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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第5回   マネーロンダリング
マネーロンダリング

下田剛三と別れて正面玄関で車に乗る。ここまでの動きはすべてビデオに収録してある。「Xは下田康介の従兄と見た、単なる感だが。仁吉坊やを吐かせてくれ。写真できていたら中野良子に面透視させる。次は金はロンダリングだ」「え」「札束の紐を見ろ。四菱銀行のマークがついているだろう。札の通し番号は繋がっている」「どうしてそれを」「まとまった金はヴァージンと決まっている」「処女は厄介ですな」
浪漫建設では島崎社長が待っていた。「上手くいったようですね、興信所から第1報が届いています」香川健は下田剛三が『鬼頭美緒』と結婚との記載に注目した。「松崎、ここコピー。駒込を呼べ」昔の調子だ。「駒込、中野良子をよべ。それからこの鬼頭美緒の息子を書き出せ。急げ役所が閉まるぞ。もう5時前か、明日一番でいい」相変わらず苛立ちだ。
吉良から電話が入る。「鬼頭大介、それだ。住所、勤務先は。そうか、僕ちゃんは用済み。写真できたか、すぐ来てくれ」香川健は席を立って社員席に近づき「大山マスタツ、中野良子が来るぞ」と声を掛けた。
席に戻ると「どうですか社長」ときく。「これだけだと1月は掛かるでしょうな」国本忠二がロンダリングを説明したようだ。香川健は駄々っ子の自己中心である。が他人への気配りも欠かさないからやっていけるのだろう。「社長俺の取り分だけでも何とかなりませんか、カメラマン女子大生の支払いがありまうので」「なんとかしましょう。300万位なら用立てしますが」「そうですか安心しました」島崎も国本も苦笑した。

吉良信介が写真を持ってきた。中野良子が呼ばれる。「この学生さん見憶えあるかな」良子の表情が強ばる。しばらくして「この男です」ときっぱり言った。「この男身長は」「160位でしたか」「もう一人は」「大きくて高かった170位だったかしら」「ありがとう、近いうちにこっちも捕まえるからね。仕事はどうだった」「平気です」「えらいね、頼んだこともよろしくね、今度ご馳走するから」「しっかりやります」直美が笑って良子を連れ帰る。大山力也が口を開けて見ている。吉良がうなづく。
島崎が「これは金庫にいれておきますから」とロックした。「社長、出過ぎた真似かもしれませんが今晩若衆をつけらせていだだきやす」「いいですけど日当は出しませんよ」「承知してます」と吉良が苦笑いした。1億2000万と言えばサラーマンが一生かかってもつくれるものではない。吉良は口とはったりで手にした香川をまぶしく感じていた。

香川の方はこれだけの金を2日でつくった下田剛三にというよりその背後の存在に不気味さを感じた。「使えない金はメモ用紙にもならねえ」「先生俺に八つ当たりはやめてくだせえ」「おい、仁吉忠二。両親分から盃貰ったのは俺だけだぞ」「そのとおりで」「だったら俺が兄貴分だろが」「承知しておりやす」「口先だけでは、焼きを入れるぞ焼きを」
八つ当たりとわかっているから二人とも大人しい。「ざるそばでも行きませか」と先に立つ。「松崎さん、松崎敬子さん今朝おっぱい触ったからそばをご馳走してくれるって」「あら、私も連れってください」と女子社員たち。「僕も行きたいです」「君たちは仕事があるだろう」「大丈夫です、すぐかたづけます」「谷村さん面倒見てやってください。つけはきないので松崎さん」「5万で足りますか」敬子もちゃっかりしている。

神田の藪そばは年末には行列ができるがまだ客は少なかった。奥の席に通される。「後8人来るのだがいけるか」「大丈夫です、一つくっつけたらいけるでしょう。ご注文は」「えび天でいいですか、5人前。生ビールの中5杯」「奥様とご一緒できるの久振りですね」「先生もお忙しそうで」「今日は帝国ホテルで肩が凝りやした」「兄弟、おめえ達も場数を踏んでもらわないといけねえな。気後れしたら負けよ。ここはよく使ってますって顔しないと」「また連れってください」「イイ女紹介してくれたたらな」
谷村以下の浪漫建設御一行8名が到着した。「早いじゃないか。いつも今日ぐらい気合を入れて仕事しろ」と香川が冷やかす。「香川先生って世の中自分を中心に動いていると考えるタイプですね」「お前みたいなブスでも強姦されないとは限らないぞ」「毎日電車で痴漢に遭ってます」「痴漢と強姦とは禿と刷毛以上の違いだ」「本当ね、昔は嫁に行けなくなったと自殺した娘さんもいたわね」「美人は物分りがよくブスは悪い」
香川健は抵抗する者には容赦しない。「香川事務所の人声かけてくれないって言ってた」「そんなことはありません。駒込先生が決められたことです。私が声を掛けたのよ。大事な仕事があるからって。それよりボードの消し方何よ。日によって掃除が雑、誰の当番とは言わないけど」と松崎敬子が釘をさした。少し座が白けた。「しかし香川先生の命令は機関銃でやんすね」と国本が取り持った。「まったく息をつく間もなかったな」「今日は国本さんと吉良さんの慰労会だからね」と珍しく島崎社長が説教した。

蕎麦が運ばれてきた。「こうして美味しい蕎麦がいただけるのも島崎社長のおかげです」「そう、ネタは古いが胡麻すりが大事」「え、香川先生も胡麻をすられるのですか」「俺の仕事は役所に胡麻すり、客に胡麻すりだ」「香川先生のお働きは今日だけで普通の会社の1年以上と感じ入りやした」「国本食え、社長の奢りだ」「先生と一緒ならどんな戦場も怖くないと思いやした」「そうか仁吉どんどんやってくれ。スポンサーがいると味も格別だな」
しばらく蕎麦に食い入る。「おいしいわね」「だってここは全国的に有名じゃない」「そうよ年越しそばはテレビで中継されるのよ」「私知らなかった」「でも吉良さんを何で仁吉と言うの」「説明します。吉良の仁吉は尾崎士郎の人生劇場の主人公であります。時よ時節は変わろうとままよ 義理が廃ればこの世は闇よ 俺も生きたや仁吉のように と歌われておるのです」(拍手)「人生劇場って」「村田英雄が歌ってるでしょ」「やくざ映画よ、でも恰好いい」

大山力也がカラオケに行こうと言い出した。島崎が奥さんに「お前もたまには歌ってこい」というと「そうね、若返ってこようか」島崎の奥さんも店を出たので男4人が残った。「あっしのこれ(小指)がやってるちいさな店に参りやしょう」と仁吉がいうと国定も「あっしの店から」と張り合う。「梯子して美人を拝ましてもらおうじゃないか」と香川が取り持つ。
吉良が引き戸を引く。女将が「まだ支度中」と言ったのだが「うるせえ、冷でいいから」と押し入る。「あいよ」「大事な客人だ。島崎社長、香川先生、国本社長だ」「あんたは」「専務だ」「凄いじゃない。出世したわね。これ食べてみて、お出しできるかしら」「お出ししてみろ」「いける、この肉じゃが酒と合ってる」「さすが親分が惚れこむ先生ね」「先生と呼ばれるほど馬鹿じゃねえぞ」「兄貴何で怒るんで」「夏目漱石がそう言ったのだ」と島崎。「どうも学のある人はいけねえや」「姉さんこの先生は子づくりの名人だ」お子さんは何人」「それがよ、15人だ」「ひえー」
国本のすけの店は静かな雰囲気だった。一人で飲むにはうってつけだ。黙って出された芋の煮っ転がしがいい。いい酒を飲ます。中高年にはこういう店が受ける。香川健はこの店も銀座の冬薔薇とともに下田剛三などとの取引の場所に使えると思った。

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