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作品名:続 椰子の風に吹かれて 作者:佐々木 三郎

第11回   11
紀州の旅


 洋平の運転で太郎案にしたがって南に向かう。ミンダナオ海に感じが似ているわね。私はまだ。そうだったの、一度いらして。はい、ありがとうございます。南紀白浜は新婚旅行のとこだ。初夜に部屋を間違って自殺した女の人もいたそうだ。何も死ぬことはないでしょ。からむな。ここは日本。はーい、すいません。和雄と洋平夫婦とで8人乗りのバンは快適だ。フィリピンでは20人乗りとなる。逆に20人乗りのバンを日本では8人しか乗らないとなろうか。
 潮岬で昼食をとる。まぐろ寿司2000円、清美が眼を回す。清美美味いか、しっかり食べなさい、和雄は喜んでいると思ったのだ。日当3日分の昼飯、しかも家族連れが楽しげに食べている。本州最南端、日本人は最が好きなのですかと清美がつぶやく。そうみたいね、とユキ。

 ここは串本、向かいは大島。坂本は二人にトルコ軍艦エルトールル号沈没事件は知っておいて欲しかった。南海雄には将来話すつもりだ。困ったときはお互い様というが命懸の救命、介抱は100年後、1985年イランイラク戦争においてイラクのイラン上空の航空機に対する無差別攻撃宣言に対し、イラン国内に取り残された日本人が派遣されたトルコ航空機によって215名全員が救出されることになったのは記憶に新しい。海に生きる者にとって民族、職業などは問題ではないと言う当時の日本人の考え、心意気が坂本の心をとらえているのだ。

 熊野は表敬訪問のつもりであったが、清美が関心を示したので参拝のほか古道を歩いてみる。和雄洋平は足腰が坂本よりずっとしっかりしている。那智の滝に感激するユキと清美に今日はこれくらいにしておこうと坂本を気遣う。新宮市の徐福寺はまた今度にする。
 徐福伝説は柳と語りたいテーマである。始皇帝から船財宝をまきあげた徐福は中国を出るとき,稲など五穀の種子と金銀・農耕機具・技術(五穀百工)も持って出たとも言われるが、伝説には楽しい夢がある。清美は熱心に日記をつけている。想像と現実を分析してゆくのであろう。

 "伊勢へ七度熊野に三度愛宕さんには月参り"と東海道膝栗毛にあるが、何ゆえお伊勢さんが人気があるのか。入り女に出鉄砲と厳しく取り締まったのに伊勢参りはフリーだったとか、幕府政策だけでない大きな方針があったのではないか。坂本にはどうしても確かめたいことがあった。
 宮司に耳打ちする。人目をはばかることをお聞きしてもよろしいか。社務所の応接に通される。天皇はどうして男でなければならないのでしょうか。ごもっともなお尋ね、さらば、お答えしましょう。おほん、この神宮は天照大御神をお祭り致しておれば、女の神様ですぞ、夜伽のお相手は男でなくてはならんのでござるよ。女神は連れ合いをなくされた。いやいや、これは天界と人間界との神聖なる宗教儀式であって、トップ会談ともなると方や大御神方や天皇でござろう。むべなるかな、永年の疑問が氷解致しました。
 坂本が深く頭を下げると貴殿は正直なるお方とお見受けいたせば、今ひとついい話をお聞かせいたそう。参拝の夜に夫婦円満に勤めれると子宝に恵まれること、間違いありませぬ、今夜ですぞ。かたじけないお話、これは些少ながらご教授のお礼にござれば、なんの、我が仕事世のため人のためにならば、これに勝るものござらぬ。これなぞ記念に求められては如何かな、ひとつ参千円にてそこで。ふたつ買い求めて出る。
 何買ったの、ユキと清美にひとつずつ。なんなの。ありがたいお札らしい、宮司が勧めてくれた。どんな話してた。日本の歴史の深いところだ。坂本は悩んでいた。今夜となれば、ユキか清美かさりとて双方とは自信なし。山田殿、男の精がつくものといえば何がよろしかろう。ご心配されるな、夕餉に用意いたそうぞ。洋平、少し早いが客人がお疲れのようじゃ。そうだな、朝はやかったしな。洋平さんこそ長い運転でお疲れでしょう。肩など揉んで差し上げましょう。ユキが後部からマッサージする。ああ、いい気持。お爺様もと清美。

 夕食にはウニ、海老、牡蠣に猪。清美、今夜はお祖母ちゃんと寝よう、明憲さんのこと聞かせてやる。はい。おお、雨か、五月雨にしてはごついな。ここは全国でも雨が多いし、粒が大きい。五円玉くらいやから痛いで。坂本が激しい雨音の中でユキを抱く。どないしたん。もう三日振りだ。ちょっと、南海雄を寄せておかないとね。激闘を感じているのであろう。屋根、雨戸を打つ雨は周囲を消してゆく。
 おっちゃん、爺ちゃんたちが飲み直している、太郎が呼んでいる。ユキは深い眠りに落居っていた。俺の勝。坂本は風呂に軽く入って和雄の横に座る。さあ、駆けつけ三杯、猪は猪突猛進、人生これでござる。太郎、飲め。うまいぞ。そうかあ。爺もな、親父が子供のころ飲ませてくれた。お袋に見つかって捻りあげられた。でもな、味を覚えるとよく親父に頼んだ。そおっと飲ませてくたもんじゃ。親父ええんか、ええけど、自己責任、お前のお母の怖さは知っておろう。お前の嫁であろうが。このガキ。まあ、これは男の世界、わかるか。うん、俺も男じゃ。
 親父祖母さんがな、和雄にはゆうてくれるなと言われていたことがある、もうええやろ、話しても。ほうかー。和雄には十分なことをしてやらなんだ。親として失格や、あの子のいいところ、明憲にいわれれて気付いた。洋平、お前にしか話せないけど聴いておくれと泣いた。いつじゃ。爺が死んだ後。和雄は、稲穂には100から200の米粒がどうしてできるとか、アカシアの木はどうして稲をよくするのか、などと私の知らないことを聞くものだからそんなこと考える暇があったら学校の勉強をしなさいと言ってしまったの。教師としても失格ね。お母さんもわからないから和雄研究して教えてと言うべきだった。親父も俺もいっしょだ、和雄にすまないとお袋をかばった。
 明憲叔父さんに相談したら、和雄は俺より物事の本質を捉える能力がある、他人をやさしく包むものを持っている、と答えたそうじゃ。私はニュートンの、真理の海原で貝殻を拾っている子供だった、との一節に感動しました。そうだな、彼は劣等性だったが君は数学が得意だね、との校長の一言で自信を得てケンブリッジに進む。明憲は親よりも和雄をよく理解している、と涙を落としたそうじゃ。そんなことがあったのか、兄貴は大人にみえた。子どもの12歳差は大きい。

 坂本さん、清美が呼んでますよ。あたしも飲もうかしら、おうおう、呑みなさい。おいしい、シシは太るかしら、いやあ、もうひとつ、止めれんな。今叔父さんとお袋の話をしていた。義母さんは教師としてのプライドがあったのでしょう、でも心が真直ぐでいい人だった。私この家に嫁ぐとき心配やったけど今はよかったと思うとんじょ。洋平が注いでやる。
 柱時計がなる。三時か。清美が坂本を抱きいれる。子供を生んでくれ。清美は愛おしそうに見上げる。激しい雨音が二人の意識から消えていった。清美の顔が天照大御神になる。古代衣装の清美が褥に誘う。朝の光がこぼれている。衣装を脱いだ清美がこどもを抱き寄せるように坂本を抱く。

 和雄と洋平のパスポートを取りに行く。昔と違って県が発行する。国の委託を受けているのだろうが随分簡単になった。携帯がなった。坂本さんですか、外務省の大平正義と申しますがユキ国会議員はご一緒でしょうか。ええ、横にいます、代わりましょうか。いえ、私ども今大坂港のトレードセンターに向かっております。よろしければ、そこでお会できないかと思いまして。こちらが出向かなくてはならないところを助かります、今和歌山市にいますので1時間で行けると思います。そうですか、私どももそ、れくらいかと、では1時間半後にLTM棟の大阪ディザインセンターで落ち合うということでは。わかりました11時にディザインセンターで。ではまた。
 山田さん、大坂港のトレードセンターにお願いします、外務省の役人がそこで会いたいといってきた。じゃあ、東京まで行かなくて済むかも。まあ、いい機会だ、話がどうなるかで先のことを考えよう。そうですね。親父、外務省にコネがあればフィリピン行くのに何かと都合がええ。そうじゃのう、いざ、行け。

 関空の10分ほど先にセンターがある。広い、大きい、これはセブ市がおさまるのではないか。後で聞くと敷地68ku延面積335kuとか。LTM棟で落ち合うことにしています。あそこに案内図がある。真直ぐ行って右だな。洋平が確認する。日本人は小さいがやることは大きい、か。何それ、ああ、建設。うん、トルコ人がいっていた。完備された屋上駐車場。駐車料高いでしょうね。こういうとこはただ、ただでないと誰がくるか。日本人は駐車料払うのが嫌いなの。そういうこと。
 20分あるな、人に会う前にはトイレに入って手を洗っておけ、南海雄来い。私たちも行きましょう。大阪港も変わったのう。昔は夜出て朝6時天保山に着きました。橋が架かるとこうも変わるか、兄貴が見たらどういうかの。Titi。おう、手を洗うか、そら、と南海雄を抱き上げる。えらい、えらい。和雄が声をかける。フィリピン人に"ち、つ"はむずかしいようです。もう少し経ったらきちんと日本語教えます。そうか、父といったのか、男じゃ。

 5分前にディザインセンターに行く。大平たちが待っていた。お待たせしました、と坂本が挨拶すると、我々も今着きましたと大平が応じる。清美が注意深く観察している。会議室に案内され名刺交換。経済産業省も議員に会いたいと付いてきました、同期のよしみで連れてきました。日本の偉い方に会って緊張します。ご高名は経済産業省にも。いや、
やめて、私頭弱いから何から話していいか、フィリピンは借金抱えているから観光で稼ごうと思っているですけど。高速網、インフラが整備されて観光客が増えているとききますが。そうなんですけど、まだ、利息も払えないのよ。力になってね。こんな美人に頼まれたら何でもしますよ。うれしい、フィリピンにいらして私案内しますわ。パラワンなどきれいわよ、できるだけ自然のまま開発したいと思ってます。開発は経済産業省がお手伝いしますよ。私もパラワンに。是非いらして。
 ところで、これはご参考までにもってきましたが、ご覧下さい。私読めないの、清美さん読んで。

アキノ権は日本の省エネ・環境技術に期待−東京で投資セミナー−(フィリピン、日本)
2011年02月08日 アジア大洋州課

 日比経済委員会と日本アセアンセンター、駐日フィリピン大使館は2月1日、フィリピン投資セミナーを東京で開催した。
前日に発表されたフィリピンの2010年の実質GDP成長率が7.3%と、76年に次ぐ高水準だったこともあり、講演者のドミンゴ貿易産業相、アルメンドラス・エネルギー相は好調な経済状況を力説。アキノ政権下での投資環境の改善事例を
挙げ、インフラ投資や省エネ・環境技術協力を日本企業に呼び掛けた。
                                                 通商弘報 4d4f99352de602011年02月08日 

ああ、あれね、ドミンゴさんもアルメンドラスさんもやり手だからね。いけますか。私も公務員ですからね。どうですか、たまたまここで会って昼飯を一緒にとなったということでは。本音を話せということ。いいわよ、お昼ご馳走してくれるなら、でも大丈夫、こんなに大勢なのに。我々にも接待費がありますからご心配なく。では遠慮なく。
 弁当は3000円はするだろう。ビールと酒もついている。議員、これは私的な、あくまで雑談ということで内密にお願いします。ユキ議員の歓迎ということで乾杯。カンパーイ、一番絞り好きなの。日本の料理は美味しい。議員、もう一度皆さんをご紹介いただけますか。ええと、順番はと、そうね、こちらが山田清美さん、元日本軍山田中尉のお孫さん。
今は生協の理事長をお願いしてるけど日比文化比較の研究に戻りたがってるの。どおりで日本人かと思った。大平さん私とどっちがきれい。それは、いずれがアヤメかかきつばた、優等生ね、歩く姿はユキの花。百合じゃねーか。ばか、ユキをかけてんだ。そうか、おっかねー。

 こちらが山田中尉の弟さんとその息子さん。これは私の連れ合い。どう、私の説明。いやあ、よくわかります、今回の旅は中尉のお墓参りとその息子さん清美さんのお父様叔母様の日本国籍取得が主な目的だそうだ。外務省は法務省と連絡を取り合っている。いけそうか。経済産業省の田中角蔵局長が口を挟む。ああ。それはよかった、清美さん今度は
貴女が案内ですな。
 ところでフィリピン投資はいけますかな。昼飯の恩義でいうけどさ、話半分、40点から60点に上げるのは簡単だけど、80はもっと90はもっともっと難しいでしょ。日本からの援助でハードはよくなってきているけど、使いこなすソフトも援助して欲しいな。おい、権八。JETROの白井です。うちの開発スクールがいいのでは。外国人研修生を増やしていただいてもいいかと。フィリピンはタイの36人についで26人ですが。そうね、私も研修させていただこうかしら。それはもう、是非。
 ゴンパチは空気が読めないようだ。私の出る幕ではないようですが通訳します。猫に小判ではなく、長靴をと言っております。坂本が助け舟を出す。きょとんとする権八。地図をもらっても読み方がわからないと。研修を受ければすぐ読めるようになります。赤ん坊にはお守りを、身体障害者にはケアギヴァー介護士を、。大平が指を振る。坂本は理解した。
 フィリピンの看護士介護士は頑張ってるかしら、増やしたほうがいい。そら来た、と田中局長。その点は厚生労働省によく伝えておきましょう。お国の貝殻、ギターなどは日本仕様でアジアンコレクションかオフィステナントに置かれたらいいと思いますよ。日本仕様?通訳してやる。素材はいいのだから日本人が買いたいと思うような加工をして展示したら売れますよと勧めてくださっている。なるほど、ありがとうございます。

 あのう、ちょっとよろしいでしょうか、清美が口を開く。どうぞどうぞ、雑談会ですから何でもと大平。勘違いしてたら許してください、日本の発展を支えてきたのは職人気質、腕、技能と思うのです。ですから日本の職業訓練校みたいなのを置いたらと、日本から職人さんを講師にきていただくとか。それと、日本の古い建造物、美術品、生活品などが職人さんの腕を磨き、そして後世に伝えてきているのではないかと考えています。技能の習得には100年以上かかるでしょうけどやらないと
いけない、フィリピンに仕事は増えないと思うのですが。いやあ、おっしゃるとおりですよ、よく勉強されてる。アジア経済研究所にでもきていただきたいな。どうです、大阪の町工場を見学されたら、NASAから注文がくるぐらいですから。USAの。そうです。見たーい。手配しましょう。ありがとうございます。
 日本も150年前には西洋技術を盛んに取り入れましたよ。そうですか、問題は牛を川に連れて行っても水を飲むかしら、日本の職人気質が育つかどうかしらね。ユキ議員なら馬に水飲ますことができますよ。本当、お世辞でもうれしいわ。それと清美さんの鋭いご指摘のように後世に残るものをつくることですね。できるかしら。できますよ、連絡橋、新幹線、などは永遠に不滅です。おい、長嶋さんか。俺巨人ファン。それにライステラス、天まで続く棚田あれは尊敬しますね。あれだけの技術と根性があれば大抵の事ができるんじゃないですかね。田中さん国会に行った方がいいんじゃない、お堅い役所よりむいてる気がする。これはうれしいことを。

 坂本さんはフィリピンには。5年になります。どうですか。不便なところですわ。いいところもあるでしょう。女好きでいい加減な男には天国でしょうな。これは冗談、文明の利器はなくても暮らしていけます。年寄、こどもを大事にしますなあ。ぎゃくに、日本は完成された国と感じますよ。海外から日本を見ておられるといろいろお感じなる。太平さんは海外にお出かけになられてよくご存知でしょうが、日本は無菌室、日本人が弱くなるはず。とおっしゃいますと。政府が過保護に国民をし過ぎる、外国に支配されるということはどういうことか、考えさせる必要があると思いますね。国も国民もガードが甘い。逆に天国かと思えますよ。言い過ぎたかな、日本が世界の中心になれば戦争はなくなるでしょう。この点是非大平さんのご意見をお聞かせ願いたい。
 坂本さんのおっしゃることよくわかります、同感するところが多いのですが現在は力の理論で世界は動いていますから、平和は先のことになるのでは。やはりそうですか、力とは武力でしょう、これを廃絶できたという前提で日本のリーダーシップをどうみられるか。素手で勝負ですか、いい線いやおっしゃるように中心に立てるかも知れませんね。お話伺ってますとあれを【青い地球をまもる会】でしたかを連想しますが、ご関係がおありですか。いや、ありませんが共感しますね。あとひとつ、100年先の世界はどうなってますか、日本の植民地政策とスペインをはじめとする欧米のそれとの比較研究はありますか。あるでしょう、言われんとされるところは日本が中心になれば威圧的支配ではなく、人類はみな兄弟になれるということでしょうか。そうです。うーん、私も外務省にいながら国際問題を日本の枠の中で捉ていますね、役人として当然ではありますが、いや、ガーンとやられました。

 大平さんも国会で活躍したほうがいい気がする、田中さんと政党組んだら日本を動かせるんじゃない、ねえ。そうだな。日本の官僚は優秀だが自分を枠の中に閉じ込める、世界の舞台に立たせたらのびのびやってる人も多い。地球的に見てもったいないわねえ。地球的、さすがユキ国会議員、スケールが大きい。冷やかさないでよう、今日しあわせな気分なの、田中さん、大平さん今度はフィリピンで呑み明かしましょう。日本酒3本はもってきてね。皆さんもいらしてね、私がお世話しますから。
 ユキがひとりひとりと握手する。田中と大平も立ち上がって和雄、洋平と握手、お疲れになられたでしょう。なんの、昼を馳走になりまた、ええ話を聞かせていただいた。甥ごさん、姪ごさんの件は早急にやりますから。何分よろしくお願いします。清美さん、研究
期待してますよ。ありがとうございます、父、叔母のこと、私からも。わかってますよ、待っていてください。

 あの議員のカウンターは凄いな。マニーパッキャウと馬が合うそうです。あの世界チャンピオンとか。ええ、彼も下院議員です。どおりで。しかし、あの旦那、坂本龍次、何者だ。調べておけ。はい。捉えどころがないな。まったく。ユキ姉さんが惚れるだけに
何か持っているのだろうな。それにな田中、清美さんの子供、父親は彼だ。本当か、そうか、外務省だからな、そうでないとあんなに力を入れる訳がないか。これだけでも凄い、大平、俺尊敬するよ。俺もだ、羨ましい、定年後はフィリピンにゆくか。それもいいな。
 いい人たちだったわね。そうだな。でもう、あれなに、ゴンパチ。だから権八というのだ。わからなーい。日本語むちゅかちい。相手の気持、真意が理解できない人をそういうらしいです、ね洋平叔父さん。そうだな、どうしてかのう、親父。わしも知らん、白波
五人衆か。どうして猫に長靴なの。長靴を履いた猫は頭がいいんだ。猫が靴を履くの。うるさい、そういう話があるんだ、それと川に連れて行くのは馬、牛bacaではない。いいじゃん。ばか、馬だカバユだ。bacaは牛。黙れ、ぶっ殺すぞ。

 常男と花南の日本国籍が取れたら、和雄と洋平がそれを持ってフィリピンに行くことになった。フィリピン出国日本入国は清美が手続きを進める。山田中尉の写真をパソコンに取り込む。ユキは買い物にルンルン。おい、岡本理事長に挨拶したのか。いけない、
まだ、携帯貸して。そう、でいつまで日本にいるの、じゃあ、2、3日こちらにいらっしゃい、東京葛飾亀有、そうご主人に代わって。坂本です、ご無沙汰致しております、ええVisaは半月ぐらいでおりそうです。ではユキさんお借りしますね。よろしくお願いします。清美もそんなことでばたばたしておりますので。
 いいか”亀有”だぞ、おぼえておけ。東京駅からは山手線でも千代田線でもいい。ユキの手帳に書いてやる。和雄が那智黒石の伝統工芸品を土産に持たす。どうして和雄さんが。清美のことよろしくという意味だ、岡本理事長ならわかる。だからこれは大事な
届け物だ。ユキさん、お荷物になるがよろしくお伝えくだされ。はい、かしこまりました。小銭を持ってないと困るぞ。わかってる。
 出掛けに南海雄が泣き出す。お母さんは仕事だ、南海雄はお留守番、いいから笑って手を振れ、行け。男は泣くもんじゃない。南海雄は強い子だ、お母さんにバイバイ。ユキを見送ったところに判決が下りたと弁護士から電話が入る。すぐいただきに参ります。
私は出かけますが分かるようにしておきます。ありがとうございます。坂本は受話器を持ったまま頭を下げる。おっちゃんテレビ電話ちゃうのに、みえーへんが。いいや太郎、見えるのじゃ、覚えて置け。和雄がきつい調子で窘める。

 ユキを駅まで送った洋平が帰ってきた。ほりゃよかった、すぐ行こう。太郎、学校は。今日は代休日じゃ、ほれでも親か。やかまし。清美に目配せする。これは国籍取得のお祝いです。和雄は坂本の顔を読む。さればかたじけない。弁護士に御礼でよいかの。山田和雄と熨斗袋に墨書。清美ピン札に入れ替えろ。え。交換して来い、そうかやったことがないか。洋平さんピン札。郵便局に寄ろう。お願いします。清美観ておれ。いらっしゃいませ。ピン札に替えて。お確かめ下さい。10枚しかない。郵便局オバちゃん、少しも慌てず。今おまけはないんです。そうかい。おいれましょうか。助かる。のし袋にピン札を入れる。ありがとうございました。
 車に戻る。この間、2分。どうして交換費用ないのですか。昔から。どうして郵便局がありがとうというのですか。知らない。清美は頭にとどめている。日本で当たり前のことが海外ではそうと限りませんから、と和雄に、坂本が取って着けた様にいう。NGO事務所に弁護士はいなかった。先生はでかけました、これをお渡しするように言われております。写しを3部同封してますので原本は還付を受けるようにとのことです。判決文を和雄と清美に見せる。

 お世話になり申した、これを弁護士の先生にお渡しくだされ。いやあ、なんですの、いけません、先生におこれれるわ。気持でござる。では、お気持だけ頂戴します。姉ちゃん気持は何かの形に表さないとわからんだろう、先生に我々の気持を伝えるのはあんたの
仕事やろ。ほうですね、私の仕事やねえ、確かに受取りました、責任をもって先生にお渡しします、と言いながら顔がゆるむ。
 そこへ弁護士が帰って来る。だめだったんですか。ほかを当たる、あの資料。はい、先生、山田さんからこれを。お、助かる、これは過分なる褒美をいただき、それを持って市役所で戸籍を、ちょっと取り込んでまして、ご一緒できませんが、いやすぐ取れると思います。せんせ、落ち着いて、これどっちに回しましょう。人前できくな、そんなんやから嫁にゆけんのや。嫁にいったら困るでしょ。ではメイスン先生、我々は市役所に参ります、本当にお世話になりました。いやいや、お恥ずかしいところをおみせしました、

 市役所の戸籍課に行く。書類はそろっていますから決裁だけですね。どれくらいかかりますか、清美が訴える。持ち回りして決裁をとりますから5日ぐらい待ってください。出来次第電話で連絡します。謄本何通いりますか、日付を空欄で申請書出して置いてください。何分よろしくお願いします。早急にやりますので、ご苦労様でした。
 日本の役所は親切やねえ、清美が思わず、つぶやく。職員は、そうかという顔。清美に日本国籍は取れない。坂本は柳に電話を入れる。100万ほど用立ていただきたい。おやすい御用、私の研究小冊子にまとめた、謹呈します。それは楽しみです、今ユキが東京にいますので帰り寄らせます。役所はうまくゆきましたか。御蔭さまで、来月あたりに参りますので柳さんをお訪ねします。待っています。では、また。再見。
 あとは和雄と洋平のパスポートと航空券か。日本の新緑はきれいだ。野にも山にも若葉が茂る八十八夜は今頃ですか。左様、少し過ぎましたかな。5月2日はとっくに過ぎている。来週は6月、坂本の季節感も鈍ってきたか。そうだ、紀和に日本の歌を聴かそう、洋平さん、寄ってもらえますか。ホームセンターにおいてあるんとちゃうか。清美は陳列された品々、接客などを注意しながら見て歩く。DVD,CD,絵本を選ぶ。
 坂本の携帯が鳴る。弁護士からだ。坂本はん、えらいこっちゃ、柳さんいうお方から200万ものご寄付をいただいたがな。さっそく、領収書と礼状をおくりますけど、ご心配してもろうて、えらいすんまへんなあ。法律家にしては情が深い、だから無報酬の活動をつづけているのだろう。大阪ペリーメースンみたいな弁護士の先生に一方ならぬお世話になったと話したのですが、先生、事務所の費用に使われたらいいですよ、柳さんは仁徳の方ですから。たまには美人秘書にうな重でも。そないします、おおきに、坂本さんからも柳さんによろしゅう言うておくれなはれ。

 清美との寝物語はいつまでもつづく。美人とは男の考えを本人以上に巧く言葉にすることができる女、うん、いける、愛欲理論に加えよう。なんですか。クレオパトラ、楊貴妃、小野小町は肉体だけで男を夢中にさせたとは考えられない。相手は女に不自由しない男だからな。こころをとらえたということですか。そうだ、男は自分の考えを理解してくれる女が愛おしい。この程度は恋女房だ、世界レベルになると考えを言葉に翻訳できる、しかも男以上に巧くな、俺の言いたかったのはこれだったのかと男は思う。
 無意識を有意識にする、いえ、無意の世界から有意につれてくる、、、そのとおり、上手いこというな。なっていったらいいのかしら、って思うことあるでしょ、考えは浮かんでいるけど言葉にできない状態。有意の世界のそばまで来ているが入国審査で手間取っているいるのだ。ま、ほんとですね。有意は経験の集まり、無意は未経験の集まり、でしょうか。そうだろうな。無意識は無意を識っているけど言葉にできない、つまり、有意になれない、何ていったらいいのだろ。未だ識らない無意がある。そうですね。どれぐらいあるんでしょう。有意とどちらが広いのでしょう。

 それは無意だろう。どうしてですか。芸術家の作品をみればわかる。あれは無意識をことば、音楽、絵画などに翻訳したものだろう。そうか、ということは無意識以外、つまり識られていない無意は無限に存在する。おい、俺の言いたいことを先取りするな。ごめんなさい、でも理解はしているでしょ。冗談だ、清美は無意を識ることができる。天照大神の末裔でないのか。美人だったの。とびきりだ。無意を識るにはどうしたらいいの。そうだなあ、禅かな、達磨大師が無意という言葉を日本に伝えたそうだが、意識を消してゆくと無意が見えてくるそうだ。心を無にするともいう。どうやって。一つのことに集中する。禅寺では座禅を組まして数を数えさせる。永平寺、へんなこと考えると背中をびしり。よそ事を考えるなということだ。道元は凡人には無意はむずかしいから形から入れと考えた。物真似でいい、中身は後からでいいと合理的実践的教育を始めた。どうしてですか。学生が武家の次男坊三男坊が多かったからだ、つまり専門学校だ。京都奈良のお寺は総合大学、上流の長男が多かった。永平寺の学生は就職がかかっているからよく修行勉強した。

 話を無意に戻すが、芸術家、舞踏家、スポーツ選手などは集中力が強いから無意を識ることができると俺は考えている。創造とは無意から考えを引き出すこと、違うな、無意の世界に入っていって、自分の求める考えを探すのね。そうだ、そこでは言葉は不要だ、いや、妨げになる。ふと坂本は亡き父を思い出した。父は意味のない会話をきらったものだ。それは創作の妨げになるからではなかったか、今は訊くよしもないが。失語症、自閉症の人に天才が多い。ホントですか。ある女性博士は牛と話すことができるが人間と話すのは苦手。ある考古学者は地層を見ると数億年前恐竜が歩いていた情景を思い浮かべることができるが、人に話すのは苦痛。ある建築家は図面を見ただけで完成建築が頭に現れる、自分の建築したい建物を頭に描くことができるが、字が読めない話も苦手。
 言葉は無意を表現するには無理がある、その人たちは無意の世界に出入りできるのね。だから無意で話すの。なるほど、そうだろうな。人間が言葉を使う前は無意で話していたの。言葉は不特定多数の人間とのコミュニケーションを可能にしたけれど心の会話、つまり無意を遠ざけたのね。鋭い、おお、すばらしい。言葉の功罪相半ばかな。お前天才かも、以心伝心、こころをもってこころを伝えると言われるが特定の人間同士では言葉は要らないものな。日本人が愛のことばをあまり使わないのはその空しさを知っているからかもね。おまえ、いいこというなあ。抱いてください。

 坂本がそっと抱き寄せる。清美が胸に顔をのせて眠る。こうしていると幸せ、あなたが入ってくると身体中によろこびがひろがっていくの。性は無意の世界につれていってくれるの。それは新説だな、俺の愛欲理論に使っていいか。どんな理論。完成したら教えてやる。雨乞理論を越えないとな、天は女の裸をみると雨を降らすと言う理論だ。ほんと。ほぼ完成、確立している。そいつに会うときは愛欲理論をぶつけたい。モーツアルト、天狗久は神が私の手を使って曲を書いている、人形を彫っているといった、、、いつしか二人は眠っていった。
 

 ユキが明日帰ると言って来た。柳さんのところによって研究小冊子をもらってきてくれ、それから100万用立て頼んだら200万ふりこんこんできた。よく礼を言っておいてくれ。わかりました。ほかには。帝釈天の団子でも土産に持ってゆけ。寅さんの、私亀有交番派出所で写真撮った。早く帰って来い、戸籍が下りそうだ、航空券の手配もある。明日の夕方には着くと思います。南海雄元気。ああ、元気だ。
 その夜は清美が話し続ける。今度の旅は一生忘れない、いろんなテーマが見つかった。そうか、何故いろんな言語が生まれ消えて行くか、これが知りたい。消えるのは民族そのものが滅亡するか支配者によって使用を禁じられることだろうが、発生の方がわからない。俺の故郷でも数キロ離れるとアクセントが異なるという調査がある。面白そうですね。私研究に戻りたい、ユキさんと顔合わすと心苦しい。あなたとこうしているだけで至福を感じます。セックスもいいなあと思うようになりましたけど。無意の世界にゆくか。もう少し待ってください。あなたは無意と有意の案内人、いろんな世界に私を連ていってくれる。日本にこれたのも、父の叔母の戸籍が取れたのもあなたのおかげ。まだ、来ない。いえ、明日連絡がきます。
 清美の声が神がかって来る。
  海のしずくが月の光にぬれている 若者が西からやってくる 潮は水道を北に満ちてゆく 舟は浜辺に乗り上げる。舟にはうつぼがいっぱい若者は村人たちに与える 枕木の火が天空にひろがる 若者が少女を抱き上げる 酒宴はつづく呪文のような声は坂本を数千年前の海辺につれてゆく。二人は苫屋で身につけたものを脱ぎ捨てる。村人が真水で二人の身体を清める。中には蒲の褥がある。少女が髪を持ち上げて縛る。
白いうなじ、少し膨らんだ乳房、その顔は清美であった。


 バナウエ banaue

翌日戸籍簿ができたと連絡がきた。清美大神のお告げどおりだ。和雄と洋平は旅支度に大童。無理もない初めての海外旅行と常男花南の日本国籍を携えての旅だ。航空券の予約も済んだ。薬、電気剃刀は必携だ。荷物も7人なので85kgまで持ち込める。いざ行かん南の島、ルソン島。

 関空で缶ピ−スのたばこ、日本酒、チョーヤ梅酒などを買い求める。テロ防止から液体の機内持ち込みは禁じれているんですな。左様か、出国とは面倒なことよ。日本の税関は鷹揚ですが、問題は常男さんと花南さんの入国で、この戸籍謄本がものをいうのですわ。貴殿のおかげ。
 出国手続きは簡単に終わった。搭乗、離陸。和雄の緊張が伝わってくる。もう日本を離れたかの。時間的にまだ領海内でしょう、この航空会社は安いのが取り柄でサービスはないんですな、飛行ルートと現在位置を表示するように言っているのですが。3時間のフライトは長くない。南海雄も紀和も大人しくしている。機内はフィリピン人の会話がうるさい。

 ほどなくマニラ空港に着陸。ヒリピンでござるな。左様、これから入国手続きでござるが、英語が使用されので無言にしかず。心得た。坂本は南海雄と審査を受ける。後ろの二人は俺の友達だ。OKサー。荷物を荷車に載せて税関へ。南海雄がパスポートと入国票を提示。もの怖じしない。すんなりいった。外には陳とカルロス。男は陳の車、女はカルロスの車に乗り込む。空港警備員がとんできて荷物を車に積む。チップ50ペソ。
 大物にはへつらうのはいずこも同じだがここはひどい。よくおいでなされた、お疲れでしょうが、バギオに直行してよろしいかな、途中で休憩をとりますので。和雄がうなずく。こちら陳さん。そして山田和雄さんと洋平さん。やっかいになります。なりなり、常男さん待ってる、急ごう。柳さんが200万用立てくれた。柳さん金持ち、問題ない。一応決済しておいてくれ、こちらが頼んだことだ。わかった、で予定は。常男さんと花南さんのパスポートが取れ次第、日本に行く。了解。
 車が高速に乗る。このスカイウエー、ユキハイウエーと呼ばれている。ユキとは、あの。そうですユキが日本の会社に発注した、お金も借りた。道路美しい。日本並みね。左様か、女傑じゃのう。龍次絵を描く。ユキ実行。陳よけいなこと言うな。俺たち家族、山田さんと一緒に日本へゆく、龍次案内しろ。わかった。と、いうことは、カルロスも。当然そうなるな。やれやれ。塩崎さんも待ってる。

 坂本の行く末が思い遣られる。日本入国はいかなることに。子供たちの顔をひとりひとり見つめる審査官の顔が浮かんでくる。トイレ休憩。ユキが真知子に電話する。食事の用意ができてるから早く帰ってきなさい、ってお母さんが言ってる。ちょっとまて、山田さんあと一時間ぐらいでつきますが、腹の方いけますか。ご心配なく、早く甥と姪に会いたい。よし、出発だ。
 塩崎家に着いたのは日が傾く頃。握りずしが山盛り用意されていた。お母さん一人で、とユキが涙ぐむ。お腹すいたでしょう。手を洗ってきなさい。はーいとユキ清美。常男と花南が駆けて来る。おお、常男か、花南。二人は和雄に抱きつく。兄貴にそっくりじゃ。叔父さん。
 感激のとき、ことばはでない。半世紀の時を越えた対面であった。常男は唱和25年のあの日に戻っていたのかもしれない。常男、花南、お父様は新しい任務に出発されるのだよ。笑ってお見送りしましょう。声の主は清美であったがそれは明らかに清美ではなかった。日本人は整列して山田中尉の部隊に敬礼する。その中にはイメルダもいた。マリリンお母さん、とつぶやく。

 こは何やらむ、心霊現象、集団催眠、その場にいた人間は日本軍部隊が行進して行くのを見たのである。マリリンが清美に乗移ったか、清美が彼らを呼び寄せたか。今、兵隊が20名ほど通っていった。日本軍だ。門を開けろ。右に向かった。バナウエか。おいかけますか。いや、ここで見送ろう、いざ行け、兵日本男児。カルロスが歌いだす。いざ行け、兵日本男児!大合唱となる。
 突然清美が倒れる。坂本が抱きとめる。激しい息遣いだ。酒をのませろ、和雄が叫ぶ。洋平が日本酒の栓を開ける。真知子がすばやくコップを差し出す。清美が一口飲み干す。清美、お祖母さまにブレスしなさい。お爺様はバナウエに行かれたよ。いつ。たった今、お見送りしなさい。お爺様、清美は門に立って手を振る。
 山田中尉が答えたかは定かでない。お母様、どうしてお見送りに起こしてくれなかったの。清美寝ぼけてるのかい、お前もそこで手を振っていたじゃないか。うそ。おかしな娘だね。やはり清美が呼び寄せたのか。お母さんお腹すいた。なんだね、子供みたいに。

 清美が猛烈に食い出す。お母さん美味しい。しっかり食べなさい。塩崎さんすみません、お手伝いもせず。いいんですよ、ユキさん清美さんがお腹ス化して帰ってくると思って、それに大叔父様もおいでになると腕をふるいましたのよ、ほほほ。そうだ、乾杯してなかったぞ。陳音頭をとれ。それは筋違い、塩崎さんだ。そうだな。山田さんのご来訪を歓迎して乾杯。山田中尉のご健勝を記念してカンペー。かんぱーい。


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