情報を共有できるのだ。

 夜明けとともに連邦準備制度の白い建物の上空に巨大な熱気球が現れる。高度を下げ始める。米空軍は対応に苦慮する。メディアが取材する中、落下傘部隊が巨大なカッターナイフで熱気球を切り裂く。その時黒い容器が落下して白い建物を黒く染める。容器は遠隔操作されているのであろう。コールタールのようである。お前たちは黒だと言っているようだ。
 陽はすでに昇っている。西側から眩しい反射光が発せられコールタールが発火する。黒煙と炎は天をも焦がす。取材は中継に切り替えられる。全米が全世界がテレビ画面の釘付けとなった。コールタールはおよそ200平米にひろがっています、キャスターが叫ぶ。黒煙が辺りを暗くしてゆく。我々の呼吸も困難な状態です。大げさに咽てみせる。突然あちこちで発光する。何でしょう。線香花火、爆竹音。これは愉快犯ですね。わかりきったことをいう。
 現金輸送車襲撃の第2弾でしょうか。これまた見れば解ることを大声で叫ぶ。自分のPRが一義、報道は二の次。スタジオから解説をお伝えします、中継はそのまま続けて下さい、犯人はトモカサでしょうか。手口は似ていますねえ。目的は。新東京裁判での自白を迫っているのでしょう。論理が飛躍しますね。他に考えられますか。
 つづくホワイトハウス、天安門への攻撃は指導者の椅子を揺する。闇の権力者たちにすがっていていいのかと不安になってくる。指導者ほど保身に長けている。上品な顔して武器輸出を続けるEUに対しても謎の飛行物体は警告は終わった、今後予告なく攻撃すると宣言した。攻撃とは破壊もあり得る、攻撃目標にはバチカン、バッキンガム宮殿、ベルサイユ宮殿もそして聖地エルサレムも例外ではないと強硬な姿勢を示した。
 バチカンは中世まで絶対的存在であった。イギリス国王ヘンリーは離婚を認めぬカソリックを蹴ってポロてスタントを打ち建てる。バチカンからの独立が近世である。欧州諸国もこれに倣う。絶対王政の成長とともにローマ法王の権力は相対的に低下する。
 近世とは絶対王政とバチカンとの抗争であると坂本が白井貴子に語る。この茫洋とした男の想像力は貴子を興奮させる。シェークスピアの執筆とこの抗争は時を同じくする。その作品は政治的意図を持って書かれたはずだ。ヤクザの組が分裂、独立するのと基本的に同じだろう。バチカンもハプスブルク家を使ってシマの安定を図る一方、オランダからオレンジ候を送り込んで英王室を乗っ取りますから近世とは絶対王政とバチカンとの抗争といってもおかしくはありませんわ、貴子は彼女も同じ事を言っていたわとコロンビア大学の学友アンヘンリーを思い出していた。
 ともかくバチカンは21世紀の今日でもキリスト教の総本山であり強大な権力を持っていることに変わりはない。この人はバチカンが闇の権力者あるいは同じ穴の狢と考えているのだ、この裏付けをアンに頼もうと思った。バチカン攻撃は皇居攻撃に匹敵する、思っていることはできている男女には伝わるものである。坂本は貴子を抱き寄せる。たまらず貴子は考えを語る。
 ローマ法王の衣は赤く血に染まるであろう、と謎の飛行物体はふれる。その御触はすぐ現実となった。赤いペンキを吹きつけられた新法王は地に染まったように見えた。赤いペンキが爆薬であれば、これを阻止することはできない。世界に衝撃が走る。トモカサはキリスト教徒ではない。神を恐れない。言ったことは実行する。闇の権力者たちの本丸に火の手が上がるのも時間の問題だ。連中は初めて恐怖を覚えた。




 舞台は整った、カナンの出番を待つまでだ、と坂本は思った。山田常男は定期的にカナンの状況を知らせてくる。?。いましばし。土佐路とくに室戸岬の遍路道は海岸の砂利の上を歩くことになる。険しい伊予路に向けて足腰の鍛錬とも言われる。
 弘法大師空海が悟りを開いた祠を出ると天空と海面が一つに見える。カナンの目には空と海の境が消えたように見えた。海は世界を巡る、空は地球を包むとつぶやく。常男は気づかぬように先をゆく。伊予路は険しい。高低差が遍路を苦しめる。修行の正念場だ。季節は夏を迎えていた。

 首筋から背筋を流れる汗は身も心も浄化させる。「目指すものにひたすら近づいてゆくとき己を忘れる、これ無我の境地なり」カナンは禅僧の言葉を繰り返していた。自分が目指すものは次の札所か。先祖の恨みを捨て去ることか。人はどこから来てどこへ行こうとしているのか。今自分は何をしている。巡礼か。何のため。考えるのではなく感じるのだ。カナンの頭は肉体以上に熱かった。思考は混乱する。
 山田常男が緑陰の岩の上に腰掛けていた。カナンが横に腰を下ろした時、一陣の風が通り抜けていった。おう。カナンが発した声は風と共に去って行った。何かがカナンの中を通り抜けた。


 検察側証人にカナンが立ったのは、秋の日であった。頭を丸めたカナンは修行僧の雰囲気を湛えていた。これから私が検察官として証人お尋ねすることは証人及びご家族の心を痛める事になると推察しますが、私の役目故ご容赦願いたいと存じます。尋問に立った福永元東京高検検事正は目礼した。証人カナンはゆっくり一礼する。

 この議事録は誰によって作成されましたか。
 被告人全員と私です。
 証人と被告人らとの関係はどういうものですか。
 同じ組織の構成員です。
 その組織はどういう組織ですか。
 それは申し上げられません。
 この議事録は議事録の要旨、抄録ですか。
 そうです。
 議事録の詳細は別にありますか。
 あります、
 それはどこにありますか。
 言えません。

 では、この録画はあなた方の会議を撮影したものですか。
 そうです。
 この会議は定例的に開かれるのですか。
 年に一度開かれます。
 いつどこで開かれましたか。
 忘れました。
 この会議の出席者は誰ですか。
 被告人全員と私です。
 と言うことは、出席者は組織の構成員全員ですか。
 それは、わかりません。
 どうしてですか、あなたはこの会議に出席していたのでしょう。
 答えたくないのです。
 質問を変えましょう。被告人全員と貴方以外の出席者は何名ですか。
 一名です。
 その人の名前と地位を言って下さい。
 言えません。
 どうして言えないのでしょうか。

 異議あり、今の質問は証人を虐待するものです。
 意義を却下します。当裁判所も知りたいので証人は答えて下さい。

 証人カナンは震えていた。検察官は証人に近づく。静かにカナンの肩に手を置くと言えるようになったら答えて下さい、と諭すようにつぶやく。

 次に動機についてお尋ねします。あなた方の組織が人類を憎む理由は
 何ですか。



 私たちカナン一族は神に憎まれました。
 理由は何ですか。
 わかりません。
 それからどうなりました。
 いわれのない差別、虐待を受けました。
 それはどのようなものですか。
 神に呪わてた民と蔑まれ、虐殺されました。ある者は死体を切り裂かれ、  頭の部分に縄を通されてぶら下げられました。ある者は路上で強姦されました。ある少女は性器に花を差し込まれました。これを観ていた民衆は手を叩いて喜び私たちのふるさとの歌を合唱したのです。
 それはあなた達のふるさとカナンの地で行われたのですか。
 カナンでも、他の地でも行われました。
 神、あなた方の神があなた方を憎み呪った、それが他の民があなた方を虐殺する理由になるのですか。
 神はイスラエルの民に我々11部族を滅ぼすように命じたのです。
 その理由は。
 神の怒りに触れたのでしょう。
 その怒りの理由をお尋ねしているのですが。
 それはわかりません。
 神様の虫の居所が悪かったのですか。
 多分、そうでしょう、しかし私には理由はわかりません。
 しかし理由のない命令は無効でないでしょうか。
 検察官は日本人とお見受けしましたが、神の命令は絶対です。
 よくわかりませんね、理由のない、気まぐれな命令に従うのですか。
 私には答えられません、どう言ったらいいのかわかりません。
 そもそもあなた方の神とは何者ですか。
 そのような質問は初めてです。
 旧約聖書によるとその神はこの地球を想像し、アダムとイブを創ったそうですね。言わば親ですよね、生みの親がその子を滅ぼすのですか。
 どう答えたらいいのか。
 子の過ちは親の責任、少なくとも成人するまでは親の責任でしょう。
 親子の関係と神と人間の関係を同一に論じられないのでは。
 あなた方の神は人間の親以下ですか。過ちを犯した我が子を庇うのが親ではありませんか。私は昔凶悪犯に死刑を求刑しました。罪状は明らかでしたが凶悪犯の親はうちの子に限ってそのような凶悪なことをするはずがないと叫びました。求刑通り死刑判決が下され執行されましたがあの親の叫びは今も耳に残っています。

 私を責めないで下さい。私は貴方の質問に答えられないので他の人にお尋ね下さい。ただ、日本の親子は非常に強い絆でむすばれていますね。これが
この民族の根幹であると我々は考えました。
 その考えが日本の戦後体制のあり方に影響を与えたのですか。
 そうです。親子、家族の絆を断ち切ってゆけばこの民族も崩壊する、少なくとも優秀な民族ではなくなると考えたのです。
 他には、どのような考えがありましたか。
 他人に対する思いやりですね、これは他民族には見られません。あってもこの民族のように生活のあらゆるところで見られるということはありません。
 あなたは思いやりをどのようにして知りましたか。
 四国巡礼です。
 それはそれは。具体的にお話いただけますか
 お接待ですね。それは巡礼者にお茶、うどんそばなどが無償で振舞われます。赤の他人に何故優しくできるのか、私には理解出来ませんでした。接待することで巡礼者のご利益の御裾分けに預かるという宗教的意味だけでは接待できるものではないと思われます。同行者が子供たちに道を尋ねました。その少女たち二人は途中まで我々を案内してくれたのです。我々が目的地の次の札所を発見するとうれしそうに帰って行きました。なぜ少女たちは幸せなのか。他人が幸せになることは自分たちも幸せになると思っているようでした。あの笑顔は私の心を溶かしました。
 それは日本の若者が忘れかけていることですね。
 我々がそうしたのです。戦後直ちにそれまでの既成概念を否定すること、故人の権利を主張させること、これは奏功してバブル期を堺に思いやりが廃れていったと認識していました。それは誤りでした。それは都会でのことで地方には思いやりが残っていました。それどころかそんな策で民族の心が変
えられますかと地方の人々は笑っているようでした。
 我々にこの民族の心を弄ぶ権利はあるのかとの疑問が生まれました。その疑問は日毎に成長しました。憎しみ、恨み、復讐がもたらすものは何か。それは一時的満足、麻薬のようなものです。憎しみは憎しみを育てます。さらなる復讐しかこれを抑えることはできません。それも束の間の休息です。
 今の貴方の心境は。
 今の心境ですか、人は他人を思いやることでこの地上で生き延びてきたのです。他の動物で他を思いやるものを知りません。他を思いやることは大きなよろこび幸福感をもたらします。報酬を求めず他人の喜び幸せを己の幸せと感じることは人の本来の姿でないでしょうか。
 これからどのように生きて行きますか。
 もう少し日本で修行して世界を巡礼して周りたい。ただひたすら歩いて周りたい。恨み、悩む人に他を思いやることが自分を幸福にすることを説いてまわりたい。世界を一周、二周すれば解脱して悟りが開けるでしょう。
 その時のあなたはおいくつになられているでしょう。
 一周30年として100歳一寸でしょうか。
 貴方の祈願成就とご健勝をお祈りして私の尋問を終わります。


 弁護側反対尋問どうぞ。
 とくにありません。
 では証人は退廷していただいて結構です。当裁判所も証人の祈願成就を
 祈ります。本事件審理にご協力頂き感謝します。ご苦労様でした。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 4675