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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第32回   第五部 吉永小百合
              第五部 吉永小百合 



強姦か恋ゆえか

関本精児は少し変わっていた。よく言えば一途、である。取り調べに対し素直に応じる。その態度にけれんみは無かった。セックスが罪なら僕死刑になってもいいです。乙女の祈りの面々も持て余し気味であった。事件の概要は次のようなものであった。
1日 時:昭和55年12月8日午前1時頃
2場 所:東京都南青山一丁目10番908号(南青山マンション、被害者宅)
3被害者:吉永小百合22歳、桐朋学園大学音楽部ピアノ科4年
4加害者:関本精児23歳、同上
5状 況:被害前日卒業演奏会の打ち合わせと忘年会を兼ねた同科の集まりの
  後、被害者の部屋が見たいという関本の求めでこれを受け容れ、
吉永小百合の部屋で音楽論を闘わすうちに深夜におよび
突然関本が吉永をベッドに押し倒した。

 駒込直美は香川健に相談したが「被害者はどうしたいのかはっきりしない以上事件とは言えないのじゃないか。男女がふたりきりで何も起こらない方がおかしい」とそっけない。乙女の祈りも慈善事業でないので契約金成功報酬を取決めないことには動けない。金にもなりそうにないからホッテおくべきとの結論は当然であると駒込直美も思うのだがどうも気になる。吉永小百合のどうしたらいいのといった少女のような顔が脳裏から離れないのだ。他方、関本精児の惚れた女をものにすることが罪ならどんな罰でも受けようと言い放ったことも直美の胸に突き刺さっていたのだ。

 直美は香川京子と谷和子に相談した。「その男純粋なのよ、いいんじゃない男らしくて」「でも吉永さん本当にどうしていいのかわからないのよ」と京子と和子の評価は分かれた。「箱入り娘はまず母親に相談すべきね」「それができないから直美さんの所に来たんやわ」「そうなんです。本当にどうしていいかわからない様子でした。音大生なんて高慢ちきで自己主張が強いと思っていましたがあどけなさが残る娘さんなんです。お母さんに相談するよう話してみます」直美はほっとした表情を見せた。「直美さんも彼女のこと親身になって考えて上げるのね、あなたはやさしいのね」

それからは京子和子直美モニカ敬子冴子の女たちは土曜日の午後の紅茶を楽しみながら吉永小百合の話をした。「22歳もなって自分の考えが言えないのは馬鹿だよ」「モニカそんなふうに人を決めつけても問題は解決せんよ。彼女の身になって考えてあげんと」「それはそうね、批判は簡単だけど彼女ができる方法を考えてあげないといけないわね」「すみませぬ、京子」「謝るなら和子さんにでしょ」「和子申し訳ない」「モニカの男言葉治さないとね」「でもうらやましいわ」冴子の言葉に沈黙する。冴子は親の愛情をあまり受けずに育ったのだ。

その日の結論は吉永小百合の家庭環境、音大での様子などを調べて次回に検討するということになった。「でも関本精児のほうも調べた方がいいんじゃない」「そうなんだけど敬子予算が」「乙女の祈りでもってもらったら」「あしこは金にならないと乗って来ないわ」「なら私たちの道楽でやってみない。そうだ若きピアニストたちの愛と性と題してドキュメンタリー映画はどう」「面白そう、でも小柴さんに頼むとなると」「和子、小柴監督も引きずり込むのよ」「なるほど安く上がるか、できあがったらどこかに売りつける」主婦はしっかりしている。

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