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作品名:女の敵、強姦魔 作者:佐々木 三郎

第1回   まえがき 目次
女の敵、強姦魔


第一部 鬼頭 大介
第二部 根本 修也
第三部 豪間 寛治
第四部 関元 征助

 まえがき
 性行為は両性が合意のもとに為すべきものであって男が力づくで女を犯すなどはもってのほかである。強姦レイプは妊娠の可能性すらある。女の苦痛は測り知れない。その意味では殺人より残酷である。しかし、その量刑は三年以上の有期懲役であり、刑期(日本では3年から10年か)を終えた男が再び女を犯すことも少ない。刑法の強姦罪だけで再発は防げない。
 矢野健と駒込直美は独自の手法で強姦の撲滅、再発防止に取り組んでゆく。果たしてその手法とは、強姦撲滅再発防止は功を奏するか、法治国に於いて私刑リンチは許されないが被疑者被告人の人権が過大視され、殺しても飽き足りないという被害者の心情が軽視されている現状では致し方あるまい。
 復讐は復讐を呼び、拡大してゆく。復讐は国家の独占としたのは先人の英知であろうが被害者は納得できない。法治主義はおおむね良好な結果を生むがこれに十分満足する者は少ない。されば超法規的に加害者を罰することも心情としては理解できる。

 なお本作品はフィクションであり同名の人物会社等はすべて実在のものとは無関係であることを断っておく。

第百七十七条  暴行又は脅迫を用いて十三歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、三年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。
強姦罪(ごうかんざい)とは、暴行又は脅迫を用いるなど、一定の要件のもとで女性の性器に男性が性器を挿入する行為(強姦)
姦淫とは性交をいい、男性器の女性器に対する一部挿入で既遂に達し、妊娠および射精の有無は問わない(大審院大正2年11月19日判決以後の確定した判例・実務)


第一部 鬼頭 大介

中野良子強姦事件
   強姦撲滅会社設立
  斉藤慶子強姦事件
  強姦魔は金脈
マネーロンダリング
   鬼頭大介捕獲
   土地買収見せ金
  冬薔薇ママ長谷川冴子
   すけこまし
  刑事鮫島久蔵
   続ロンダリング
  コピーのコピー
  鬼頭善之助
   後日談


 中野良子強姦事件

 駒込直美の事務所を若い女が訪れた。行政書士を若い女が訪れることは少ない。その焦燥した表情から駒込直美はただならぬ気配を感じた。すぐ個室の面談室に彼女を招き入れた。直美はすでに二児の母となり、行政書士事務所を切り回していたから落ち着きがあった。事務所には5人の職員が忙しそうに働いていた。こうした雰囲気は依頼人に安心感を与える。
 職員がお茶を置くと黙って立ち去る。直美が目でどうぞと勧めて茶をすする。若い女が美味しいと言った。飲まず食わずであったようだ。直美がノートを拡げて「お話伺いましょうか」と静かに言った。その眼はすべてを受け止める母親の眼だ。「私、レイプされました」若い女が喉のつかえを吐き出すように語った。駒込直美は自分の娘をみつめるように女に全神経を集中させる。
 被害状況
1 被害者 中野良子19歳昭和36年5月8日生
住 所 杉並区下高井戸一丁目3番87号
勤務先 四菱商事株式会社秘書課受付係
2加害者 不詳、25歳前後、身長170位外1名
3被 害 昭和55年9月8日午後8時半頃自宅近くで二人組の男に連れ去ら
    れ某所にて輪姦された。その写真を撮影され、警察に届けると写真
をばらまくと脅された。翌日午前11時井之頭公園で釈放された。
4依 頼 加害者に死以上の苦しみを与えたい。
5報 酬 

中野良子の話を聴き終わると駒込直美は「ちょっと待ってて」と席を外す。職員に珈琲とサンドウィッチを用意させる。香川健に電話する。行政書士事務所に扱えるような依頼ではない。所長である香川の返事は「着手金30万、成功報酬70万。事務所は依頼を取りつぐだけ、実働部隊は告げない」というものであった。さらに病院で診察を受けること、母親に相談するよう依頼人に説得することを指示した。
中野良子は壁に架けられた駒形直美の写真を見ていた。恋する乙女は幸せに満ちた表情を浮かべている。昨日の悪夢のような出来事がなければ自分もこんな写真を撮りたいと思った。直美が戻って来た。「あれは先生ですか」「10年前に所長が撮ってくれたの。一口でも食べたら貴女何も食べてないでしょう」

直美が報酬を告げると中野良子の表情が硬くなった。100万と言えば年間サラリーである。「こういった依頼は本来行政書士事務所としては受けられないけどこういう男は許せない。私は貴女の話を信用して二人に死ぬ以上の苦しみを味あわせてやるわ。もしできなかったら成功報酬70万は返しましょう。私を信じてくれる」
中野良子はきっぱりと言った。「お願いします。お金引き出してきます」「そう、でも貴女見張られているわ。私も一緒に行きましょう。その前に食べて無理にでも。二人に土下座させるまで泣いてられないでしょ」直美は向かいの浪漫建設の松崎敬子を呼び出す。高校からの親友だ。
二人で中野良子をガードして金を引き出した。良子は50万引き出したようだ。新入社員が1年で100万貯めることは容易ではない。堅実な生活ぶりが窺われる。「これ50万の預かり証、お金は金庫にしまっておくから。中野さんこれから病院に行きましょ」直美は自分が出産した病院に電話する。「敬子、ボディーガードが要るの、谷村さんお願いできるかしら」「いいわ」松崎敬子も社長秘書として浪漫建設のすべてを委ねられている。

病院で中野良子が受診している間に直美は事件概要を松崎敬子に説明した。敬子も許せないと憤慨した。「しばらく彼女預かったら」「そうね」直美のそして敬子の事実上の夫、香川健の客室を指している。香川健こと矢野健は香川京子、谷和子、モニカ矢野、駒込直美の通い夫をしている。通いと言っても4人の妻の200坪ほどの共同住宅の隣の3階建マンションに住まい(書斎として)しているから妻たちの居候(泊まり渡り)といえるだろう。最近この1階に松崎敬子も住まいするようになったから実質5人の妻に監視されていることになる。
矢野は3階建16戸前の1室に住んでいる。その外観はさほどでないが内部は高級マンション並である。14室は妻たちの両親等が訪れた時の客室として、こどもには自分の自分の人生は自分で切り開くよう育てている。可愛がるが甘やかさない。今や矢野の子は香川京子が5人、谷和子が3人、モニカ矢野が3人、駒込直美が2人、松崎敬子が2人であるがこれからも増えるだろう。さらに犬が3匹猫二匹鶏5羽。
直美はしばらく考えて言った。「今中野さんを一人にできない、うちであずかる。しばらくしたら敬子預かって」「そうね、落ち着いたら矢野の身の回りを世話させる」「猫に鰹節」「かもね」

二人は医師に呼ばれた。「これはひどい、入口が相当出血していますね。膣の損傷も激しい」「どれ位かかかりますか」「体の方は数日で治るでしょう。お産に比べるとかすり傷ですがこんな可愛い娘さんを」「先生、犯人を許すわけにはいきません。先生のご協力を」「男の恥ですな。精液は冷凍して保存しておきます。膣内は洗浄して消毒しましたから心配はありません。あなた心の傷はなかなか癒えませんが、これしきのことで挫けてはいけませんよ、結婚して妊娠したらまた来なさい」医師は膣内の写真も撮ってある旨を直美にだけ告げた。

3人は病院から駒形直美の家に向かった。谷村は交差点で何度も右折左折を繰り返し尾行されないように運転する。途中で食料と中野良子の着替えを買う。「中野さんしばらく私の家にいなさい。家と会社に連絡する、さあ」直美は後輩に言うように命じた。
直美の家には香川京子、谷和子、矢野モニカがやってきた。夕食のレシピと分担を廻って論争が始まるがすぐ結論が出る。10年間の実績であろう。直美は簡単に3人を紹介すると「中野さん、まずはお風呂入って着替えなさい」と言った。「私も手伝います」「あなたは今日だけお客さん、明日から働いてもらいますからね」子供たちが騒ぎ出した。「かな、お外で遊んでらっしゃい」と京子。「あや下の子の面倒みるんよ」と和子。「健一お父様呼んでらっしゃい」と直美。

谷村が「先生とちょっと話したい」と言った。「健一あとでいいわ」ということになった。矢野はベランダに谷村を招いた。「先生バブルはいつまで続くでしょうか」「あと10年と見ている。感だけどね」「地価は」「半分になる」「半分ですか」「10年後には棚卸資産は処分しておいたほうがいい」「不動産業界は」「斜陽。しかし海外は朝日。20年から30年遅れで日本と同じような経路を辿るだろう」

子供たちが矢野を呼ぶ。庭の芝を駆け回る子供たちに矢野は目を細める。矢野は立上がると「明日島崎社長を訪ねます。今の件は明日ゆっくり」「そうですか、浪漫建設の将来についても伺いたかったのですが明日改めて」矢野は階段を駆け下りる。矢野の子煩悩は有名だ。一人一人を抱き上げる。「かな、あやお前たちは卒業」「どうして」「重くていけないや。腰が痛くなる」「お父さん肩車」「ようし、健一お前のケツは固いな」「だって男だもん」
こうしたやり取りは料理をしている女たちにもわかる。「今日は外で食べましょうか」「そうね天気もいいし」「あや、シャワー浴びて着替えなさい。今日の夕食はお外で」和子の一声で子供たちはそれぞれの家に帰る。中野良子は身体を隅々まで穢れを洗い落とすかのようにこすった。「これしきのことで挫けてはいけない」との産婦人科の医師のことばが甦ってくる。

中野良子が着かえて庭に出ると大きなテーブルが作られていて料理が運ばれてくる。「今日は直美さんのお客様が見えられたのでみんな一人ずつ席をずらしなさい。中野良子さん」「いらっしゃい」「今日は、中野良子です。よろしく」「さあお父さん」「それじゃみんないいか。いただきます」「いただきます」「美味い」「でも直美の料理が一番だよな、お父さん」「あら和子の料理が一番よ」「違う、2番よ。京子が一番」「僕はモニカが一番と思うな」子供たちが母親をそれぞれに持ち上げる。「しかしこうして食事しているときが一番幸せだな。みんなも料理を作ってくれたお母さんに感謝しなさい」矢野はうれしそうに語る。「料理の野菜、魚、肉を育ててくれた人にも。お日様にも」

その夜直美は自分の寝室に中野良子を寝かした。自殺を心配してのことであった。中野良子は緊張が緩んだのかよく眠っていた。この2日間は良子にとって長くつらい時間であったはずだ。それが寝息を立てて寝ている。矢野健には人を幸せにするものを持っているのだと直美は思い出し笑いをした。
 食後のデザートを食べながらの話は楽しい。「お父さん京子さんをどうやって口説いたの」「あの美貌に魅せられて」「和子さんは」「初恋のひと」「モニカは」「何故かはわからないが気が付くとモニカに囚われていた」モニカが原語でローレライを歌う。健は溺れる舟人を演じる。子供たちも完ぺきなドイツ語で歌う。「直美さんは」「後継者はこの女しかないと思った」「敬子さんは」「一目見たらやりたくなる」「なにを」「Hじゃん」
 
 強姦撲滅会社設立 へ


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