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作品名:フィリピンに生きる  新フィリピン事情 作者:佐々木 三郎

第10回   第二章 民族の歴史 犬猫は鶏を襲わない
第二章 民族の歴史 

台湾に旅したとき『日本人はどんな民族ですか』と問われて面食らったことがあった。先住民族アイヌも同化されてしまい単一と多くの日本人は思っているのではないか、いや、民族など考えたことが無いのではないか。日本民族については後で見てゆくことにしてこの国の民族の歴史を考えてみたい。つまり台湾では質問に答えることができなかったのである。被植民からの質問に迂闊に答えることはできない。
 民族とは、百科事典を見てみよう。『一定地域に共同の生活を長期間に亘って営むことにより、言語、習俗、宗教、政治、経済などの各種の文化内容の大部分を共有し、集団帰属意識によって結ばれた人間の集団の最大単位をいう。』とある。ふむふむ、端折った話が言語が共通なのが民族。これが俺の定義だ。この国では言語が80以上あるそうだ、民族も同じことになる。この言語たるや薩摩弁と津軽弁との相違どころではない。単語そのものが違う。内の秘書は88の言語があるという、ことは民族も。コミュニケーションはどうする。標準語にマニラあたりのタガログ語と英語を採用。なるほどね。ちなみに12345は、
タガログ語 isa dalawa tatlo apat lima
スバニン語 salabog duabog tilobog patbog limabog
ビサヤ語  uno dos tres kuwatro singko

犬猫は鶏を襲わない

 フィリピンの家庭では犬猫鶏を飼っていることが多い。飼っているというより同居、準家族といったところか。食事が始まると何時となくやってくる。食卓の上のものは人間、それ以外のものは俺たちのものと心得ているようである。魚や鳥の骨などを無造作に与えながら食事をする。早い者勝ち強い者勝はあっても食いはぐれはない。犬猫は鶏を襲わないのかと聞くと『何故そんな質問をするのか』という答え。怪訝な顔をすると大きな蛇が鶏を襲って食うことはあると付け足したが、すぐ別の話題に。ここでは一つの話題をじっくり話すことはまずない。女の会話のようにいくつもの話題が順不同で飛び交い、全体として各話題の脈絡は繋がるらしい。
 犬猫は食っては寝のいい生活と見えるのだが、犬はガードマン以上の警備をする。顔を覚えると吠えないが最初はうるさいこと、オーナーが注意するまで吠え続ける。猫はねずみの他に小さな毒蛇を駆除する。雌鶏は卵を産む。雄どりは闘鶏に出場し1万ペソの賞金を稼ぐ。ただし、敗者には死が与えられる。まさにデスマッチである。
フィリピン人は彼らと家族のように会話ができる。育て方は子供を育てるようだ。彼らは人間を恐れない、逆らわない。しかし、人間は彼らを売り飛ばすとき、食に供するとき何の躊躇いもない。犬猫も例外ではない。日本人にはね、とても食えないが。躊躇いを顔に出さないだけなのか、よく解らないが、おそらく金と食が情に優先するのであろう。

次回 炭焼きカーボン作り


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