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作品名:闇の権力者たちの日本近代史 作者:佐々木 三郎

第19回   国家論
国家論

 その夜坂本と貴子は国家について論じた。近代的国家はフランス革命辺りか。近代の民主主義と言うならそうですね。どういうことだ。市民が所有権を得たということです。以前は。すべて国王のもの、つまり領土を始めあらゆる財産を所有していたといえるでしょう。個人の財産はなかったのか。国王は何時でも没収出来ましたからなかったと云えばなかったことになりますね。

 国有財産は国家のものだろう。国家は国王の機関ですから国のものとは言えませんでした。朕は国家なり、か。そうです、国土は国王の領土であり、国民は臣民でした。つまり全ては国王のもの。その財産を市民で分配しようというのがフランス革命です。それで受け取った財産権の保障を叫んだのか、神聖にして侵すべからず。所有権の保障が資本主義の根底です、日本でも憲法で保障してますが。中国では土地はすべて国のもの、いつでも立ち退かすことができる。

 ええ、不動産登記法、公示制度の歴史は古くありません。そもそも国王が絶対的権力を握ったのはなぜだ。難しい質問ですが端的に言えば武力でしょうか。力は正義なり。そうです、ヤクザと同じでは気恥ずかしいので王権神授説は少しでもと格好をつけたのでしょう。
 リバイアサンは王権を契約に求めた点で評価されているが、万人は万人に対して狼なのか。これも日本人には理解しづらいでしょうけど世界の多くの国がそうですね。北欧と日本ぐらいか、他を思いやるのは。でしょうね、勝ち組は驕り負け組は片隅に。

 話は変わるが戦争とは政治学的にどうなっている。「戦争とは、敵を強制してわれわれの意志を遂行させるために用いられる暴力行為である」というまずクラウゼヴィッツの戦争論が思い浮かびますが。では最高級の体罰か。体罰は教育目的でなされますが、政治目的達成との観点からすれば戦争は最高の手段でしょうね。要するに言うことを聞け、だな。

 戦争目的は領土拡大がほとんどですから儲かるのでしょう。トロイ戦争は例外か。王女奪還が戦争目的はまあ神話の世界でしょう、儲かる意味は戦利品もあります、略奪は兵のボーナスだったでしょう。なるほど。兵の多くは傭兵ですから給料分は働きますが。祖国のために柱になる気はない。御国のために名誉の戦死、日本軍は世界に例を見ないですね、満州事変の勢力は張作霖軍は45万、関東軍は1.5万と言われます、兵の気構えが違いました。戦争は昔から儲かる商売だったようです。美味しい商売。ええ。毛沢東の中国共産党は政権を、蒋介石は実をとって大財閥に、加えて故宮博物館と台湾を得ました。蒋介石の閨閥宋美齢を始め配下の武将もそれぞれに荒稼ぎをしました。

 陳伯達の中国四大家族によると、蒋介石、宋子文、孔祥煕、陳果夫立夫兄弟は200億ドルを稼いだそうです。1家族50億ドル、今の金なら数百ドルか。中国の山賊匪賊の親分がこれだけ稼いでますから欧米の将軍クラスは推して知るべし、でしょうか。となると闇の権力者たちは想像できないな。スケールアウトですね、

 昔も今も天高く馬肥ゆる秋、いざ出陣か。あれは馬賊の職業です、ただし軍と合流することも多かったから半馬賊半軍人とも。略奪が生業か。日本でも偸盗山賊海賊がいたでしょう、海外まで出稼ぎしたのは倭寇と恐れれていましたわ。元寇だけじゃないのか。倭寇を文字って元寇と呼んだのでしょう。

 張作霖、張学良親子は蒋介石の下請けなのに毛沢東と手を打ったのは国を守るためではなかったのか。それぞれが米ソの下請けと仮定しますと張はスポンサーがいなかったから第三勢力になろうとしたのだと思います。項羽と劉邦、の韓信か。そんなところでしょう、蒋介石は張学良に毛沢東の紅軍討伐を命じます、しかも前渡金を出しません、ならばと張学良は西安事件を起こしてお二人だけじゃないよと自分をアピールしたのでしょうね。

 坂本はかつてこの問題を話したことを思い出していた。日中戦争は、どういう風に考えたらいいか。蒋介石と毛沢東のとの権力争いですね。ええっ?どういうことだ。蒋介石が優勢でしたね。ああ。劣勢側はどのような策を講ずるでしょう。奇策に出る。そうです、反日運動を展開します。わからないな。盧溝橋事件は中国共産党の謀略との見方が通説です、日本と蒋介石を戦わすと楽でしょう。戦わすように仕向けた?日本を悪者にすれば蒋介石国民党は開戦せざるを得なくなります。指桑罵槐ですね、もっともゾルゲが裏で糸を引いていたでしょうけど。悪者を放置するのは弱腰外交か。漁夫の利を得たのは中国共産党=ソ連ですね。

 そういう見方もあるか(坂本は動揺を抑えようと頭を整理する)、専門家は違うな(戦争とはこの様に起こすのか。内戦につけ込む、場合によっては起こさせるのだ)。俺は、政治は女のほうが向いていると思っていた。どうしてですか。天照大神、日野富子、北条政子、イザベル、エリザベス、サッチャー。まあ、でも面白いですわ。男は一度に多くのことを考えることができない、女はできる。故に政治向き。そうだ。

 ねえ、私のどこがいいのと貴子は甘い声でささやく。頭がいいから、頭の悪いのは好かん。清美さん、ユキさん、、、。クレオパトラ、西施、楊貴妃らがどれほどの美人だったかは定かで無い、写真を見ないと信用出来ない、が男の心を読み取ることに優れていたことは疑いない、名君と言われた玄宗皇帝を虜にしたほどだからな。セックスが上手だった。それもあるが後宮3千人美女は選り取り見取りだったろう。ではなぜ彼女、彼女たちだったのですか。

 彼女たちは男の心を読み取れる、そうだ俺が言いたかったのはそれだ、と思ったに違いない。ありふれたお世辞じゃなく。俺が考えていたことを俺以上に表現する。玄宗皇帝はインド風の旋律で作曲をした。初めて聞く天上の音楽ですね、といったありきたりのお世辞には満足できない。楊貴妃はどういったのですか。こうだ。

 いえ、私はこのような曲を聴いたことがあります。ガンジスの辺りで聴く天竺の調べはきっとかような旋律でしょうね。うん、さすがですね。だろう、作曲者の意図を適確にとらえ作曲者以上に上手く評している。ええ頭がいいとは相手の意図がわかる、あ。坂本は貴子を押し倒す。お前は俺の考えをまとめてくれた、楊貴妃は以上に。そんなあ〜、あ〜ん。


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