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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第4回   強姦魔は金脈
強姦魔は金脈

吉良と国本がやって来た。「お早うございます。あっちですか」「おお、サミットが終わったら昨日の学生さんを見舞いに行く」といいながら浪漫建設を訪ねる。「お早うございます。」「昨日はお世話になりました」「いいことがあったようですね」「打ち出の小槌ですよ」「昨日の学生ですか」「しかも金脈つきだ」「先生わかるように話してくださいよ」「小槌は1億、金脈は5億は安く見積もって固いとみている」「どうやって引き出すので」「まあ見てろ。仁吉、国定も俺の手口をものにせにゃならんぞ。任期は5年を切った」
松崎敬子がお茶を運んできた。島崎社長が会議室と言った。「社長紳士録ありますか」「少し古いが」矢野は下田剛三を繰る。「四菱商事取締役、これだ。社長特急で調べてください」島崎社長は興信所に電話する。「そう、特急。では会議室に移りましょう」吉良と国本は紳士録を見つめる。
会議室に茶が置かれる。「ボードを出せ。松崎お前の教育なってないな」松崎敬子が消し残しを拭こうとする。「股をはれ」香川健が肩車をする。がバランスを崩す。慌てて3人の男が松崎敬子を支える。叫び声を聞いて直美が駆けつけてきた。「社長が胸を触った。二人が尻を」「本当ですか」「それはあんまりだ。あっしら姉さんのお体を庇おうとしただけです」「僕もだよ」「わかるように話してください」「駒込先生、こうこうしかじか」「嘘はないようね」「でも手つきが厭らしかった」「敬子、男はいいことがあるとスケベになるのよ」

直美たちがでてゆくと「駒込先生おっかねーな」と仁吉が言った。「男はいいことがあるとスケベになるとは名言だな。僕は仕事を第一に色欲は抑えている」「そういえば社長の浮いた話は聞きませんな」「実は隠し子がばれて地獄を見たのだよ」「あの奥様がね」「夜叉かと思ったよ。香川先生が羨ましい」

香川が立ち上がる。「昨日のことは出がけの駄賃と思ったのが、打ち出の小槌。招き猫かも」ボードに中野良子=X、斉藤慶子=下田康介:下田剛三と書く。「共通項は」3人は食い入るように見つめる。「赤と青のサインペンがないぞ」と怒鳴る。敬子が走って持ってくる。「何か落ちてるぞ」敬子が床を見つめる。健の手が尻を撫でる。睨む敬子。「油断するからだ。俺だけ触ってなかったからな」もうっ、と敬子が出てゆく。
緊張が解けたのか吉良が「四菱商事」と答えた。やっとわかったかと言う顔で健がつづける。次に犯行場所時刻を記入する。「住所は良子が下高井戸、慶子が阿佐ヶ谷、康介が中野だ」「地下鉄丸ノ内線」「そのとおり」「ということはXも下田康介」「の可能性が高い」「なるほどねえ」
当面の課題1下田剛三の調査:島崎、香川 2下田康介の交友他:吉良、国本
     3市場調査:香川、4報酬:全員 年2件/12×10%=166/月

一息入れて茶をすする。「下田親子は相当埃が出ますね」「金も出ますよ。金のない奴は用はない。警察に引き渡せ。ただし恩は売っておく。話のわかるデカを見つけておいてくれ」「承知しました」「そろそろ学生さんの顔を見に行くか」「先生よく考えが浮かんできますねえ、わしら無学だから」「仁吉も国定も世間を知っている。とくに裏街道のな、おれといいコンビだ。世の中金だ。悪い奴からふんだくって、世の為人の為になる商売だ。月100件以上の需要、額にして30億が見込めるが現体制では処理できない」

学生は腹が減ったと喚いていた。「兄貴こいつはガキですぜ」「坊やママに電話するかい」と吉良が電話を持たす。「ママ昨日から食ってない」と言ったところで電話を切る。「図体の大きなガキだな」と吉良が感心して再ダイアルする。「3000万出しましょう、息子を」で切る。当時は発信元電話番号を逆探知するには数分の通話時間が必要であった。
吉良が指を3本立てた。「飯にしよう」と香川健二は吐き捨てるように言った。「君たちも昨日からろくなもの食ってないだろう」と見張り役を連れて出る。「誰もいなくて大丈夫ですか」「心配性だな、猿ぐつわ咬ませて横にねかせてやれ。暗い所で人気がない方が過保護の坊やにはかえって恐怖心が増す」人は光が無いと不安になる。声が聞こえないと孤独感に包まれる。地下牢はこれを実感させる効果を狙ったものであろう。

とんかつ屋に入る。開店したばかりのようで客はいなかった。「5人様奥へどうぞ」「店のおすすすめ5人前。それとビール」「生で、生大5本!すぐお持ちして」「ああ」座敷に座る。「本来ならじっくり攻めたいが次があるからな。まあ乾杯、お疲れさん。方がついたら綺麗どころに招待するよ」「思ったより面白そうですね」「それは何より。でも忙しくなるぞ。これが軌道に乗ったら警備保障だ。いけねえ島崎社長忘れてた」「電話します」
吉良は腰が軽い、フットワークがいい。国本は腰が重いがおっとりしてい
る。吉良専務、国本社長の人事は良かったと思う。天龍組の方が格も力も上だから国本を社長に据えた方が両者のバランスが取れる。2時間ほどして島崎社長がやって来た。「出がけに客が来て食事は済ませた」「ではいくか」と香川が勘定を払う。「かつ丼おすすめ5丁2,000円、生大5丁3000円5000円丁度になります」「美味かった、ごつぉさん」当時の庶民生活であった。

 公衆電話があった。「専務、強姦は懲役3年以上ですよ」と言わす。「専務で間を置く。もう一度」国本が復唱する。「ばっちりだ。本番」国本が5本3本と合図する。「8本か、仕上げは島崎社長だな」学生を起こして親に電話させる。学生は焦燥感から悲壮感に表情のなっていた。「ママ腹減って死にそう」と言わせて受話器を取り上げる。身代金が8000万まで吊り上がった。「時間切れですな社長。告訴するそうです」と島崎社長が言って電話を切る。「1億2000万と言ってます」と島崎がボソッと言った。
全部の眼香川に集まる。「取り敢えず手を打つか。2000万は出掛けの駄賃か。あとはまたおいおい」ほっとした空気が流れる。「難しいのが金の受け取りだ。帝国ホテルのレストランにするか」香川は電話を掛ける。「では4時に帝国ホテルのレストランで。示談書を取り交わしますので実印を、そうですか、認印でも結構です」
つづいて柴田瞳に「本番スタート4時。我々は3時半に行っている」と連絡する。「さあ決戦だ。仁吉、国定3時半に会おう」香川健は事務所に立ち寄って示談書をカバンに入れる。ホテルのロビーで柴田瞳と落ち合う。ビデオカメラ2台と録音係の4名だ。エレベーターの中で吉良と国本を今日の主演男優と紹介する。

 下田剛三が重そうにバッグを持ってやって来た。「金は用意した」とバッグをテーブルの下に置く。「これが示談書です。署名と捺印してください」「斉藤慶子」とつぶやいて下田剛三は震えた。示談書は

 下田剛三(以下、甲という)と斉藤慶子(以下、乙という)とは次のとおり示談する。
1甲は乙に対する慰謝料として12ピーシーズを支払う。
2乙は上記を受け取った後は刑事民事の一切の請求権を放棄する;
昭和55年9月11日
甲 住所
  氏名
乙 住所 杉並区阿佐ヶ谷南一丁目3番87号
  氏名 斉藤 慶子 

吉良と国本が現金を移し替えた。「これはそちらの示談書です」と香川健が手渡す。その時刑事らしき男が3人現れた。「恐喝容疑で逮捕する」と警察手帳を提示した。「どういうことですか下田さん」立ち上がろうとする下田を吉良が抑える。「下田専務この取引中止しますか。では示談書返していただきましょう」と香川健が静かに言った。

下田専務という1階級上の響きは社長まで上り詰める位置にいることを思い起こさせる。「取引は継続する」「間違いありませんか、守られぬ契約は無意味ですからな」「君たち下がってくれ」と刑事に言った。「待て、人を恐喝呼ばわりしておいて謝罪もしないのか」香川健の怒りの声がレストランに響き渡る。3人は「すみませんでした」「ここは不特定多数の人が利用する公共の場所だ。来場者にも謝れ」しぶしぶ三方に頭を下げる。「所属と氏名を言ってもらおう。警察が民事取引に介入してもよいのか。言えないのは警察官を詐称したのか」追及は激しさを増すと感じたのか土下座した。「警察手帳、追って署長より沙汰があるだろう。下がってよい」
刑事が逃げ出すと拍手が起こった。軽く礼をして「困りますなあ、四菱商事の専務さん」とやんわり語り掛ける。「誠に申し訳ないことをした」「では取引成立といたしましょう。この落とし前は別途つけていただきます。また連絡します。決着のつけかた考えておいてください」下田剛三はしょげかえっていた。「録画テープは何本ダビングします」「お世話様、うちは1本あれば」「先生すごい迫力でしたね、映画に撮りかったわ」と柴田瞳監督は笑った。

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