政府高官のスキャンダル
週刊トボケに中国政府高官のスキャンダルが掲載された。この週刊誌はスキャンダル専門でエッチ系では有名だが、記事の信頼性は低い。販売数もそこそこであったが、完売した。創業以来初めてのことである。店頭では次週号の予約が殺到した。 スキャンダル記事は3週連載ものでその末尾に「保存版通読者にオリジナル動画DVDプレゼント」と記載されていたのだ。駅のゴミカゴを探す者、古紙回収業者を当たる者まで現れる。 なんで?スキャンダル写真の女性だ。学生時代の清楚な写真が読者を引き付けるのだ。こんな可愛い娘を弄びやがってと相手の高官を憎悪する。
評判が評判を呼び、週刊トボケは売り切れ御免。中国大使館から外務省に抗議があったが本国へのゼスチャーに過ぎなかった。 オリジナル動画DVDと交換された週刊誌は数倍から数十倍の高値がついて再販される。販売店は同じ物を二度売ったことになる。古物営業法違反であるが警察も野暮なことは言わなかったようだ。しかも週刊トボケは処分を販売店に委せるというのだ。
買うかとのゴルゴにいいねえと返信する坂本。中国政府高官のおもちゃにされた女性たちの写真とヴィデオ。程なくゴルゴ13がホテルにやってきた。写真を観て喜ぶ坂本。1億6800万円の小切手を差し出す。?。色は世界共通。だな。他には。ない、軍部のも入荷次第納品する。よろしく。北朝鮮、米国は。言い値。色仕掛け作戦か。たまには艶っぽいのもいいだろう。
二人はホテルのレストランで食事をとる。今日は俺がとゴルゴ13。坂本は白井貴子を呼ぶ。プロに何だが、狭いところ、高いところの撮影は俺が役に立てるかも。憶えておく。貴子が来た。今日はこちらの奢りだから美味そうなのを注文したらいい。まあ相変わらずね。 ゴルゴはこの男といるとほっとする。仕事しても面白い。非情に徹するのがこの商売だが今までこんな依頼はなかった。充実感と満足感があるのだ。依頼以上の成果を出したいという気になる。 闇の権力者たちの写真と情報を手渡す時どんな顔をするだろう。あと少しだ。自分が提供する材料をどう料理するのか楽しみだ。
田中と大平がやってきた。今日は東郷さんの奢りだ。遠慮無くいただくか、ここのステーキは格別だ。ご馳走になりますと大平が軽く頭を下げる。ゴルゴ13ことデューク東郷が目で笑う。人に奢ることはこんなに気分がいいことか。 東郷さんは国際情報にお詳しいのですねと大平。忍びに過ぎません。我々は上っ面の情報しか持っていませんので今後とも。東郷さんは艶っぽい情報も得意だ。それはそれは。週刊トボケは手に入れるのに苦労したよ。是非回覧してくれ、田中。閲覧料は酒一升。いいとも、商談成立、乾杯といくか。
楽しい食事が済むと東郷は支払いをして帰ってゆく。四人は部屋で写真とヴィデオを鑑賞する。こういうのならいいなあ。懲戒免職だぞ、田中。本望だ。殿方ってみんな。英雄色を好むだ。 コピーさせてもらえますか。近々軍のが入荷しますから一緒にお届けします。楽しみに待ってます。お前も好きだな大平。これは職務上必要なのだ。そうですな。軍は政府を責めたいから日本への非難を強めるでしょう。坂本さん勉強されましたな。指桑罵槐か。ああ、坂本さんがこの写真とヴィデオをどう使うか想像がつく。さすが外務省。 その後なんですが、中国政府と軍部を解体してしまおうと思うんです、情報工作員が欲しい。明石元二郎並。ええ、チベット、ウイグルも独立させたほうがいいと。なるほど人選しておきましょう、軍のヴィデオ入荷までに。今度は大手出版社に売りつけ元を取らねばなりませんので取り扱いに注意していただきたい。言われるまでもありません、ご商売の邪魔になることは致しません。
出版社は著作権料3億に難色を示す。市場は日本だけではありませんよ、ネット販売もありますよ。ですね。では契約させていただきます。国内の販売は100万部を超えたがそれは宣伝にすぎなかった。海外からの注文が殺到しすぐ元を取った。あとはすべて儲けだ。 中国国民は中国政府高官のスキャンダルを噂にきいてはいたがこれ程ひどいのか、こんな連中がこの国を支配しているのかと思いを新たにするのであった。学卒のプー太郎は日本の学生が羨ましい。我々には仕事が無い。この国で生きてゆくには政府の言いなりになるしかない。その政府は蓄財と好色に勤しむ高官で構成されている。
軍の日本批判=政府批判が強まり反日デモが高まるのを待っていたかのように軍司令部のスキャンダル写真が世界に配信される。 明日は美国か北朝鮮、どうせ女郎屋の床に咲く。そんな替え歌がアップされる。高官の醜聞暴露は闇の権力者たちへの牽制球かもしれない。こちらの手法をそっくり真似ているではないか。 軍と政府との対立を煽ってゆけばこの国が崩壊するのは時間の問題だ。蓋の重しを除けば沸騰した蒸気噴出する。軍備費の使途が暴露される。海外からの見積もりを水増しさせリベートして3割を受け取る。交渉、契約の映像が中国全土に流されるとネットで全世界に広まる。 知識人から自由な政党が旗揚げされる。共産党独裁はあっけなく終わりを告げる。大平の送り出した「明石大佐」の諜報活動によるところが大きいが今や国内世論だけではない、世界世論が民主主義を後押しする。ソ連、ルーマニアに続く共産主義の破綻である。資本主義社会主義を経て共産主義に至るとの唯物史観からしてもおかしかったのです、と評論家がのたまう。
次は北朝鮮ですよと予告番組が世界に流される。更に武器産業と金融市場とシリーズ番組予定が紹介される。もはや和平の道はない。殺るか殺られるかだ。闇の権力者たちに動揺が走る。
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