砂漠の朝
砂漠の昼夜の気温は30度以上の差がある。常夏の民にはない厳しさがある。西田所長のテントは現地妻と二人の子と4人暮らしだが破格である。来客が多いこともあるが砂漠の緑化、給水の功績に対する感謝の念が込められている。砂漠の緑化は寒暖差を少なくしたばかりでなく家畜を増やした。 ラクダが中心のこの地にヤギ羊鶏七面鳥の飼育を始めた。これらの糞が豊かな実りをもたらすことを身をもって教えたのだ。父さんは西田の義父でもある。大学、運河の発案者が坂本であると聞いて100人収容のテントを作る。基礎工事は西田が担当だが塩崎家族招待のためだ。テントの皮、絨毯は部落総出の作業となった。
砂漠の朝は一番鳥の鳴き声で始まる。これも西田の功績である。西田の家畜はラクダよりも美味いと知って住民が求めてくる。西田が気前良く与えるから現地妻と喧嘩になる。その日は塩崎家族の招待である。接待準備に大童。シャラザード家族4名を加えると20名を越す。 河野家族も加わって宴会が始まる。部落全員が集まってきた。テントに入りきらない。真知子が客席をつめるように言った。西田が通訳する。 これには長老以下驚く。砂漠の民は極端な男尊女卑である。『日本の女は差配するのか』 宴会が盛り上がるにつれ西田の功績が讃えられる。待ってくれ、大学運河の発案者はここに居られる坂本さんであり、施主はシャラザード女王である、河野部長も俺も請負人に過ぎない。ほう、発案者施主は偉いのか。請負人にとって施主は絶対である。そんなものかと発案者施主を見ている。
ところで最近雨が多いのう。日本人が精を出していますからなと父さん。それはいかん、我々も頑張らねば。日本人を見習うところは多いのでは。子作りか。それも含めて。そうだな砂漠に緑とは思いもしなかったな。だから思いついた発案者すごいと内の婿殿が申しております。確かに。これで坂本の株が跳ね上がる。
突然坂本の携帯が振動する。俺だ。飛行船が上空に近づいています、撃墜しますか。いや捕獲だ。了解!何だ?外に出る。飛行船に蛍光塗料が打ち込まれる。あれを拿捕する。西田が手旗信号を送る。飛行船は静かに着陸する。西田がラクダに飛び乗ると銃を持った若者がつづく。 やがて搭乗者2名が連行されてきた。ボディチェックでめぼしいものを。西田が通訳する。坂本の携帯が振動する。乗員捕獲。IDを上に向けてください、情報入手しました。飛行船の機能は。停止してます。通信は。こちらでバリアを張りました。了解、ご苦労様。トモサカ竜作成者との交信である。 ようこそ、一緒に食事しないか、坂本が声をかける。殺すつもりなら撃墜していたであろうと搭乗員は料理を口にする。河野に尋問を依頼して席に戻る。夜の訪問者があったもので失礼しました。取り調べないのか。後でな、話をつづけよう。
なるほど大物だな。近頃狼が増えた。狼も子作りに頑張っているのだろう、蛇や蜥蜴では家族をやし得ないから人家に近づく、餌を増やしてやるのだな。どうやって。岩山に草木が育つと狼の餌が増える。岩山にと笑いが起こる。まあみていなと気楽である。
そもそも女の裸体で雨が降るのは。そのメカニズムは解明されていないが経験則で明らかですと西田。待ってましたとユキ節。水は天からからもらい水というでしょ、雨は日本語でアマともいうの、天もあまというわ。天の余っているいるところが女の裸体を見て膨張するの、でね雲の足りないところに入ってゆく、わかる。天と雲がしっとり濡れて愛液が垂れる、これが雨です。 すげえ女だ、男の話に口を挟んでくるとは。おや、聞き捨てならないねえ、男男と言うけど男はどこから生まれてくる。それはアラーの神の思し召しだ。ちょいと、ここの男は女を孕ます事もできないのかい。この南海男は私のここから生まれたのだよ。お兄さんはどこからうまれたのだい。いよう大統領、と清美が声援する。軽く手を上げ、答えれない、そう、教えてあげる。男も女もこの子宮から生まれるのよ、憶えておきなさい。女たちが大歓声を上げる。 人前で子宮を晒すとは。兄さんあんたどこから生まれた、男の癖に答えられない?子宮こそ命の源、崇め敬うべきよ。大拍手。そんな、無体な。真理に目を向けないのは卑怯ですと清美が立ち上がる。その顔は天照大神であった。その威厳に人々は圧倒される。
私の夫サカモトは大学の建設を私に命じました。私はそれを実行しました。その褒美はこのヤサミーンです。シャラハザードの顔は聖母になっていた。ヤサミ−ン、お前の父はすごい男だよ。そうだよと女たちはわが子を抱き上げる。母は強し。 あの男あんなに子供を生ませたのか。あの女丈夫、国会議員で実質大統領とか。国政改革に大鉈振るっているそうよ。啖呵の切り方かっこういい。わたしゃ胸がすく思いがしたよ。男も子宮から出てきたんだよね。 そうだよ、女を大切にすべきよ。そうそう。
長老話を変えたほうが。そうじゃの、あー、うー、日本人はえー。別の女が叫ぶ。ユキ、ユキ、日本にも姦通罪あるのかい。あるわけないでしょ、姦通てのはね、相手の男がいて成立するの。どうして女だけ処罰されるの。そうだそうだ、おかしい!だいたい姦通される夫は甲斐性がなくてあれが下手糞なのよ。きゃあ素敵、ユキ大統領。 ユキ姉さん、どうやって日本人をものにしたんだい、と老婆。それは、そのう。あれ照れてるよ、この娘。子供がいるから娘じゃないわ。でも知りたい。そう、知りたーい!ユキ。私、口説き落とされたの。嘘、本当のところ教えて。 最初にものにしたのは私よとマリア。次は私と梅雲。ふん、数が多いのは私だよ。アンジェリータと許細君はにやにや。清美ははらはら。と、 帰りましょうとシャハラザードが坂本の手を取る。『姉さん、奥を使いなされ、ベッドもあるよ』と老婆。そうか、やったもの勝ち。 ほら雨脚が近づいてくるよ。豪雨だね。ラクダは大丈夫かい。畜舎にいれたよ。ならいいけど、大荒れになりそうだよ。畜舎は西田が普及させたのだ。数年前まで水害の恐れはなかったが今では治水が需要になってきている。
私横になりたいと真知子。奥は客室だよ、ご案内して。でもふたりに悪いわ。この天候だよ、気にすることはないよ。それより皆さんもっと近づいたら。客人の席には。私たち仲間でしょ、膝を交えて話しましょ。 どうして日本人は他人を思いやるのか。不思議ですな。西田と河野は他人にせっせと尽くすものだからうちの娘はいつも怒っている。でもいい婿殿。それはもうわしが見込んだだけはある。日本人は他人に与えるのが好きな民族かのう。 ねえ、天照大神とは余ってるところを塞ぐということでないかしら。いやだあ、清美さん、それって女が上ということ?それもありますけど女がイニシアティブをとるということじゃないかしら。おお、名言と女たち。日本の女はすごいね。私草原で押さえ込まれて背中が痛かったわ。私も、今度から上になるわ。
やれやれとんだ客じゃのう。しかし女上位もまた味があるかも、ものは試しでやってみるのも。面白いかも。価値はあるかのう。また違った味があるかもしれませんなあ。我々も降雨を実証しようぞ。オウ!猥談は世界共通、人類平和の根幹をなすのかもしれない。
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