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作品名:フィリピンに生きる  新フィリピン事情 作者:佐々木 三郎

第6回   Low service High demand
Low service High demand

 この国の役所、会社のサーヴィスの悪いこと、かつ、お値段の高いこと。これを名付けて Low service High demand ということにしよう。満足度=値段/サーヴィス、日本を100とすれば5以下。それは給与物価水準を加味すれば0に近づく。労働分配率の低さとの関係を分析する必要があるが、それは先に延ばして話を進めよう。より良いものをより安く提供することで社会に貢献、を基本理念とする日本企業の逆と考えればよい。低い能力を傲慢な態度で Poor ability Arrogant behavior 誤魔化しているのだ、ほんにかわいくない。満足度はマイナス無限大に、怒りになることもある。金は働いて得るものという労働価値説に反する。

 
 ス−パー

 商品 goods ではなくガラクタ bads だ。店員はほとんどが臨時のパート。商品知識なし、計算遅い不正確、サーヴィス精神なし。時間がたてば日給にありつけるというスタンス。中にはタバコを2ケース20箱買うとレジで金額を打ってもらってもらって来い、などと日本人への嫌がらせをやるのがいる。スーパーアドバイザーと呼ばれるマネージャーに文句をつける。即首になる。馬鹿を相手に喧嘩しても始まらない。3000ペソを超えると消費税12%が乗ってくる。もうだめ、計算できない。低賃金で働かすのだからこんな程度。それでいいのだ。常用すると組合運動などに精を出すからだそうだ。中国、韓国方式だ。馬鹿と鋏は使いようとか。
 日本式に労働の質を上げようと常用すると首を切るのが難しい。リーマン危機などに対応できない。なるほど、日本式は100年先を
行っているのか。韓国、中国で資本輸出の苦い経験をしたはずなのに。フィリピンでも日本人は甘いね。
   * マイルドセブン53から60ペソ。イミテーションかOEMかは別にして安い。日本の30%。在庫管理なし、買いだめしておかないと。買い物は3倍の時間がかかる。交通、手続き、などなど平均して3倍いじょうか。

 航空

 搭乗手続きの煩わしい事。とくに荷物検査、テロ防止とは理解できるが検査官の横柄なこと。オーペン、開けてとくる。両手が
塞がっている、お前が開けろ。荷物を持つ。それなら開けてやる。サンキューサー。乗客がなかったらお前の仕事なくなるぞ、と
日本語で言う。雰囲気は伝わる。ライターとくに日本製は取り上げようとする。関空を通り抜けて来た物を簡単にやれるか。外で
タバコを吸ってから再検査。日本製をベルトの内側に現地購入をポケットに。ポケットのライターを没収、馬鹿めが。
 手荷物は15kgを超えると500ペソ/kgの超過料金。信用できそうな隣の乗客に持ってもらう。あのバッグは貴方のものでしょう。友達に持ってもらって問題あるか。ノー、サー。5kgで5000円節約。日本のチョコレートを運び賃にやる。時間があれば事前に飯でも食わして見定めておくのが無難。俺のバッグなんて言われたら困る。そもそも大人往復12500ペソなのに65kgの人間
96ペソ/kgよりも高い料金を取るのか。当社はどこよりも安い航空運賃を提供しております。そんなら荷物も安くせんかい。あれ、日本のやくざかも知れない、相手にしないほうがいい。

 フェリー

 転覆原因は人も物も載せすぎ。過剰積載なんて上品なものではない。2倍3倍気にしない。気にする!日本領事館は相次ぐ
転覆にフェリー使用を控えるよう注意している。旅行保険に入ってなければ乗らないこと。保険は死んだら本人は受取れない。
車を載せるのは運送業者か金持ち。庶民は身体と手荷物。車と人は別の場所で支払う。同じ会社か。計算が出来ないのか。
乗用車マニラからいくらと答えるの2週間。そんなに難しい質問か。NO。能力がないのか。Yes,I have.いえ、あります。では何故
答えない。待ってください。十分待った。料金表を掲示しておけばすむことでないか。答えなし。12000ペソ位でしょう、詳しくは
車部門に聞いてください。
 車部門まで車で30分。25000ペソになります。むこうの事務所は12000といった。払わなければ乗れません。他の会社にする。
お待ち下さい。特別2000にします。(日本の中古かスクラップの)オンボロフェリーが一著前のことを言うのか。東京九州と同じ
料金とは笑わせるな。このホームページを観てみろ。やめた、乗客3人もキャンセルだ。セール運転手の料金は車に含まれて
います。全部でいくらになる。20000ペソです。じゃあ、16250ペソだな。いえ、20000です。馬鹿か、3750すでに払っている。
小学生の計算が出来ないのか。泣き出す。ブスが泣いたら見れないな。スーパーなんとかが出てくる。ではこれで予約を。
車の荷物は鶏2羽を含めて検査に降ろさなくて良いな。乗船は1時間前(通常10時間前という、正気か)。予約に記載しろ。
それはできません。私の名刺に書きます。ですんだと思ったのが間違い。
 当日荷物検査に3時間、不足料金3750の請求。ふざけるな、この名刺を見ろ。彼と話してください。私は会社の方針通りに
やるだけです。鶏もだめ、これは100ペソも握らせればすむ事だが贈賄は主義に反する。結局乗船に10時間はかかる。近くの
観光取り止め。裁判所に訴えてやる。日本人が出来るわけないでしょという顔。ぶら下げている身分証明書の写真を撮る。
上司らしきが出てくる。ここは何でも金次第と持ちかけてくる。24時間の船旅ですから何が起こるかわかりません。それは脅しか、
今の会話携帯に録音したから日本領事館に送信しておく。まだ死にたくないからな。セール私が案内します。こちらです。
態度急変。なるほど他よりはきれいなベッドだ。日本人のくせに部屋もとらず、威張ってやがるというのがフィリピン側の言い分。
一度、日本の外務省からフィリピン政府に改善を申しいれてもらおうかな。お前家族はいるのか。イエスサー。家族は大切に
しないといけないぞ。サー、困ったことがあったら何でも私に言ってください。彼も同じことを言ったとスーパーなんとかの名刺を
見せる。愛想笑いしながら、立ち去る。これだけやっておけばおかしなことはすまい。しかし、奴隷扱いである。永年植民地を
経験した国は日本人には狂っていると映る。『いちども植民地にならなかった日本』、という本があったな。

  銀行- 口座凍結

 この国で多額の現金を持ち歩くことは危険である。また日本から送金するにも銀行口座が必要である。大手の銀行に行く。
ショットガンのガードマンがドアを開ける。気味が悪い。Good morning sir というものの、自動ドアに慣れた日本人には異様である。銀行は襲われるものというのは世界の常識かも知れない。これが用件を尋ねて順番待ちの番号札を渡す。25人目か。一人5分
として1時間半、待ってられるか。
 一番可愛い娘に預金できるかと声をかける。ATMのほかに預金通帳もつくるというと身分証明がいるという。パスポートを見せるとほかにIDないかという。永住ビザを出す。住所を証明するものがないと口座は開設できないときた。それなら俺もこの銀行には金を貸さない、というとミス銀行、あわてて上司をよぶ。女支店長が出てきて定期も積んでくれという。担保は?怪訝な顔。この銀行の創業は、収益は、信用度は、と畳み掛ける。
 住所を証明するもの*は規則で求められているので是非当行を利用してもらいたい、と支店長。口座をつくってやると言わんばかり
の行員とは違う。預金獲得ノルマがあるのだろう。口座は必要だし支店長と面識があることは役に立つ。定期金利は。預金額は。
500ペソ(百万円)米ドル。どっちがいい。どちらでも。(ならきくな)2月で4%でどうでしょう。プライムレート。イエスサー。どうやら利息は支店長決済らしい。近いうちに来る。お待ちしております、と握手する。おばさんでも女には違いない。行員たちの態度が変わる。
  * 住民票ほどたいそうでなく、ポスタルIDでいい。郵便物が届けば十分。ただ郵便局に行くのが面倒。支店長に50ペソで行かす。顔写真はJPGにしてメールで銀行に送る。

 翌週銀行に行く前に両替店で百万円をペソに替える。約53万ペソ。千ペソ100枚束5つと30枚。『俺は100遣ったのに53しかくれないのか』ノーサー、530枚、5倍以上差し上げました。『なるほど、君は可愛いね』店内大笑い。諧謔を解するか、いい娘だ。銀行で両替すると50万ペソ、3万ペソは大きい。彼女の給料は月8000ペソとか。銀行に行くと支店長自ら出迎える。定期預金証書を示す。ATMと普通預金口座が先。もうすぐできますから1000ペソ以上預金してください、これをお願いします。
 CERTIFICATE OF DEPOSIT Rate:4.000000% Terms :61DAYS とある。この国では2月は何日か。60か61日。1月と2月とでは59日、
貴女は2月毎と言った。返事なし。2ヵ月後には2万ペソ利息が受け取れるのは間違いないか。いいえ、20000×61割る365=3342です。これに税金がだいたい7.5%かかりますから3091という計算です。この前と話が違う。言葉を変える人間を信用できない。この証書にも4%は年なのか2月ごとなのか不明瞭。(月1%年12%なんて話が美味すぎると思った)だから、研究してから契約する。そのときは担保を要求する。ATMと普通とに25万ペソずつ預金する。『サー税金は外国人だから7.5%、我々フィリピン人は20%』どこに書いてある。重要な事項を説明しなかった銀行は信用しない。
 ミス銀行は普通預金の額に驚いた様子で今日は私の誕生日です、友達になりたいです、という。何回目の誕生日。27回目。(若く見えるな)友達になったらアパートに一緒に住むか。勿論。Whats your status ? 独身?イエス。(独身の子持ちはいくらでもいる。フィリピーニョは食い逃げありだが、日本人とみれば数百倍の慰謝料を請求、払わなければレイプで告訴、刑務所行き。警官、証人がぐるなのだ)金で動く女は危険がいっぱい、触らぬ神に祟りなし。

 同一銀行でも支店が違うと厭な顔をされる。預金でも1時間かかる。50万円だと日銀券50枚の番号を書き写したものにサインをしろという。複写機はないのかと厭味を言って番号をすべてチェックする。2と6はくせがあって読み辛い。5分ほどするとこちらが腹を立てていることに気づいたようだ。ざまあみろ。引出しとなると預金した支店にサインを照会する。ファックスで遣り取りするから時間がかかる。7万ペソ引き出すのに2時間、照会ファックス電話代150ペソとか。照会は銀行の仕事だろ、客に請求するのか。ここは別の銀行か、この国で最も有名な銀行と聞いていたが。銀行の方針です。良くない方針だな。OKセール私が負担します。おかしなことを言うな、銀行が負担するのだ。おたくの会長に訊いて見ようか?NOセ−ル。銀行負担だな。イエス。客を2時間もまたしてこの様か。銀行の能力の低さを客に負担させるな。日本では引出しは2,3分だ、覚えておけ。
 銀行に限らず、客のクレームには法律規則です、会社の方針です、とマニュアルどおりの返答が返ってくる。見せてみろ。下を向く。アホの一つ覚え。やってやるとの傲慢な態度の割には事務能力は低い。大学卒のエリ−トだそうだが複利計算などできない。強く出ると引っ込むのがよけい癇に障る。
 
 口座凍結(Dormant account)とは、ペソは2年、外貨は1年以上全く出し入れが無いと口座を封鎖する制度である。とくに外貨は一旦凍結されると毎年5USD,ペナルティ(ふざけるな)として引き出される。やがて残高がなくなって口座そのものが取り消される。坊主まるもうけ。例え残高があっても10年経過すると政府の管理化に移行されるそうだ。当然の疑問、
  1、口座開設時にこの制度を説明したか。NO。
  2、休眠期間1年の合理的理由は何か、根拠法は。わかりません。
  3、ペナルティー5$没収に当たってその告知をしたか。NO。
それでよく人様の金を盗ることができるな。仕事は遅いが、自分たちに都合のいいことは直ちに実施する。15ヶ月足らず10$引かれている。
 5米ドル=450円=230ペソの金をとる合理的理由を示せ。口座の金が動いていません。それが銀行にとってなんの不都合がある。理由にならない。ポリシーです。困ったときはポリシーと答えろと教育されているのか、悪いポリシーだな、乞食か、金は働いて稼ぐものだ。銀行が俺に5ドルに当たる何をしてくれた。価値を付加してはじめて利益が得られるのだ。大変申し訳ありません。なら10$返せ。無言。 
 これを解凍するためには(Reactivate)所定のフォームに口座名義人が署名して提出しなければならい。つまり、原則として本人が
銀行に赴かなければならないということだ。こんな恐ろしいことを事前の説明もなく平気でやる(重要事項告知義務違反)。外国人を狙った国家的犯罪というべきだ。現地人に1年以上金の出し入れがないとは到底考えられない。外国人は帰国して事情ができて、
ついつい預金を忘れることは多々あろう。この国、民族の性根が腐っている。
 対策としては@定期預金の利息を普通預金口座に自動的に振り返る手続きをとる。A口座はできるだけ少なくする。が考えられる。が、ペイオフは5000ドルまでの保障、危険分散との兼ね合いもある。老後の蓄えを日本から持ち込んでも常に管理怠りなきようにしなければならない。誠に厚かましい制度である。外国人が落とす金で相当の恩恵をうけているくせに、恩を仇で返すのか。長期在住の日本人に話すとどこの銀行でも同じですよ、開設のとき契約読まなかったですかと平然と答えた。契約書の熟読は必須集だ。英語力も。しかし説明しないのはけしからんと考えるのは当然でないかと思われるのだが。恥も外聞もないない輩には、センカタないことか。
 
 役所

 役所の昼休みは12時から1時半まで、実際は2時間以上になる。この間は梃子でも動かない。時短で労働の場を確保しているのか、昼飯食って時間をつぶすしかない。勤務時間中にテクスト(ショートメール)のやりとり、おしゃべり。半分は早飯か遅飯にしろと怒鳴りつけたくなる。税金のほとんどが公務員の給与に消える。質量とも日本のお役所仕事の半々分以下の以下。雇用のなさを役所がカバー。票集めの場所。
 受付案内に行くと場所と順番だけは教える。どの部署かはサーヴィス外というか知らないのである。待たされて順番を呼ばれても担当をたらい回し。公務員かと怒鳴りたくなる。銀行口座をつくるため身分証明IDを役所に行くとサーこのIDは発行できません、なぜなら、.....。とりゆうをくどくど説明する。私はIDが必要なのだ、どうすれば発行してもらえるのか。『お待ちください』と奥のおばさんに相談している。どうも管理職の多くがおばさんらしい。男は使い走りか補助員が多い。おばさんは発行にはこれらの条件を満たしていることが必要で、その証明にこれらの書類のコピーを提出することが求められております、と丁重に答える。この申請書に必要書類を添付すればすぐ発行してくれるのか。手数料850ペソを向こうの窓口でお支払ください。850?えらい高いな、フィリピン人も同じか。すべての人が850支払います。本当か、ぼったくりでないか、と口に出かかったが時間が惜しいので我慢。

 コピーはどこ?『道の向こう側にXEROXの店でやってもらってください』といわれ、信号のない国道を横断して店に入る。20年は使っている複写機で1枚40ペソ、5枚で200ペソ400円。公務員のマージンがのっているのか、ローソンの10円コピーを思い出す。1枚に5分以上の鈍行、30分かかった。役所に戻るともう一枚別の書類をコピーしてくれという。『要求された書類はすべてコピーして提出した。しかもこれで全てかと確認した。したがってこれ以上コピーできない』申し訳ありません、コピーさせてください。『ここの役所がこの書類を要求する理由は何か』私にはわかりません、お待ちください。で、おばさんが再び登場。要領を示しながら説明する。『理由を聞いているのだ、理由がないのに要求するのは私が日本人だからか』そんなことはありません。『では根拠法を示してもらいたい』それは私にもわかりません。『理由も根拠もないことを国民に要求しているのですね。日本領事館を通じてフィリピン政府に照会します』
 お待ちください、サー。すぐ発行しますからおかけになって下さい。どこの役所も高圧的な人間には弱い。態度が急変するのが腹立たしい。が、これでは済まなかった。タイピストが帰ったので明日の午後に取り来てくれという。『貴女がタイプすればいいではないか、できないの。すぐ発行しますと言ったでしょ』容姿はいいがお頭は。私タイプ打てません。『それなら交通費を初めとする損害を支払うよう要求するから明日支払ってね』見かねたおばちゃんがタイプを打ってくれた。今時タイプと思うのは日本人か。パソコン、複写機は高級品なのだ、ここでは。待つこと25分、発行されたIDをチェック。スペルの間違いを指摘すると効力には問題ないという。フィリピン人は、日本人は英語がしゃべれないと馬鹿にする。どうだ日本の受験英語はスペルと文法には強いのだ。『日本では申請書の見本と添付書類が掲示されるから誰でも申請書を記載できる。たずねるときちんと説明する。公務員は国民に奉仕するものだ』と手続きをややこしくして国民からチップを取る役人に一刺し。

郵便局

 郵便局といっても看板があるだけでプレハブの倉庫程度。愛想のないこと、こちらから声をかけないと携帯に夢中。配達がないから取りに行く。荷物保管料40ペソ、ID身分証明書のコピーを毎度請求される。日本の四国から関空まで1日、マニラまで2日。セブまで1週間から15日。これは馬車で配達するのか。さすがにむっとして、この時期は荷物が多くて遅れているだけという。荷物はこれが全部か、金網の鳥小屋の保管場所を指差す。あなたの荷物は今日着いたのですぐ連絡しました。本当か、記録をみせろ。できません、すみません。すみませんですむか(バーカ)。
 事前に電話で確認すればとお思いでしょうが、電話帳に載せないのか、載っていない、片道40分交通費50ペソで出かける次第。日本ほど発達していませんので。だろうな、明治政府は書簡はがきは全国を網羅していたから日本ほどとはゆかないよな。切手もない、ポストもない、何にもない。通信、輸送は緒に就いたばかりで鋭意改善に努力いたします。

おまけ 裁判所

 裁判所も役所。少額訴訟は10万ペ万円未満。弁護士なしでもできる。入り口で中に入るには長ズボンでなくてはだめと警備員
(受付、駐車も兼任)がいう。持っていない、俺貧乏。セール私のを貸してあげる。貧乏人は親切だ。日本でも裁判所は本人訴訟を
嫌がるがここはひどい。あっちこちに行かされたあげく、弁護士lawyer,attorneyを紹介すると言う。要らない、自分でやる。OKな?どういう手順になってる?ちょっと待って、彼女にきいて。あんた知らないの?ブー(そんなに給料もらってないわよ)コピーが3部必要です。内訳は?被告と裁判所と。。。それから?あの人にきいて、あとお、訴状はこの様式で書いてください。その様式はお貸ししますけどコピーして返して下さい。順番が逆だろう、書き直してからコピーだろ?出直すことにする。これだけで2時間。警備員にズボンを返し感謝だと50ペソ握らす。感激して車を誘導してくれる。
 翌日裁判所に出向くとかの警備員が出迎えてくれた。『セール、日本でも訴訟は多いのか』ああ、多い。ここは市立の裁判所か。
NOセール、国立の裁判所。そうだろう、三権は分立しているはずだ、秘書は市役所の裁判所とかいてあると言った。所在地だろが。
英語のヒアリングだけではない、おかしな事を言うから解らない事もある。地裁、簡裁だろう。法廷もある。弁護士の控え室か、そのとき未決囚が二人連れてこられた。黄色のシャツを着せられている。手錠は二人に一つ、縄なし。そういえば、セブの刑務所は囚人にダンスをさせ観光収入を得ている。今日はお兄さんが応対。 『訴状はこれでよいからコピー3部、証拠も添付して提出してください。もう昼ですから2時に』室内にはラジオがかかっていて音楽ジョッキーが聞こえてくる。ここは南の島。

 コピー店に行くとめずらしくゲステットナーを使っている。ここではコピーとはゼロックスなのだ。キャノン、リコーはない。日本製は高いからだって。60枚で105ペソ、1枚1.75ペソ。ここは安い。別のところでは1枚20ペソとられた。1部20枚ホッチキスでとめてある。3部チェックする。OKだ、チップ10ペソやろうとすると秘書が不要という。車を誘導するだけでも10ペソなのに?チップは相場がわからない。店の前のテーブルは隣のレストランのものらしい。気にするな、昼飯にしよう。秘書が安心する。2時間食事しながら考える。ここは時間は無限、ただ。時は金なり、なんて。なんで?
 裁判所に戻る。担当は急用ができたので明日来て下さい。それはなかろう、彼が2時に来いと言った、書類を受け取るだけだから
貴女がやって。私わかりません。ここの職員でないの。明日の朝は混んでますから午後3時ぐらいがいいと思います。偉そうにして
いるが事務能力はない。馬鹿と喧嘩するのもと引き返す。翌日、3度目の裁判所。事件番号を取るのにまた待たされる。兄ちゃん
昨日すっぽぬかしたこと謝りもしない。半時間ほどして時間がかかるから明日には事件番号を記入して受付印を押して控えを渡す
という。あきれて帰る。弁護士を使いなさいということだ。弁護士の営業の成果。
 翌日4回目。パスポ=トとIDの写しは原本を確認してからでないと、と小母さん。兄ちゃん不在。これは役所のよく使ういじめの常套手段。こうなったら根競べ、受付が完了したらガソリン代と時間損失を請求してやる、日本人をなめたらあかんぜよ。効率の生産性の低さ、日本の1/10以下。50年100年先も変わらぬだろう。

 日本は130万以下は簡裁管轄。2週間以内に異議を申し立てないと結審判決。公判も20、30分で終わる。判決、和解まで一月。
ここは一年以上かかるのはざらという。さあ、どうなるか、時間はあるので勉強がてらじっくりやってみようか。在住日本人はここでの裁判は時間と金の無駄、言っていたが、あきらめません、勝つまでは。

【事案】被告の強い勧めで原告が購入した中古車が欠陥だらけで修理費が購入額の半分は必要なことがわかったのでその修理費等
     請求したもの。被告は売主の代理として契約の作成、車の引渡し、代金の決済まで行った。原告は被告に騙された思って、
     詐欺による損害賠償を求めた。

 5月14日の提訴から5月後答弁書と反訴状が送られて来た。ENTRY OF APPEARANCE 出廷申請書 ANSWER WITH
COUNTER-CLAIM請求付答弁書と書かれている。いつ着たのかとアパートの管理人にたずねても忘れたとの返事。宅急便で
着たらしい、会社に確認するしかないか。裁判所からではないと判って捨て置くことにした。つまり、今頃答弁書を出しても遅すぎる。俺は単なる脅しと判断したのだ。参考までに中身を紹介しよう。
 1 代理人Counsel
弁護士の答弁書の日付は提訴後31日後(期限は1月らしい)、証人陳述書の陳述日付32日後、弁護士の発行(作成)日は
2010年10月OCT 2012。笑ってしまう。今年は平成22年、西暦2010年である。今年の10月の誤記としてもゆっくりした答弁です な。A4で8枚の答弁書はすべてに契印に相当するサインが記されている。被告の委任状もない、代理権限はあるのか。弁護士の資格は持っているのか。法の常識が欠如しているようだが。日本語でやれるならこてんぱーにやってやる。
 2 内容
   @請求の認否
   Aカウンター攻撃(請求)
    被告は、原告の法的知識欠如に基づく不当な請求により、次の損害を被ったので原告に賠償を請求する。
     a 40000ペソ 精神的苦痛
     b 20000ペソ みせしめ、戒めのexemplary damages
     c 35000ペソ 弁護士費用
     d 訴訟費用
  これは要注意、日本にはない制度だ。10万未満の請求で下手撃つと逆に8万請求されることになる。
 3 その後
   聴聞hearing審理trial結審 submission判決 decisionとなる。本件は被告が出廷しなかったので結審となり、12月20日判決となった。聴聞は、その日11件、法廷で順番にたずねてゆく。朝8時半開廷と張り出してあるが裁判官の入廷は9時半。一時間も遅刻してと怒るのは日本人だけか。自分の番が来るまでおとなしく待っていなさい、という感じ。時間割を作ったりはしないのだ。全員起立してお祈り、キリスト教のお国だ。
 やっと順番がきて、原告を確認。もうクリスマスだ、提訴したのは5月、いい新年を迎えることができるか、と開口一番。裁判官はむっとする。しゃんしゃんやらんかといっているのは理解した。書記官と記録係がはらはらしている。(我々しっかりいじめておきました)俺にもやりとりは察しが着く。口にはださねど、遅すぎる裁判は紛争の解決にならない、と非難する。日本の裁判官は常時30件は担当しているぞ、こんな小額訴訟は一月で処理しないと事件が山積みになるぞ。この裁判所は機能しているのか。言っちゃあお終いだが、言ってみたい!
 判決文が送達されてこないので裁判所に取りに行く。明日は祝日帰り支度してるのにという顔。音楽が流れるのは裁判所とは思えない。やっとこ判決文を手に入れる。確定判決なのか、執行力はあるのか、なにしろ英文なので難儀ですわ。英文を読むと請求棄却、なんと、こんなのあり?答弁書もなし、被告の出廷もなしなのに。しかも原告の主張は一切聞こうともしない。被告の代理人弁護士は裁判官の同期か友人といった感じ。日本人なら文句は言わないと踏んだのか、裁判にならない。これでカウンター請求が認められたら泣き面に蜂。
     * 判決要旨:被告は売買の当事者ではなく立会人に過ぎないから、原告に被告を訴える理由は存在しない。
       債務不履行による損害賠償と不法行為による損害賠償との区別ができないようだ。相談したこちらの弁護士が判決と       同様なことを言っていた。


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