第二部 根本 修也
乙女の祈り
新会社は「乙女の祈り」と称することになった。「乙女の祈りですかい」「会社に名前がないと不自由だろう、なあ吉良社長」「まあ、香川先生の御発案ですから」「気に入らねえのか仁吉」「いえ」「意外といいかも 。乙女の夢を無惨に打ち砕いた強姦魔に為す術もなく、ただ神に祈る乙女」「敬子、学校の先生みたいだな」「いいと思います」と中野良子、斉藤慶子も賛成した。 新会社には島田博子と木村寛子も加わった。これらの4美女は強姦魔撲滅に立ち上がったのだ。「国本さん、あなた私を騙していたでしょう」「それはですね」「言わないでなぐさめは、心が乱れるわ。私を雇って社長さん」「四菱やめ被害者救済に尽くすのか」「一度の人生、だから側に置いてね、今はあなたしか見えないの」「歌の文句じゃねえか」「いいでしょう」「それはいいけど」「あなた好みの女になりたい」木村寛子も似たような感じだ。二人は浪漫建設で採用し新会社へ出向となった。中野良子と斉藤慶子は香川行政書士事務所で採用し同じく新会社に出向となったのだ。
浪漫建設の会議室ではいつものメムバーに4美女が加わったのでにぎやかなことになった。「本日の議題は、強姦魔は何故強姦するのか、その要因分析であります。お手元の資料1のように被害者は中学生から60代女性に及んでおります」と駒込直美が説明を始めた。 【被害者】 【加害者内訳】 1、学 生 187名 同級生150 教師2 親族1 強姦魔25 その他9 2、O L 145名 上司85 同僚24 強姦魔28 その他8 3、その他 50名 強姦魔18 暴走族17 その他15
注:被害者382名の聞取り調査。
次に吉良信介が「当社が加害者34名に対し独自に行った加害動機は資料2のとおりであります」と説明する。 1性欲処理12 2快感8 3ゲーム7 4征服欲5 5その他2
女たちからため息が漏れる。「ソープに行けばいいのに」「わたしたたち女をおもちゃにするのね」「処女とかセーラー服に憧れるのかも」「被害者の年齢内訳も参考になる」「ものにしたいという征服欲はわかるな」「でも卑劣よ。上司の立場を利用して」「教職ありながら許せない」「その他はセールスマン、修理工?」「医者、警察官もいます」「ともかく強姦は女の敵ね」
女の観察は鋭いが事実をどう読み解くかが問題である。換言すれば加害者を如何に捕獲するかということだと香川健が議事を促す。「強姦魔暴走族は常習犯が多いから実際はもっと少ないにちげえねえ。これを挙げましょう」「私も吉良専務と同意見です。連中は犯行現場に戻ります。つ、つまり、餌場ですな奴らの」「社長、私がまき餌になりましょうか」と島田博子が申し出る。「それは危険です」「でも社長以下のみなさんが助けてくれるでしょう」
何をするかは男が得手だかどうするかは女が得意だ。戦闘準備だ。柴田瞳に撮影依頼、鮫島刑事への連絡等フォーメーションは代わっても準備は同じ手順だ。「だいぶ手際が良くなりましたね」と島崎社長。香川が笑ってうなづく。
松井須磨子 へ
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