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作品名:フィリピンに生きる  新フィリピン事情 作者:佐々木 三郎

第16回   ライターかマッチか
ライターかマッチか


 禁煙しようと思うのだができない。ここではタバコが安い。マイルドセブンが50から85、マールボロー40、フォーチュン15ペソ。勿論イミテーションであろうがmade in tokyo,made in USAと銘打っている。で、たばこの量が多くなる。ライターの使用頻度も高くなる。このライター粗悪品が多いので腹が立つ。見てくれは100円ライターと変わらないが値段は10ペソ。着火率70%以下、寿命1月、ひどいのは3日。マッチがまし。日本製は半年から1年はもつ。着火の感触は比較にならない。ほとんどが中国製。
 よく粗悪品を販売するな、と怒鳴りたくなる。日本の不良品の方が数段上である。ここでも日本製優秀、中国製粗悪との評価は定着しているが、いかんせん日本製は高価である。中国製で用は足せる。日本人には腹立たしい粗悪品を売ってやっているとの態度。中国人が厚かましいのか、フィリピン人が我慢強いのか。

 フィリピン人はマッチを使うことが多い。1箱4ペソで50本入り安全有利だが両手を使わなくてはならないが、販売されていることが驚きである。日本では100円ライターがマッチ工場を閉鎖に追い込んだがここではマッチは健在である。もし日本製が普及すればマッチはどうなるだろうか。関税がかかるから60ペソぐらいか。しかし使い心地寿命を考えるとやがて同じ運命を辿るであろう。
 そこで日本からライターを数個持ち込もうと考えるのは無理もない。ところが出国審査で没収されてしまう。『日本製のライターでなくてはタバコが美味くない』『お気持ちはわかりますが、原則禁止なのです。お持ち込みたいのを1個だけ選んでください』だって。日本製のグラスを秘書が壊した。どうしたと訊くときれいにしようとゴシゴシ洗ったら砕けたという。薄くて美しいカッティング、持った感触が気に入っていた。たかが酒を飲むのに何ゆえ高いグラスを用いなくてはならないのか、フィリピン人には理解できない。粗悪品すら買うのが容易でないのだから骨董品などみかけたことがない。したがってものを大切に扱う習慣もない。

 それにしてもスペインは300年にわたって搾りに搾ったものだ。搾取とはものだけでなく、人間の心、人間性まで及んでいる。ここに限らずスペイン植民地だった国は悲惨な歴史をたどり、21世紀の今日も貧困に喘いでいる。もし日本がキリスト教を禁止しなかったら、富国強兵を国是としなかったら、『一度も植民地にならなかった日本』は出版されていただろうか。搾取して本国に送るというシノギはやくざやマフィヤでもこれほどエゲツナイことはしなかった程のものであろう。植民地政策はマゼランに始まるといわれるが、彼の終焉の地に立った今、そのすざましさに身の毛がよだつ。

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