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作品名: 椰子の風に吹かれて 作者:佐々木 三郎

第21回   一時帰国2
               一時帰国2

  関西空港は海の中にあるから離着陸は容易なはずだ。悪天候でなければまずソフトランディング間違いない。そうでなければパイロットへぼ。荷物もマニラ発828便と表示がでるので安心できる。麻薬を忍び込まされないようケースには鍵をかけておくべきか。ここは水と安全とただと思っている民族だ。他人の荷物を触るとか持ち去るなど考えたりしないのだ。四国方面のバスに乗る。予約がなくても丁重な応対だ。ここは天国か。定刻に発車する、道路は整備されていて振動もない。予定よりも半時間早く到着。トラフィック渋滞もない。すべてが快適である。ないのは時間、騒音、貧困、思い遣り、いずれが幸せかは別の問題であるが最進国と最後進国との差はあまりに大きい。65年前に空襲で焦土と化した国が今や金で手に入らないものはほとんどない。

 久し振りに寿司が食いたかったが閉店というので餃子とラーメン、生ビールがうまい。寿司屋は10時で閉店か、日本の景気は悪いと聞いていたが地方にも不景気の波は押し寄せているのか。しかしお客様は神様ですはが健在は、ありがたい。海外のサービスの悪さにカリカリ来ていた日本人が帰国すると気分がよくなるはずだ。商売、仕事の根底に世のため人のために役立つこと貢献できることという考えが日本にはあるのではないか。
 日本人がフィリピンでで純日本式経営をすれば10倍以上の生産性を上げるのは容易であろう、したがって、雇用の場が1割に減ってしまう計算になる。もっとも日本並の労働力を育成するのは難しいであろうから、かの国が100年経っても日本に追い付くことは考えられない。そもそも深く考えることは苦手な民族であろう。学生と話してみて日本との学力差はこれからも縮むとは思えない。方や時は金なり、方や時間は無限にある、いずれが良しか、幸せかは別の問題であるが、文化の相違は大きい。仕事もなく家もなく毎日ぶらぶらしている男が食ってゆけるのである。
 厳しい冬に備えて蓄えることが必要ではないのだ。金、食料、その他の財貨はつらい労働の成果であると考える民族とは根源的相違があるようだ。旧日本軍が厚かましく他人に物を強請る土人を切り捨てたのも理解できる。

 毎年8月6日は原爆記念日。今年は戦勝国、投下した国も参列。投下された日本国民は米国民を恨んだりしない。悪魔の空爆も国家の犯罪であって米国民の犯罪とは考えない。米国民の中には日本人を悪魔の子と罵るのがいる。えらい違いだ。これも闇の黒幕の為せるものか。自分たちの犯罪を逸らすために日本軍は悪の限りを尽くしたと宣伝しまくる。ムンテンルパ、東京裁判は連中のために開廷されるべきであった。坂本の胸に連中への怒りがこみ上げてくる。何時か広島長崎沖縄に参拝させてやる。水爆実験の地にも引き回して悔悛の情がなければ死の恐怖、苦しみをたっぷりと味あわせてやろう。黒幕の幹部から順に処刑して行って、発狂して死なすのがいいだろう、ユキや真知子はどういうか。
 日本の戦犯は日本人によって裁かれるべきでだ。戦地に行かないのが罪、戦地で死なないのが罪、祖国に見捨てられた日本兵ほど哀れな兵があろうか。武器弾薬食料医薬品節約のために、意気昂揚のために、全員玉砕を迫った大本営以下の責任を明らかにせずしてなんの戦没者追悼か。

海外にいると日本の良さが目に付くが、痛ましい事件が報じられている。親族なかんずく親子間の殺人は類い希である。日本人が狂ったのか、連中に狂わされたのか。かつて企業戦士といわれ日本の復興に尽くした老人の孤独死。年間3万を超える自殺者。フィリピンにいると日本の良さを感じる、日本に帰ると日本の粗が見えてくる。フィリピンがなつかしく思われる。坂本は蛇ワニ誘拐などを心配してくれていた友人と旧交を温め近況を語る。自分の心がフィリピンにあることを知るのであった。人は土地によって感じ方考え方が変わる。旅の目的は変わった自分を見つめることかも知れない。他の日が旅の語源という説もある。日常からの脱却ということか。
 株安円高はなんだ。日本いじめか。日本の株を売って円で持つ。株が下がっても円高つまりドル安で債務の弁済は安く済むませる。闇の黒幕の手法だ。最大の債権国中国にも元の切り上げを迫る。安く買い叩いた上支払いも値切る。日本債権は米国だけでなく世界的に大きく目減りする。輸出産業は根を上げている。企業買いの終わった頃に円を売り浴びせるであろう。日本企業を所有した外資は円安で莫大な利益を得る、連中の考えそうなことだ。

 恩義は崇高な概念で世界がこれを重んじるならば人類平和への道となろう。日本がこの道の先導者にもっともふさわしいが、世界環境はその実現には程遠い。借りたら返す、買ったら払う、日本人の常識は海外ではいとも簡単に砕かれよう。尖閣諸島漁船問題も日本人感覚ならば早期平和的解決として船長釈放も理解できる。が、人を見て法を説けと言うべし。恩義を感じない相手に恩義を期待するのはやはりお人好しである。国策のためには国民の命など紙くず扱いする政府を相手にするのだから船長釈放は最低でも拘束日本人の釈放と取引してからでも遅くなかったと言わざるを得ない。中国には油田開発の能力などないのだから領土は日本のものと素直に認めて共同開発、人の褌相撲で実をとって良しとすべきであろう。

 坂本の頭に疑問が湧いて来た。@中国は昔から近隣諸国にチョッカイを出してきたのは何故か。A日本政府大和朝廷は唐を日本の属国とふれ回した理由はB平安京への遷都の意図は、などなど。図書館で調べるのは億劫だ。ネットで予習して歴史に詳しい友人に聞くのが手っ取り早いと考えたが不在であった。そもそも日本人とはいかなる民族や。河内音頭は代表的日本民謡と思われるが外国人に聴かせると中近東の音階に似ているという。音階も文化の一つであるから中央アジアの影響を受けていたと考えられる可能性はある。
 可能性ならば、アイヌ以前はさておき北から南から西から東からいろんな人種が日本列島にやってきて住みついた、そしてゆるやかに混血が進み現在の日本民族を形成して行ったと言えよう。混血は雑種強勢となる。人類学的遺伝学的考察は専門家に任せるとしてかなりいい線でないかと坂本は自己満足していた。

次回 有馬温泉n


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