第二章 家族崩壊、国栄えて民滅ぶ
柳史訓と話したくなった。新幹線でバギオに向かう坂本ユキ南海男の家族は平凡な家族に見える。新幹線の快適さは航空客を奪ってゆく。何より時間に正確、少々の悪天候にも影響されない信頼性がフィリピン時間を変えてゆく。文化革命だ。この新幹線もリニアモーターに代わる時代が来るだろう。坂本がそれを見るのは無理だが南海男が成人して見届けてくれるだろう。台湾と国力に比べても夢のまた夢かもしれないが。
柳史訓との対話を聞いて陳、カルロス家族もマニラから乗り込んできた。座席を回転させると円卓が出来る。女たちは飲んで食っておしゃべり、世界共通らしい。『そうか、リニアモーターを子孫に残すあるか、人は子孫に誇れるものを残すこと最高の幸せあるね』『陳よ、近頃詩人になったか、しかし言い得て妙だ』
柳家族の食卓に塩崎家族が集まってきた。柳家の中華料理は北京風だ。こうして美味しい料理をいただけるって幸せね。ほんに真知子、夕食は持ち回りしてはいかかがです。賛成アンジェリータ、中華、スペイン、日本、フィリピン料理が楽しめてよ。でもフィリピン料理は皆様のお口に合いますかしら。合いますよイメルダ、棚田でとれたお米は本当に美味しい。許細君のいうとおりよ。
じゃあ、明日は我が家で夕食を。許細君中華が続くのはどうかしら、明日はスペイン料理にしましょう。じゃあ、阿弥陀で決めましょうと真知子。アミダ?お母さん、これと清美がノートとボールペンを差し出す。ありがとう、柳家、山田家、カルロス家、陳家、塩崎家、ね。下に12345の順番。さあ、いくわよ。柳家は5番。面白そう。山田家4番。カルロス家1番。陳家2番。塩崎家は?3番。どうしてマチコ、やってないのに?モニカ3番しか残ってないでしょ。何よ紀和、口出さないでよ。
モニカ(マリア)アナヤ(アンジェリータ)碧渓(梅雲)碧谷(許細君)南海雄(ユキ)紀和(清美)の順番を決めることになった。何の順番だか分からないが子供は順番をつけたがる。皆さん、食事が終わってからゆっくりやりなさいと柳夫人。はーいと子供たちは席に戻る。でもどうして同じ場所に到達しないのだ。不思議ですなあ。そこが阿弥陀たる所以ある。
食事を楽しみ、会話が弾む。これに勝るものがあろうか。坂本は幸せをかみ締めていた。話はリニアモーターになる。まあ、坂本さんらしいわね。夢ですよ。いえ、我々は坂本さんの夢を追体験させていただいているのです。左様でござるな。一同うなずく。お母さん、ツイタイケンって?黙って聴いていなさいと清美。大人の会話中に子供が口を挟むことは禁じてある。
龍次の夢を追ってゆくと金など無意味に思うよ。そうだな陳、為替変動に一喜一憂するのは馬鹿らしくなった。ものは値段ではなく、使ってみて本当の価値がわかると柳。ヴァイオリンを分身と思うマリアが大きくうなずく。
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