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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第17回   17
松井須磨子

そこへ職員が駆け込んでくる。「駒込先生来てください」何事かと直美が廊下に出ると老婆が強姦されたと喚いている。「ここに通して」と会議室に招き入れる。「駒込先生はおいでるかえ」「私が駒込ですが」「鮫島警部が先生を訪ねるように言ってくれたのだよ。昨日の夜、と言っても薄暗くなった程度だけど日比谷公園で強姦されたのだよ。有名な料亭の近く」「松本楼」「その近くの植え込みで犯されたのだよ。もう若くはないか止めとくれと言ったんだけど無理矢理チンチンを押し込まれたのだよ。女の神聖な場所に」

駒込直美は椅子を勧めながら尋ねた。「奥様は病院に行かれたのですね」「行ったよ、鮫島さんが警察病院に連れってくださってね、見かけによらずいい男だったよ。そうそう吉良の仁吉はいるかえ」「吉良は私ですが」「写真は撮ってあると伝えてくれって言われてね」「奥様はその男をどうしたいの」「そいつの臭いチンチン切り落としてやりたい」「わかりました。奥様200万円ご用意ください、奥様の気の済むようにいたしましょう」「鮫島さんが謝礼が要ると言われたので100万持ってきたのだけど」「残りは奥様が納得した時にお支払いください。預かり証を切りましょう」

中野良子が未亡人にお茶を出す。「いけない、手ぶら来ちまったよ。これで何か買って来ておくれ」と1000円札を出す。「奥様お名前を教えて下さい。ご住所、御生まれ」と駒込直美が訊いてゆく。「松井須磨子、葛飾区柴又。大正14年8月3日」「犯人の特徴は」「根本修也という不細工な男だよ。チンチンの臭いこと鼻がひん曲がるよ」「松井さんどうして犯人の名前を」「鮫島さんが教えてくれたよ」「なるほどよくわかりました。松井さんのご無念を晴らすべく我々も全力を尽くします」「そうしておくれ。亡き主人はいい男でね、再婚の話もあったけどさ。いい男って中々いないものだね」

松井須磨子の闖入で中断された会議が再開される。「社長、私は鮫島刑事に渡りをつけますので、木村さんに後を任せたいのですが」「そうしてください、吉良専務。強姦魔捕獲は私たちで遂行しますから」「では」「いってらしゃい」吉良は瓢に向かう。木村寛子は熱い目で見送りながら「強姦魔のデータベースを作成すれば検索が容易になるかと思いますが」と言う。「どういうこと」と敬子が尋ねた。「一人一人の氏名、生年月日、所属、犯行場所などを詳しく入力します」敬子は直美を見る。直美も首を振る。10歳の差はパソコン操作においては大きい。

香川健が「キイワード検索だろう。これからのどの業務にも有効だ。必要不可欠になるだろう」と言った。「先生ご存知でしたか。でもデータの打ち込みが大変です」「木村先輩、私中野さんと手分けして手伝います」と斉藤慶子が申し出た。「助かるわ。将来はここと乙女の祈りとオンラインで結びたい」「すぐやれ。取敢えず事務所内浪漫建設内でランを組んでみろ。共通するキイワードを探ってゆけば見えなかったものが見えてくる」

『乙女の祈り』の当面の課題は強姦魔捕獲とされた。松井須磨子強姦犯人の捕獲はその一環であるが最優先課題である。吉良信介が瓢の暖簾をくぐると鮫島刑事が浮かぬ顔をして飲んでいた。「こいつだ、根本修也」と写真を吉良に見せる。「昨日パクったが」「保釈ですかい」「ああ、刑事辞めたくなる」「親は相当な」「岩倉財閥の根本崑厖が女中産ませた悪ガキだ」

鮫島は見かけによらず純粋なところがある。「今夜奴を縛り上げますよ」「楽しみだ、お手並み拝見させてもらおう」「これだけ情報をもらったのだから近いうちにお返しさせていだだきやす。では今夜」「もう行くのか」「いろいろ手筈を」「そうだな」「おーい酒だ」「あいよ」「お前お相手していろ」

吉良信介の写真と情報は香川健たちをよろこばした。「大山、大山力也君に囲みを破らすのは」「面白いけどどうやって」「中野さんが助けてと叫べば、たとえ火の中水の中。力也君は飛び込んでゆくさ」「香川先生、純情な青年の恋心を利用するのですか」「立っている者は親でも使え、けけけ」「厭らしい」

健の頭は既に根本崑厖の慰謝料支払を考えていた。「国本吉良、戦闘態勢だな。俺は島崎社長と善後策を考える。社長両手の手形割引いくらぐらいでしょうか」「振出人が岩倉なら9掛けはいけるでしょう」「そうですか、12本12憶吹っかけてみるか」「松井さんの慰謝料ですか」と松崎敬子が驚く。「昔は、今も、美人だよな。あのなあ、被害者の歳など二の次だ、幾ら巻上げるかが問題なのだ。取れるところ(財閥)はからしっかり頂く。俺の手数料1割な」

 島崎社長は「うちでは割れませんよ」と予防線を敷く。「そうですかあ、どこがいいかな、どこか商社にでも頼むか」「まあ気の早いこと」「おい松崎なんか文句あるのか、それとも生理か」「知りません」駒込直美に助けを求める。直美が矢野に「昨日敬子お休みしたでしょ」と耳元でささやく。「いけねえ、松崎さん、敬子さん来週お買物に行こうか」矢野のお勤めは香川京子、谷和子、矢野モニカ、駒込直美、松崎敬子、長谷川冴子と毎日通っても休日は週一日である。通い夫も大変である。

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