第四章 正義は力なり
坂本、白井貴子、大平の三人は田中から夕食に招かれた。 「これでアメリカの出方次第を見るのか。」「まあな。アメリカ局は慌てるだろう。」「つまり米政府ということでしょうか。」「きついなこのお嬢さん。」「すみせん学問的興味で。」「婆さんとふたり暮らしだろ、こんな娘がいたらなあ。」「誰が婆さんですか、お客様が来られてるからって甘えるものではありませんよ。」「ホイすみません、悪うございました。」
「素人なり私も考えたのですが、尖閣、竹島、北朝鮮、南沙諸島となれば沖縄、岩国基地の重要性が増すでしょうから米国は手放さんのでは。」「迎撃ミサイルをグアム・サイパンからでは間に合わんわな。」「ああ。」「横田の戦略的価値は減ったから返せ、全部がだめならせめて縮小返還をといってもアマリカは応じませんか。」「小松、三沢、千歳が対ロシアとすればおっしゃるとおりですが。日本制圧には横田が中心になる。アメリカさんはそう考えているようです。」
「冷戦も終わり中国、北朝鮮を想定すれば沖縄だけいいのでは」「日本の軍事力からすれば可能ですが政治的にはどうですか」「よろしいでしょうか、米国は日本の経済的援助だけでなく軍事的援助が必要になってきたのではないでしょうか、したがって憲法改正を迫っているのでありませんか」 「日本の軍事力も使えて政治的にもイニシアチブが取れるなら最高の伴侶ですが。」「難しいところだな、円高ドル安は米国製武器のお買い上げを言ってきているが、日本企業も自前の武器開発が可能になれば、いや可能にしてくれだな、日本製のほうが米国製より優秀ですと言い返している。」
「なら日本が武器輸出国になったらどうです」「通産省としてはそのほうが国益に沿うと思うのだが外務省がね」「おいおい」「いやあ、日本が最先端の武器を輸出すれば今出まわって武器は陳腐化する、スクラップだ、各国が日本製の武器を分けてくんなましと言ってくるようになれば政治的にも一等国になれる」「素晴らしいですわ、やはり正義は力で実現するのですね」「そうだな、現職時代は言えなかったがゼロ戦技術は新幹線に受け継がれている」 「田中、謎の飛行物体は日本製だと言いたいのか、確かに今までの武器は無力になったが」「機械的なことはわからんが匂いだな、用い方の芸が細かい、気配りというか、どことなく日本の匂いがする」「ほう。さくら、さくらと歌いながら核兵器の使用まで封じ込める、年の頃なら二八」「若い娘に目が行くのは老化の現れだぞ」「何を言うか若くて綺麗なのを好むに年は関係ない」
「カナンのパスポートは本物でしょう、どうやって拉致したのでしょうね」「100万ドルの小切手、日本で換金されたとすれば外為にひっかかるが何でわざわざ日本で」「承知の上のことだろう、いや、調査してくれと言っているようだ。」「困るのはそちらの方でしょう、か。」「外為を熟知しているのだろうな」 昨夜坂本が「?」とゴルゴ13にメールで聞くと「!」と返事がかえってきたが、二人の話で少し心配になってきた。「御身ご自愛のほど」と再びメールを送る。「謝、心配御無用」と返事があった。
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