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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第9回   すけこまし
すけこまし

翌日吉良信介は5000万円をバッグに入れ天龍組を訪ねた。「姐さんご無沙汰してやす」「信介、うちの人お前にお小遣い貰った神棚に祭ったのだよ。うれしいじゃないか」「親父さん照れくさいじゃないですか」「初仕事で親孝行はなかなかできるもんじゃねえ。すると白虎組も5000万」「へえ」「てと先生はいくら」「それが1割」「欲のない人だね」「昔うちの組が危うくなったときも1割だった」「親父さんの顔を潰すのじゃねえか思いやしたが先生はあの性分でしょ」「まあ白川さんとも相談してみるが先生にあづけたのだ。先生のお考えどおり動け。信介俺にもわからねえ」「桁外れお方ですから」「ちげえねえ」

島崎社長への謝礼額、税務署に踏み込まれた場合を相談した。「島崎社長も茫洋として掴みどころがねえ、謝礼は多すぎても少なすぎてもいけねえ。お前が苦労するのも無理はねえ」「塩加減みたいなもんさ」「いえてる」「それとうちが税務署に踏み込まれることはねえが心配してくれるのがうれしいじゃねえか」「親父さん、相手は四菱財閥、税務署を使って敵討ちをやりかねないと先生が」「なるほどねえ、あっしらと読みの深さ広さが違うねえ」「次の山もこの倍といわれますの月10億も満更でなさそうで」「よし金庫はわしも考えよう」

「宜しくお願いしやす。ではあっしはこれで」「おや信介お昼食べていきなよ」「それが姐さん。人使いの荒い先生で息のつく間もありませんので」「そうかい、たいへんだねえ」「また近いうちに上がりますので。そうそうこれ先生から勉強するように言われて買ったのですが、税務署の怖さがわかりやした。親父さんもご覧なってくだせえ」「マルサの女かい」「ありがとよ」

白虎組も似たような話であった。香川健は斉藤慶子に5000万円の小切手を渡した。「要りません」「くれるものは貰っておけ。邪魔にはなるまい。君の口座に入金しておけ。君の苦痛はこんなもので癒されないだろうが人生の先輩として言っておく。どんな金でも金に変わりはない。金をどう使うかで人間の価値がわかる。これからの人生をどう切り開いてゆくかで君の価値がわかる」
なおもためらう斎藤慶子に「うちの経費100万円お願いしますね」と直美が
請求すると「すぐお支払いします」と小切手をバッグに仕舞った。「いろいろとお世話になりました」と頭を下げる。「明日うちにいらっしゃい。みんなで食事をつくりましょう。中野良子さんもくるわ」「お言葉に甘えまして」女心は女か。次は中野良子と健は思った。

 斉藤慶子、中野良子の話を整理すると
1秘書の多くが下田康介の毒牙にかかっている。木村寛子が手引をしている。
2以前から下田剛三の毒牙かかった秘書多数。島田博子が手引き。

浪漫建設の会議室。『この話から何を企画、実行するか』本日の議題である。吉良信介、国本忠二は緊張する。「思いつくことを何でもいいから言って見ろ」香川健がにらむ。
1親子二代の強姦
2職場の被害
3被害届は出されない
4他部署の被害者は
5警察は手を出さない
香川健がボードに列記してゆく。「他には」「手引きも被害者」「そうだな」「四菱財閥」「いいぞ」「ほかの会社でも同じことが」「流しの強姦」「暴走族」
 駒込直美と松崎敬子も会議に加わりたいと言ってきた。「いいだろう。本当は斉藤慶子、中野良子を加えたいのだが、隣のボードにこれを書き直す」
【強姦の原因】
1職場内被害
 11被害者の行動がつかみやすい
 12被害者は抵抗しづらい
 13被害届をだしづらい
2四菱財閥
 21警察を抑えることができる
 22税務署を動かせる

「手引きの島田博子、木村寛子を締め上げますかい」「吉良さん、いい点を突いていますが上品にお願いします」「すいやせん」「すみませんでしょ。この二人から詳しいことを訊きだしてください」「どうやって」「得意のすけこましで籠絡なさっては」「先生それはひどいっす」「御謙遜なさらず」(笑い声)「国本さんも笑っている場合でありませんよ、吉良さんと手分けして早急に情報を収集してください」「そんな、ご無体を。実家に帰らせて頂きます」「なにを。親分から預かった兄貴分の俺の言うことが聞けねえのか。蹴りを入れるぞ」
 島崎社長が口を開く。「吉良さんがベテランでも丸の内のOLとなると勝手が違うでしょう。例えばFBIの捜査官とか信用させるものが必要でないでしょうか」「おっしゃるとおりです。仁吉FBIのお勉強。英会話もな」「そ、そんな」「社長国本さんは」「税務署査察官が役どころでしょう」「忠二、税務署のお勉強、二人とも今月中に女をものにしろ」「親分より恐いわ」「だな」
 
 直美が「お茶入れましょうか」と立ち上がる。「ああ。松崎、FBI捜査官のビデオ借りてこい。どれでもいい面白そうなの。それから税務署関係のも」嶋崎が笑う。「心配するな、島崎社長が解説して下さる」「え、僕もですか」「社長にも売上に貢献していただきます。もうすぐ女子大生の被害調査がまとまるので忙しくなりますよ」「女子大生ですか」「興味ありませんか」
 お茶が出される。「松崎はどこいった」「レンタルビデオを探しに出ました」「大事な会議を抜けやがって。若いのにいかせりゃいいだろうが」「香川先生は難しい方だから自分で行ったのでしょう」「何をやってもどやされるんだ」「みてえだな」ドアがノックされる。「吉良さんにお客様です。天野さんと言われました。信介は無事かと心配されています」島崎社長が噴き出す。

応接室は天野の奥さんがいた。「あねさん」「仕事中にごめんよ、信介。酷い目に合ってると聞いて内緒で出て来たのだよ」「御心配には及びません」「お前少しやつれたね。我慢できなくなったら何時でも帰っておいで。仕事の邪魔になるから帰るね。これ皆さんで召し上がっていただくんだよ。それじゃね」浪漫建設の社員は懸命に笑いを堪えていた。
松崎敬子も話を聞いて笑いこける。息を整えて会議室に戻る。「遅くなりました。ビデオを借りてまいりました」「仁吉、忠二今日中に観て置け」「はい、勉強します」「松崎、税務署に行ってパンフレットもらってこい」「はい行ってきます」「ばか、会議が終わってからだ」「天野様の奥様から虎屋の羊羹頂きました。お出ししましょうか」「せっかくだからいただこう」

直美と敬子がくすりと笑う。「お二方も人使いの荒い先生によく我慢なすって」「私は10年堪えてきました」「そういうお前に堪えて来た」「なんですか、もう一度言ってください」「いやそういう川柳があったな」「神田小町はびしっと決めるねえ」「仁吉色目は島田博子に使え」「あっしは木村寛子の方が」「吉良さんそれはねえじぇ、賽の目で決めようじゃないないか」「いいとも」「僕が振りましょう。入ります」と島崎。「丁」「半」「四六の丁、吉良さん」

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