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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第3回   斉藤慶子強姦事件
斉藤慶子強姦事件

島崎、天野、白川と矢野、吉良、国本に別れて車に乗る。公園の近くで車を止めてトイレ休憩。トイレ内で怪しい気配を感じた。放尿の瞬間耳は鋭敏になる。矢野が目配せすると吉良がうなずく。ドアをノックして「開けなさい」と矢野が言った。吉良は隣のトイレの壁を乗り越えてドアを開ける。
まさに若い男が娘を強姦したところであった。吉良が男の腕を捩じ上げる。「出したのか、答えろ」矢野が質す。「少しだけ」男がしどろもどろに答えた。「病院だ、貴女これは事故だからね」と矢野は娘の肩を抱いた。

吉良が男を後部座席の前に突き倒す。「運転手さん病院、近くに救急病院はあるか」「聖路加病院が近いですが」「行ってくれ」矢野が男の頭を、吉良が男の足を踏む。震える娘を膝に寝かせた。吉良は上着を脱いで娘に掛ける。「兄貴男は私が引き受けます」と国本が名刺を渡す。
病院に着くと産婦人科に向かう。「運転免許証見せてくれるかな」と矢野が娘に言う。「捜査にも協力してもらうので連絡先も書いてもらいたい。大丈夫だ、きちんと治療すれば」娘は住所氏名と電話番号書いて渡した。診療室に入ると「先生、精液採取と写真お願いします。それと家族への連絡。我々、現場保存もありますのでよろしくお願いします」と矢野は早口で依頼した。直美にも電話で事情を話して今夜は松崎敬子のところに泊めるよう手配した。自殺でもされたらことである。「仁吉、俺たちを国本のところで降ろして、斉藤慶子さんを松崎敬子のところまで送り届けてくれ。金塊が出るかも知れないぞ」「承知しやした」「冬薔薇で会おう」

すぐさま国本の名刺の場所に向かう。高輪の古いビルの七階だ。男は縛り上げられていた。「君のしたことは犯罪だよ、しかも重罪だ。君のお父さんの職業は」国本が男の運転免許証とk大の学生証を矢野に見せる。「君は一人息子だな」「いえ、姉が二人います」「三人姉弟か」「はい」「では家に電話しなさい」男の紐が解かれる。
男は監禁されていることを親に訴えた。「父が代わって欲しいそうです」「息子をどうするつもりだ」「どうしましょうかね。強姦は重罪ですから」とだけ言って受話器を男に返す。男は「いくら欲しいかと言っています」と取り次ぐ。矢野は「君らがどうするかの問題でしょう」と言って電話を切る。

矢野は急いで聖路加病院に電話する。「先ほど斉藤慶子さんをお連れしたものですが治療は終わりましたか。彼女の勤務先を伺うのを忘れました」「本人と代わります」「斉藤です、先程は有難うございました」「勤務先は」「四菱商事です」「所属は」「秘書課です」「電話番号は」メモする矢野に笑みがこぼれる。「こんなことで挫けちゃだまだよ。困ったことが起きたら駒込直美に電話しなさい。彼女はそちらに向かっている」と一方的に電話を切った。矢野は明日の昼まで男を大切に保護すること及び水以外与えないように吉良の子分たちに指示した。「さあ行くか、親分を待たせては悪い。兄さんたちお守賃だ、何か食ってくれ」と1万差し出す。「先生いいことが」「大ありだ。免許証と学生証2部コピーしてくれ」「おいコンビニでコピーしろ」「へえ」                 

銀座の店冬薔薇では天野が出来上がっていた。「先生どこで浮気してた」「それが19歳のOL。可愛かったなあ」「ものになりそうですかい」「まあ年内には」「気の長いことで」「実の熟するのを待つ、慌てる乞食は貰いが少ない」「ドイツ娘は」「日本と違って早生だからな」「先生ビールでよろしいですか」「こんな綺麗なママに注いでもらったら手が震えるな」「まあお上手なこと」
店内の装飾は華美ではないが落ち着いた雰囲気があり、ママの勝気な性格が出ている。「高いだろうな」「そうでもありませんよ、良心的にやらせていただいてますから」「俺なんぞには高値の園だ」「御冗談を」「売上は」「月500万くらいかな」「やらせてくれたら倍にしてやる。俺の取り分1割」「考えさせていただきます」「先生お安くないな」「一度ぐらいは熟した実を」「どうぞそれだけはご勘弁を」「残念だなあ」
矢野が帰宅したのは午前様になるところであった。「はい、お冷。いいことありました」「まあな」「化粧の匂い、お風呂にいってらして。臭いわ」「はーい、ひとり見る夢は直美」「婿殿上機嫌だね、あたしゃ邪魔しないよ」「いやだお母さん」「中野さんの添い寝するわ、おやすみ」「まあ銀座のマッチ」

明くる日、朝早く矢野と駒込直美は中野良子と話していた。「下田常務は家中野でなかったかな」「そう聞いてますけど」「秘書は何人いる秘書課で」「32人です」「そう、今日から出社してもらいたい。つらいだろうが前を向いて生きるのだ。君は若い、人生は長い」直美が驚いた顔をする。「君の身辺警護は頼んである。君と同じ目にあった秘書を探って欲しいのだ。一日も早く犯人を捕まえるために君の力が必要なのだ」「わかりました。私やります」「そうか、時々様子を駒込先生に知らせてくれるかな。それと斉藤慶子さんは同期」「そうですけど、何か」「いや、君はこんな下らないことを乗り越えてゆかねばならない。犯人の目星はついてきた」「本当ですか」「三月以内に君の恨みを晴らせて見せる」中野良子も駒込直美も半信半疑である。三日前のことだから無理もないが健は確信を持っていた。
今は斉藤慶子と中野良子が顔を合わさないようにしてやるべきだと直美と敬子に話した。「中野さんは私が事務所に連れてゆくけど斉藤さんは」「私がなんとかするわ」と敬子が答える。矢野も「頼んだぞ」と言うしかなかったが心配だ。「斉藤さんに子守をしてもらうわ。母の話し相手してもらったら母も喜ぶでしょ」「さすが敬子」矢野もほっとした。
 
人相の良くない男が二人やってきた。「先生、吉良の命により只今参上しやした」「吉良の指示で参りましただろう。やり直し」「へえ」「はいだ」「はい、吉良の指示で参りました」「それでいい。だが君たち朝まだだろう、食ってくれ」「失礼していただきやす、いや、いただきます」「直美、あいつ元空手部を呼べ」「君たち手を洗いなさい。上品にしていただかないと」
元空手部大山力也がやってきた。「お早うございます」「眠れたか」「ダメです。彼女の顔が浮かんできて」「俺は家全体のガードを頼んだのだが」「わかっております」「日当半分だ」「いいっす。彼女の近くにいられるなら」「彼女今日家に帰る」「そんなあ」「若い男はしっかり朝飯食うもんだよ」直美の母親が給仕をしてくれる。「お母さんの味噌汁はほんとに美味い、感謝しています」「婿殿娘は3人目を孕んだそうじゃないか。あのこは一人娘で仕事を持っているんだよ。程々にしてもらわないと」「心します」「この歳で孫3人とはねえ」
女は話を自分に持ってゆく生き物である。男はこれに堪えなければならない。「僕、駒込先生のお姉さまと思っていました」と大山力也。「うれしいこと言うじゃない、兄ちゃん。さあ納豆も身体にいいのだよ、あの娘がタイプかい。くちきいてあげようか」「はい、おねえさま」

世の中正しいことが良いとは限らない。嘘も方便である。「あなた先に出かけます」と直美と中野良子が家を出る。見送る大山力也は少年の目をしていた。臨時警備員海野と海東と大山力也と業務引き継ぎをさせる。力也は中野良子を思ってか落ち着かない。「しょうがねえな、駅まで送ってくれるか」と矢野が言った。海野の運転で駅に向かう。すぐ直美と中野良子に追い付いた。「駒込先生、お送りします」と力也が声を掛ける。二人が乗ると「香川先生狭いでしょう、代わりましょうか」ときく。「大丈夫だ」「そうですかあ」

丸の内の改札口で中野良子と判れる。「しっかりね」と直美。中野良子はしっかりした足取りで丸ビルに向かった。事務所に着くのを見計らった様に電話が鳴る。「まあ吉良さん、昨日はお世話になりまして。はい代わります」「同伴出勤とは妬けますな」「こういうイイ女をものにしろ。これから島崎社長とサミットだ。国本さんと同伴で来い」「先生お茶入れましょうか」「駒込先生のすることではない。中野良子の動きに注意しろ。彼女にかかっている」「どうすればいいのですか」「今まで通りでいい。秘書課を観察させるのだ」

強姦魔は金脈 へ


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