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作品名:フィリピンに生きる  新フィリピン事情 作者:佐々木 三郎

第14回   謝らない、非を認めない 人前を通るな 交通事故 小さな脳、頭が高い
              謝らない、非を認めない

 『フィリピン人は謝らない非を認めないのは何故ですかね』と在住の20年の日本人にたずねてみた。それは鞭で打たれるのを恐れてきたからですよ。奴隷時代の記憶が遺伝子に残っているのでしょう。『日本人にはずるい奴と映りますが』そうですね、一言謝ればすむことと思うのですがだらだらと言訳を続けるでしょう。 まあ、どうしようもないというのが結論です。彼らにしてみると罪状認否で有罪と答えると結審処罰が待っていると考えます。
非を認めるを潔しとするのは日本独特の文化でしょうね。『欧米の影響ですか。こちらは相手を良くしてやろうと思っているのですがね、自分を正当化するために嘘を並べる、恥ずかしくないのですか』これからフィリピン人と付き合うと幾度となく経験しますよ。『悔いを改めないから進歩しないのですね』そうかも知れませんね、悔し涙、悔悟の涙はみたことがありません。
 それからフィリピン人を人前で叱ってはいけません。日本人は自分の内面の誇りを大切にしますが、フィリピン人は周囲が自分をどう見るかが大事なのです。ですから非が誰にあるのかより人前で叱られたことに屈辱を感じ怒り心頭に発するのです。日本人は部下のミスを叱るのは当然、叱って育てるのだと考えます。また、叱らなければ周りに示しがつかないと思います。それはここでは止めたほうがいいでしょう。『なんで日本人がフィリピン人に合わせなくてはならないのでしょうか』なんとも答えようがありません。

                 人前を通るな

touch me not! 我に触れるな フィリピンの国民的英雄ホセリサールの著書である。が、バスの座席、ベンチでも他人に触れるのは平気である。カワイコならまだしもオジンオバンに触れられるのは不快である。ここは南の国、たださえ暑いのに。少しでも隙間があると、世界的感覚では常識と思える間隔なのだが大きなケツヲ割り込ませ
左右に揺さぶる。顔を睨んでも効果ない。こちらが思わず立ち上がっても彼の占有域を広げるだけ。人様に迷惑をかけるな、という概念がない。
 若い娘、少女も平気で人前を通る。肩が当たっても謝りもしない。一度日本のやくざに教育をたのんだらどうか。観ていると後ろには十分余裕があるのに後方を通らず思ったままに直進する。蛮人と呼ばれても致し方あるまいて。世が世であれば無礼打ちに致す、そこへなおれ、と言ってみたい。
 車も同様、以上だ。対向車がセンターラインを大きくはみ出してくる。クラクションを鳴らしても行く手を阻むのである。事故ってはと右に寄ると後ろからけたたましくクラクションを鳴らされる。音に繊細な日本人には苦痛である。ジプニー、トライシクルは客を集めるために急停車急発進、割り込みは当たり前。交通整理の警官も注意しない。前述のように信号無視、速度違反など金になるのを探しているのだ。直進車優先、主要道路優先と原則はない。60年前の日本に車と携帯が急速に普及した社会というのも酷評とは言えない。
 ひとつ注意しておかねばなるまい。腹が立っても胸倉を掴んで引き出したりしてはならない。フィリピン人はナイフ、ピストルを持っているのが多いからだ。刺されたり撃たれても正当防衛だったと平気で言う。日本人がフィリピン人に暴力を振るい、正当防衛で殺された、で済まされる。法治国家ではないのである。

                 交通事故

 ここでは車がないと不便だが、命懸けの運転をしなければならない。事故らないのが不思議である。片側3車線の交差点で信号待後、直進車の前を左折する車。クラクションを鳴らしたが強引に左折継続。きちがいか。ブレーキを踏んだが右前方に接触。交差点内で止まる。交通量の多いところ、こちらは直進して車を止める。相手車のナンバー
は読み取れなかった。当てられ損かと思っていると運転手がやってきた。タイヤのカバーに相手車の塗装が、凹みを目立たせている。サイドランプが外に垂れ下がっている。交通警察もやってきた。『セール、事件にするか』俺の車を修理すれば許してやる。
 サンキューと警察官は言ったが運転手は払わないという。この事故はお前の過失によって起こった。まず謝れ。アイム ソーリー、けど金がないから払えない。俺は運転手。それなら所有者に請求する。『止めてつかーさい、首になる』それは俺には関係ない、それとも裁判所で話をつけるか?警察もいるから事件として扱うか?これぐらい啖呵を切らないと寄ってたかって何を言い出すか。
 『ノーサー、俺の運転している車修理しなくてはならない』免許書見せろ、お前はプロではないか、安全な運転をしなくてはならない。わかるか。イエス。俺がブレーキを踏まなかったらお前の車は横転し乗客が負傷していただろう。イエス。返事だけはよい。サイドランプを直せば許してやる。すると器用に中にランプを押し戻し作動を確認する。サー大丈夫問題ない。問題ある、このテープで落ちないようにとめろ。
 用があるからこれで許してやるが、次は裁判所で話をつけるぞ、お前は乗客を安全に送り届ける義務がある。注意しろ。サンキューサーと警官が答える。同胞を庇うのだ。『サー俺、カワイソウ。俺の修理代タスケテ』日本人とみてか。お前子供じゃあるまい。車を発進させる。大勢の見守る中、恥も外聞もない。 聞くところによると、車の所有者は事故には責任をとらないそうだ。後進国と呼ばれるわけだ。運転手は車のレンタル料を所有者に500/日、他にガソリン、維持費など一切を払った残りが手取り。水揚げは20/人×3,4往復=1200ないし1600といったところか。手取り500がいいとこかな。

              小さな脳、頭が高い

フィリピン人は一途に事に当たることが苦手なようだ。ものごとを深く考えると熱が出るそうだ。記憶力も判断力もいいので秘書兼ハウスキーパーにしているフィリピーナがそういうのだから間違いはないようだ。『それは智恵熱といって3歳児が考え始めたとき出すものだ』私は3歳児程度なんですかとふくれる。
 日常生活では即断即決でいいのだが契約など慎重を期すべきものは任せ切れない。重要な要素を見つけ出し検討するなどは重労働なのだ。疲れたから寝ると正直だ。話を最後まで聴かない、真意を汲み取ることができない、などは感覚で判断するためあろう。ノーベル賞を受賞することは控えめにみても向こう300年は有り得ないだろう。おしゃべりtalkはあっても会話はない。Nice conversation というフレーズは聞かない。
秘書の分際でボスの意向を無視することがある。『頭が高い、控え居ろう』と怒鳴りつけたくなる。貧弱な頭で考えて何が分かる?判断指示をを仰げ。日本人なら5年習って少し経験があるというところを5日でもっともらしい口を利く。気恥ずかしいと
感じるのは日本人だけか。こんなときスペイン人中国人のボスは秘書をどのように扱うのであろうか。そもそもボスの意向を無視するなぞ許されるものではない、即解雇と言うだろう。やはり日本人は舐められているのであろうか。怒っても首にはしないと踏ん
でいるのか。知力、人徳などが通用せぬ者には武力が必要かもしれない。犬でも飼い主の家族間順位、己の順位を心得ている
のだが、、、。

具体例をあげると
 @誕生日呼ばれたとき一人100ペソの祝儀を持ってゆく。秘書の従姉妹二人もいれて400ペソかとたずねると200ペソで十分という。二人のときは200ペソだったから400だろうと念を押したが200でいいという。不審に思ったがもう始まっていると聞いて出かける。従姉妹は後から来るという。数日前から誕生日の話はしていた。二人がなかなか来ないので呼びに遣るとのそのそやって来てあまり食わない。いつもはがつがつ食うのに。あまり盛り上がらない。
どうしたのかと秘書にたずねると二人は招待されていないという。『何故それを言わない。出かける前に言っておれば二人を連れて行ってもいいか確認する ことができた。』相手から従姉妹は来ないのかとたずねられてはじめて呼びに行くのがフィリピンスタイルと膨れる。『何故それを言わなかった。俺は日本人だ。お前は俺の意向を無視するのか』と怒鳴ってしまった。日本人が招待すると籠のカニで一族郎党が押しかけてくるのにフィリピン人の招待だと遠慮するのか。
 Aセブパシフィックの航空券を予約して銀行に支払いに行くとその予約番号では貴方の名前が出てきませんという。秘書に確認させるとダブルブッキングらしい。どう落し前をつけるのか。7時半の便でよいかというので1時間早くても朝早く出れば済むこととOKする。支払額が5000ペソ少ない。よく確認すると午後の7時半だ。『お前は馬鹿か。俺の11時間を500ペソで売ったのか』7:30pmと言いました。アホ_、19:30と言え。OKするはずがないだろう。迎えに来てくれる日本人は夜の8時半に空港に来なくてはならぬ』
 Bスーパーフェリーの予約。旅客の予約の係りはアコードの料金は約12000ペソと言ったのに車両の係りは21000ペソという。1と2が逆でないのかと詰問すると秘書が係りが違うと言う。『お前に聞いているのではない。会社に訊いているのだ。同じ会社の従業員だろう。自分の言葉に責任を持て、だから後進国と言われるのだ。このクレームはお前の仕事だろう。9000ペソも違うのに黙っているのか。それともお前が払うのか』自分に非があるときは黙っている。この会社はフェリーに乗せてやるという感じだ。返す刀で『運転手の料金は車に含まれているのに1200ペソ返せ』と怒鳴りつける。850ペソ返ってくる。差額は?ペナルティー。ふざけるな、間違ったのはお前のほうだろう、二度足踏んだ車代2000ペソ支払え。謝らない、払わない、なら11000ペソ裁判所に訴える、そこで話をしよう。お待ちください、セール!裁判所で会おう、と背を向ける。
* 事務所内の乗船客、警備員達あっけにとられている。この会社は、いや、ほとんどの会社が客を客とも思っていない。そのくせサーヴィスは悪い。荷物検査は3時間、奴隷の扱いだ。Xrayレントゲン、警察犬の麻薬チェック、マニラからセブへの国内移動なのだが。
**出港8時間前には受付を済まさなくてはならないわけだ。待たすことも待たされることも平気なのだ。効率の良さ?この国は東アジア一貧しいと言われるが、100年経っても変わらないだろう。

 その後も裁判はしないでくれとひつこく電話をかけてきた。 ちなみに日本領事館はフェリーの利用を控えるように注意している。過積載による転覆事故が相次いでいるからだ。ろくな補償もしない。命あってのものだね。
 岸壁で6歳くらいの少年が警備員とやりあっている。親は?いない。乗船券は?持っていない、20ペソあるからこれで。さすがに収賄しなかったが、少年はこの厳重な警備の中をどうやってきたのか、警備体制が問われそうだ。荷物検査のあと乗船までの通路はフェンスすらない、共犯者がいれば荷物の追加は無防備フリーパス。テロ対策という意識は感じられない。給料のため言われたとおりやっているだけ。それでいいのだ、俺たちは、、、。

ハーバード大学秘書科大学院の問題に、こんなのがあるそうだ。
ボスが永年の取引先のミスを理由に取引を止める旨の通知を出すように秘書に命じた。秘書のとるべきは、
    1些細なミスで永年の取引先を失うのは考え物だとボスをいさめる。
    2通知を出さずにほって置く。
    3翌日通知書をボスに見せて本当に出してもいいかと確認する。
のいずれか。
1は秘書の分際を超えている。2は業務違反。となると正解は3。ボスは感情に任せて取引を止めるのか、かねてより止めるチャンスを待っていた
のかも、秘書はボスの意を受けて行動しなくてはいけない。

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