生協、児童養護施設、職業訓練所、視察
ユキは機会あるごとに生協を視察する。いきなり買い物を始めるのだ。ユキに気づくのは買い物が終わった頃だ。支店長は転がるように駆け寄るがユキは無言で立ち去ることもある。無言とは怖いものである。理事長からどんな叱責がくるやら。『真面目にやってくださいね、支店長なんていくらでもいますから』支店長は身をすくめる。 今や1000を超える支店だがユキの不意打ちを食らわなかった店は無い。前理事長にして国会議員のユキも一会員、一主婦としてやってくるから言いたい放題である。態度の悪い店員には聞こえよがしに悪態をつく。『近頃どんな教育してんだい、この店は。こんどの総会では教育を質してやるからね』そうよ、あの娘可愛くない。こっちはぶすだけど気立てがいい。などと近くの買い物客が集まってくる。時には食堂でとなることも。ユキ議員といっしょに食事したとなると自慢できるのだ。
ユキは海中トンネルを理事長に提案した。アイディアは素晴らしいですが果たして実現するでしょうか。生協がやらないなら私がやる。お待ちください、早速理事会に諮ります。思いついたらすぐやるのがユキのスタイルだが、機関決定を図るのは当然と思いながらも苛立つのである。何かするものがないかと思うと坂本に相談する。何をすべきかが言える男ね、私の旦那、種もくれるし考えをくれる。一人笑いをするユキだった。何をしたらいいかが分かれば半分できたようなものだわ。 海中トンネルの予想図を公開する。最近ではCGで立体的に表現できる。設計、施工を公募する。残ったのはシャハラザード大学と外海を結ぶ運河を請け負ったJV企業だ。概算予算5000億円に対し3800億での入札だ。一も二も無い、と喜ぶユキにJVの代表は条件を提示してきた。工期は3年、JVに観覧箇所の業者加えることである。 ユキには理解できないので坂本が通訳する。海中からの魚類海草等の観覧が目玉であるから透明素材の加工技術と経験を持った業者を加えたいというのだ。それは四国の中小企業だが日本の海中公園での実績を誇っていた。山椒は小粒でぴりっと辛いかしら、日本を代表するJVが推薦する会社なら素晴らしい会社でしょう、私たちの夢を海の中に描いてくださいな。
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