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作品名:続 椰子の風に吹かれて 作者:佐々木 三郎

第5回   カルロス分譲住宅
カルロス分譲住宅

 清美はいつまでも塩崎家で居候するのもと賃貸マンションを予約した。別の日本人がこれを横取りした。オーナーは敷金増額、3ヶ月前家賃に吊られて清美の予約を無視した。これがユキが坂本に語った事実である。ユキ、気持はわかるがちと強引過ぎないか。私許さないから。

 ユキは塩崎家の隣に坂本、清美、マリアのために木造の家屋を新築した。敷地3000uなのでゆったりしている。運転手、メイドの棟も用意した。真知子を中心とした新しい家族ができた。陳が文句を言ってきた。ごめんなさい、すぐ建てますから陳さんも一度いらしてくださいな。
 食事は真知子を囲んでとることが多い。私お母さんと食べるのが一番美味しい。ありがとう、でもユキさんも清美さんもここで住んで欲しかったわ。でもお母さんプライバシーも大切でしょう。スープの冷めない距離、一番いいじゃない。あら、ユキさんいいこと言うわね。えへー。陳家族も加わると食卓が小さいので大きなのを誂えた。陳、こうした平和な時間があるのだな。そうだな、腕擂りあうも多少の縁。陳殿、日本では袖摺りあうもいうが、お国では腕でござるか。山田殿、同じ意味で御座る。左様か。やがてアンジェリカ許細君イメルダ、マリア清美ユキ梅雲が話し出す。男出る幕無し。


 翌日分譲地の視察、値段を聞いてカルロスが驚く。あら安いものでしょう、水道電気ガス電話が埋設。風力発電、排水溝、貯水池あり。メイン通り、公園、ホールなどの公共地以外は好きに建築できるのよ。それにカルロス団地と名前をつけられる。そうか、全部でいくらだ。だめ、残りは中流と庶民向け。え?庶民も。そのほうが安全なの、ガードマン20名配置する。フェンスなし?ええ。境界も標識だけよ。ふーん。面白いじゃないか。陳が口を開く。陳さんにも同じ土地お世話しますから。
 庶民が土地が購入できるだけの雇用を創出しなくてはならない。給料に見合う能力を付けさせなければならない。日本の給料の1割でも能力的には高い。今後のこの国が決まるであろう。教育費は高いから回収に時間がかかる。産学共同の教育を確立しなくてはならない。ユキの課題山積。

 半信半疑のカルロスもマリアがコンサートを開く為に購入を決める。国際基準の50mプールも設置された。まず中流層の建築が始まった。土地だけの分譲だが購入者を集めて土地利用を協議させた。これが好評で購入者は日本人が多かった。
日本の建設会社が建設を一括請負、完成パースをCGで示す。竣工後の感想は想像以上と絶賛。日本の建築は凄いと評判になる。カルロスの高級分譲地からも注文が相次ぐ。施主との綿密な協議、品質の高さ、行き届いたアフターケアーとカルロスが吹いて回る。
 庶民むけは生協が販売と賃貸。木竹の家屋に荒壁を使う。建設会社はバギオの風土にあった伝統工法を取り入れる。バギオには暖房がいる。この南の島に雪が降ることもある。荒壁は断熱、除湿効果があるからだ。地元業者に下請けさせる。たちまち完売。隣接地の10haを二期分譲と発表する。ユキひどいじゃないか、隠していたのか。欲しいカルロス、半分売ってあげる。カルロス団地は高級中流庶民混在団地となった。当初計画規模の2倍である。

 生協の出張販売も好評で地元の年寄は運転手の横にただ乗り。フィリピンらしい。農家から排水を農耕に使いたいと言ってきた。雨水溝を延ばしてやる。農作物を生協で買い取る。日本人が飲食店を始める。スペイン人がレストランを開店。食材探し、農家との協議、美味い食材は売れる。残りは生協で販売。全国に売られてゆく。農業と飲食業の連携、流通業も加わって大きな効果を上げる。
陳の方も同様であった。志淵団地に消防車が置かれた。カルロス団地も右に倣え。水の給水にも活用、要請があれば消火にも駆けつける。優良な住宅供給は不動産価格を押し下げる。売り物件、空が増え出す。地元業者に買い占めさす。陳とカルロスが立て直して国家公務員に賃貸する。道路が整備される。ユキの政治力を使わなくとも公務員は自分のために行政を行う。二人はホテルの買収、土産店のテナントを集める。アーケードの下はペイブメント観光客で賑わう。市内循環バスを走らせて大気汚染の削減を進める。溢れたタクシージプニー会社を集めて共同組合にをつくる。観光客用、市民用と便益も考慮する。
 学生向けペンションに人気がでる。バギオは一生に一度は訪れたい地だ。家族向けペンションも満室に近い。金が循環すると経済が発展する。税収も増える、警察官の給料も上がる。賄賂が減りサーヴィスがよくなる。犯罪が減る。すべてがうまく行き出した。

 ついに清美の予約を無視したオーナーが泣きを入れてきた。あの女は許さない、ユキは怖い。清美の部屋を横取りした日本人は地元の学生、少女に売春させていた。ベルハウス売春宿は扱わないと業者に言わす。やがてその日本人が逮捕される。外国人に処女を斡旋していたのだ。時間4000から10000ペソ半分をはねる。面接で気にいった少女を裸にして犯す。処女かどうかを検査しただけと嘯く。警察も内偵を進めていたが15歳の少女の告訴で逮捕に踏み切った。終身刑の判決。オーナーも共犯もしくは幇助で逮捕されたがマンションを売って示談金を支払う。土地を捨てマニラに落ち延びる。もういいだろう。ええ、これくらいにしておきます。ユキがにんまり笑う。


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