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作品名:フィリピンに生きる  新フィリピン事情 作者:佐々木 三郎

第12回   大家族
                大家族

 初めて他人を思いやることのできるフィリピン人家族に出会えた。勿論個人的にはいい人間もいるが家族ぐるみとなるとこのタタファミリーが初めての事だ。比較的裕福な家庭であるだけではないようだ。ほとんと毎日のように食事に招待される。よく風が
通る木陰で料理をしてくれる。日本の奥戸、釜炊きを高くした台の上に鍋を置き木をくべる。ほとんどが椰子だ。時間をかけて煮込んでゆく。火を見ていると心が落ち着く。子供が八人というがたいてい下の三人の息子だけ。上は親戚のところにいるという。
詳しい意事情はわからないが、誕生日とかクリスマスには帰ってきて食事を楽しむ。

 上が下の面倒を良く見る。子供が多いと自然とそうなるのか。日本と異なるのは炊事は男の仕事。買出しから料理かたずけまで男がやる。奥さんは料理ができるまでおしゃべり。洗濯は女がやるから適当な分担ともいえようか。もう一点、ビール酒は食事がすんでから飲み始める。これには日本人は参る。ところがこの日本人はビールを飲みながら食事をするとわかると料理と一緒にテーブルに置いてくれる。

 話の中心は性、子供がいるのに大声で笑いながら談笑する。それも奥さんが中心、旦那は間合いを計って話しに加わる。母系社会ではないか。万葉の女よりも直情的で官能的でもある。毎日変化のない生活で食って飲んで歌って踊る。あとは子作りか。浦島太郎の生活はこんなふうでなかったか。日本の時間は10倍以上早く過ぎる感じだ。生産性の最先端と最後進との差か。いずれが幸福かは別の議論。ものが不足すると争いがおこる。多すぎるとこころがまずしくなる。むずかしい。

 奥さんの父親主催のクリスマスパーティーにも呼ばれてた。その数150人を超える。子供が17人、孫が一家族4人として136人、ひ孫もいるとか。料理は家族が持ち寄るがまあ、歌と踊りとが延々とつづく。ほぼ全員の写真を撮るのに2時間。フィリピン人は
写真好き。サンキューといわれても焼き増しは出来ない。いつかパソコンを持っていって披露するか。ちなみに写真を断るのはパロパロか援助交際の学生と考えてよいそうだ。

 この大家族を原始部落の原型とみるか、人口問題とみるか。子供たちの生き生きとしていること、そして笑顔。この貧しさなの中でまた、その将来は多難であろうにどうして。それは外国人の見方というかも知れない。職のない奴にも大家族が面倒を見る。くいっぱくれはない。競争社会といずれが幸福か。この爺さん77歳とか。尊敬する。こんな家族をつくり育てたのであるから。近所の女性とくに妊婦が爺さんを訪れる。簡単な触診でいろいろと助言を与える。勿論金もとらない。女たちが安心したように帰ってゆく。感謝の言葉を残して。

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