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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第13回   コピーのコピー
コピーのコピー

直美は印紙税節約の種明かしをする。「これは斉藤慶子の示談書のコピーです。下田剛三の署名を切り取って示談書に貼り付けます。小切手の預りのコピーからも著名を切り取って示談書にはりつけます。これをコピーすればできあがりです」
そこへ香川健がやってきた。「今月の水揚げは」「3億ちょい」「10億に程遠いな。受注予算は、水揚見込は」「それは今計画中で」「まああと2週間あるからな」
  1斉藤慶子       1
  2中野良子       3
  3女子大生情報
  4刑事情報
  5その他
     計       10
「ええと10−4はいくつでしょう」「始まった」「棚ぼたにしがみ付いていては予算達成は難しくはありませんか。満額回答を引き出しましょう」「へえ」
 
「あのう、示談書と預かり証のコピーですが」「駒込さん脱税だな、印紙税は国税だから国税局のマルサがやってくるぞ。原稿に印紙を貼ってコピーとる。それに消印か赤線でも引いて孫コピーなされたほうがよろしいのでは。もっとも下田剛三のお名前があればマルサも税務署も手を出してこないとの読みでしたら小細工することもありませんが」駒込直美は顔を真っ赤にする。

国本が取り持つように「先生の取り分です」と5000万円を差し出す。100万の占め紐には銀行の名前が。香川はちょっと考えて「まあいいか」と言った。「こっちは富士銀行です。半分混ぜましょうか」と国本が言ったが「残りはまだか、俺の分をもらってから」とだけ言った。「松崎.チャック付のビニール袋と黒のゴミ袋持って来い。あとでいいから銀紙と挟み」「はい」「どうするんで」「大事な取分を包んで屋上の受水タンクに沈めるのよ。そうそう島崎社長屋上庭園を見積もってくれますか。4階は熱いんだ」「芝と花と灌木でいいですか」「見栄えがいいようにお願いしますね」

松崎敬子が戻って来た。「これでいいですか」「おうおう、札束をゴミ袋に入れる。銀紙を細かく切ってくれ。ゴミ袋を粘着テープで止める。それでいい。お次はビニール袋に入れる。銀紙を蒔く。全部だ。空気を抜いてチャックを締める」「大丈夫ですかい」「あ、スーパーの買い物籠に容れるか。万一のときでも流失しないし取り出しも簡単だ。屋上は24時間警備員がいるから盗まれ
る心配はない。警備員の休憩所がいるなあ、雨風をしのげる程度は」「銀紙は何の為に」「銀紙が蛇口から出てきたらビニール袋が破損した警報になる」「全所帯に言っておかないと」「それはそうですね」「その時は奥様に取り上げられる」「嫌なことを言うな。これは愛しい子供たちの教育費だ。あと10倍は蓄えておかないと人数が多いからなあ。受水タンク増設するか、社長見積に追加してください」

 結局コピーのコピーは手間がかかるのでタイプ打ちして三文判を押すことになった。ただし、これからの新規客には有効であるからさらに研究することとなった。香川健の受水槽の点検口近くにはフック掛けが設置された。スーパーの買い物籠に虎ロープを結び先にフックを付けて掛けておく。まさかのときには引き上げて移動させる寸法だ。
さらに訓練を実施。「仁吉まさかのときは真っ先に駆けつけて来い」「先生まさかのときは何時かわかりませんじぇ」「それもそうだな、じゃあ松崎お前の担当だ」「なんで」「元美人ランナー」「今も美人ですよ松崎さんは」「そうお、引き上げるでしょ、次は」「ビニール袋を芝に落とす」「そうか、それでいいのだ」「先生を下で待機させておけば拾い集めるでしょう」「そうですね、イの一に駆けつけて喚くでしょうから」

 現金が回収されると駒込直美と松崎敬子に100万円の報酬が渡される。「誠に些少にてお恥ずかしい限りで」「十分よ、ねえ敬子」「国本さんも吉良さんも身をこなして働いたのに比べたら」「役得ですね」「嫌味を、仕事と思って身を任せたのですから、な社長」「専務のいうとおりです。全身全霊を傾けて相勤めましてござんす」「冗談よ、私買いたいものがあったんだ」「私も。これから買い物に行ってうさを晴らそうか」「敬子あしこのケーキ食べようか」

吉良信介は天龍組を訪れる。「よくまあ次々と誰彼なしに扱使えるかとおもいやすね」「でもさ私にまでおこづかいを」「島崎社長は」「奥さんと100万ずつ」「信介粋なこと」「へえありがとさんで」「で金は」「それが受水タンクに沈める。チャック付ビニール袋に入れさらにスーパーの買い物籠に容れる。まだつづきがありやす。虎ロープで結わえて引き上げる」「有事の際にか」「左様
で。あっしも綱引きやらされましたが有事のときは真っ先に駆けつけろと来ました」「先生らしいな」「あっしにも有事の際にやることがござんす」「すると」「それはそうだと代わりに浪漫建設の松崎さんが綱引きをやらされるはめに」天野夫婦は腹を抱えて笑いこける。「受水槽とは考えたな」「雨にも風にも負けず、火事にも耐えると」二人は笑いにむせる。「信介、あんまり、笑わさないで、おくれ」

 

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