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作品名:フィリピンに生きる  新フィリピン事情 作者:佐々木 三郎

第13回   炭焼きカーボンづくり
             炭焼きカーボンづくり

 山の煙りのほのぼのと。あれは?カーボン。煙を目指してゆくと土の中から煙が出ている。兄ちゃんが二人。間もなく掘り出すという。焚口に水をかけると土を除いてゆく。木の形をとどめた炭が出てくる。質のいいのを選んでゆく。20kg袋で800ペソにはなるそうだ。
 木は山から採ってくるから原価は人件費だけらしい。月1万5千はいい商売という。明日の朝、木を並べて燃やすので観に来いと言ってくれた。ストアーではキロ200ペソで販売している,在庫金利販売費を除いても半分は儲けとか。翌日、朝早めに行くと奥さんがまだ寝ているという。椅子をすすめてくれる。小さな娘が3人、日本人がめずらしいのか離れて見ている。ここでは朝は夜明けから正午まで、朝食後と考えるのは日本人。ココナッツジュースを持ってきてくれた。地道な生活をしているフィリピン人は親切だ。
 1時間ほどて男二人が焼き釜の準備を始める。幅1m 奥行き2m 深さ0.8mぐらいか、何もない。そこに山から採ってきた木を並べてゆく。長さ大きさ頓着しない。材質が問題という。ココナツの毛に火をつける。やがて木に燃え移ると少しずつ土で覆ってゆく。木が燃え出したのを確認すると焚口をバナナの木で塞ぐ。これは木なのか草なのか。土をかぶせて休憩。

 コップに水を汲んでくれる。生水は飲むなと聞いていたが彼らが毎日飲んでいるのだからと口に入れる。美味い。水は山から200m程ホースで引っ張ってきている。上水道の普及していないこの国では水は貴重だ。市販のミネラルウオーターはリッター100ペソもする。近所の人も16リッターのボトルに貰い水に来る。たいてい2ガロン、32kg重い。天秤で担いで山道を運ぶ。ひえつき節の長いフレーズが過ぎる。あれは谷で水を汲んで山道を運んだ人間でなければ息が続かない。
 炭焼きの煙があちこちから出だした。火の勢いが強いと土をかけてゆく。煙の出口を一箇所だけにして完了。一週間後に炭になるそうだ。なんと簡単な製法だろう。日本の炭焼きは付きっ切りで火の加減をみるときくが、備長炭だなんてことは気にしない。最低限の効用があればいいのだ。これは文化の相違を端的に示していると思われる。この国は災害に強い。文明は破壊に弱いといわれるが、ここでは破壊すべきものは見当たらない。食うて行くことには事欠かない。小野田少尉がフィリピンの森の中で永年暮らせたのも解る気がした。

次回 謝らない、非を認めない


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