20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第21回   第三部 豪間 寛治            佐藤オリエ
                 第三部 豪間 寛治
         

 佐藤オリエ

佐藤オリエが事務所を訪れたのは仲秋の名月の日であった。駒込直美は依頼人の深刻な打撃を受け止めかねていた。実質的に香川健事務所を切りまわしているとはいえ、佐藤オリエの話を聴くうちに香川にすがりたい気持ちになっていた。それは次のような内容であった。
1日 時 9月11日午後7過ぎ
2被害者 佐藤オリエ20、山城慎吾25
3加害者 暴走族3名、年齢20前後。身長165から180
4内 容 江戸川堤防で将来の夢を語り合っていた二人を暴走族3名が襲い山城慎吾の首にロープをかけ双方から引っ張った。
    その目前で佐藤オリエを代わり代わり犯した。その後山城新伍を絞殺した。

 佐藤オリエは気立てのいい娘であった。山本慎吾とは幼馴染でともに母子家庭ということもあって兄妹のように育った。5年前に婚約したが両母親とも同居すべく持ち家をしてから式を挙げることになっていた。二人は高校を卒業すると懸命に働き小さな借り家を手に入れた。結婚式を目前に幸福の絶頂に居たのだ。暴走族は二人がロープを引っ張り一人が山城慎吾の両足を持ち上げて回転させた。「お前も一緒に縄跳びしようぜ」と佐藤オリエに言ったというのだ。

話を聴取し書き取っていた中野良子と斉藤慶子は思わず泣き出してしまった。「私も同じ気持ちよ。でも今は3人の暴走族を捕えることが先決でしょ。で佐藤さん警察は」「殺人事件として追っていますが未だに」「そう、百万円用意してもらえたら必ず貴女の気の済むようにしますが」佐藤オリエはバッグから札束を取り出した。信金の封がしてあった。「佐藤さんしか目撃者がいないようですから貴女にも協力していただかねばなりません」

『乙女の祈り』の検討会が開かれる。「ひでえ話だ。私、鮫島刑事に捜査状況を訊いて来ましょう」「そうですね、私は元暴走族に当たってみましょう」と吉良専務と国本社長が口を切った。「私たちは近所の聞き込みに参ります」と中野良子と斉藤慶子が言った。「そいつはどうかな。警察が捜査しているし、第一あぶねえのじゃないか」「吉良さん、お気持ちはうれしいけど奴らは女の敵、これは女の戦。子供を中心に聞き込みしたらどうかしら」と島田博子が被せた。「それもそうですね。大山さんにガードしてもらってと思いますが吉良専務」「社長がそう言われるなら」「では次回は来週のこの時間に」

吉良信介は瓢で鮫島刑事に捜査の訊きだしを依頼した。「親御さんの気持ちを思うと居たたれなくなるな。早急に所轄署に訊いてみるよ」「うちも元暴走族のコネを辿ってみます」「近いうちに連絡できると思う」「よろしくお願いします」「ああ。そうだ強姦罪のほうは被害届が出ていないようだな」

一方中野良子と斉藤慶子は大山力也をガードに現場近くの子供たちに訊いてみた。「君たち3人組の暴走族見たことある」「ある」ポテトチップスを差し出す。「何回ぐらい。いつ」「うーん2.3回かな」「最近では」「1月前かな」「どっちから来た」「上流の方から」「人相は」「よく憶えてない」「でもホンダの250だよ」「バイク詳しいんだ」「高校生になったら免許取るんだ」「すごいね」「暗くなってきたから帰るね。あ、一番星」「宵の明星ね」「そうか、バイクに宵の明星と書いてあったよ」「ほんと、ありがと。これ持って帰って」


宵の明星 へ


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 15004