20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名: 椰子の風に吹かれて 作者:佐々木 三郎

第10回   一時休戦 手打式 2の2
                一時休戦 手打式 2の2


 『中国はどうですか』そうね、?小平が日本に来て100年で日本の経済に追いつくといったが、国土人口とも日本の10倍以上の国が50年で日本に追いついたとは傍ら痛い。10倍になって実質追いついたと言えるだろう。旅の疲れと手打式で坂本は酔いが回りだした。陳とカルロスは顔を見合わせうなずく。『坂本先生のお話はとても興味深い、後日改めて伺いたい。これの母親も顔を見たがっているのでお暇したい』そうか、それもそうだな。陳、1000ペソ払え!持合せがない。ではお前の事務所まで付いて行く、現金で払え。

 坂本が会計と電話で告げる。女将が計算書を持ってくる。陳が俺に払わせてくれという。坂本が俺の顔を潰すのか!と怒鳴ると陳が苦笑する。女将、ご馳走さま。カードでいいか?この二人は俺の友人だからよろしく。こちらこそよろしくお願いします。坂本様のお友達なら心を込めた料理を用意いたします。女将は名刺を二人に差し出す。陳もカルロスも名刺を出したが、女将が名前に驚く。よほど女が好きなのか、カルロスが女将の携帯番号をきいている。セヴァスチャンを呼ぶ。三人を送ると告げる。前にカルロす車、後ろに陳の車、3台のパレード。『セヴァスチャンあの車に付いて行け』イエッサー。と、どこからか『セール、どこまで先導しようか』さっきの警官たちだ。いくらだ?十分貰っている。そうか、今度は上品にゆく、行く先は前の車に訊け。OKサー。後部席の陳親子、カルロスが吹き出す。

 カルロスを送って陳の事務所に向かう。マカティーアヴェニュウはよく歩き回ったものだ。事務所に着くと警官が敬礼して去ってゆく。許細君が梅雲を抱きしめる。美形である。金を払えと言いたいのだが、奥に通される。許細君が坂本に礼を述べる。息を呑むような美人とは許細君のためにあるのだろう。『坂本さん、今日は泊まっていってもらいますよ。運転手は帰しました』金の決済は?陳の息子が1000ペソを持ってきた。梅雲が警官買収の話をすると細君が口に手を当てて笑った。王昭君に会えた気がすると坂本が眼を見開く。『光栄ですわ、坂本先生。私の料理もお召し上がりください』と食卓に座らされる。『とにかく娘が無事に帰ってこれたのは坂本先生のおかげですわ。心から感謝申し上げます』王昭君のような美貌のご婦人に感謝されるなら例え火の中水の中、地の果てまでも行きますよ。『坂本先生が本当におすきな女性は?』西施ですね。運命に逆らわず、かつ自分を失わない女性。
 母娘は感動をその眼にたたえて点心を卓上におく。和食のあとのシュウマイはまたよい。老酒が坂本を饒舌にさせる。『坂本先生はどうして女性を大切になさるのですか』白金も黄金も麗しき女性にくらぶればいかほどのものであろうか。女に勝るもの我知らず。『素適ねえ、私も一度でいいからそんなふうに愛されたいわ』許細君はうっとりと話に聴き入る。『私、囚われていたとき私を救い出してくれる人が現れると信じていました。今日現実となりました』梅雲も負けじと男心をくすぐる。
 『うふぉん、坂本先生、日本は何故中国を侵略したのですか』陳志淵が割り込んでくる。『あなた失礼ですよ』なに、これから家族として付き合ってゆくお人だ、率直に話をする日本人は少ない。お願いできますか?いいですよ、ただし、タダでは話せません。報酬は?貴方の望むものを。いいでしょう。

 坂本はゆっくりと話し出した。アメリカ合衆国と戦うためです。えっと、驚くと三人は息をのんだ。『日清戦争はロシアの南下を防ぐため、今度はアメリカと戦争するため?』陳志淵が立ち上がった。絶叫こらえて、話の続きを待つ。日本の植民地政策は東南アジアに展開されるとすれば、日米の戦争避けられない。アメリカの植民地フィリピンに日本が侵攻すれば全面戦争は必至。『そうだとして、日本は何故直接南方に侵攻しなかったのでしょうか』梅雲が身を乗り出す。できなかったのですよ。どうしてという言葉が出てこない三人は固唾を飲むばかりであった。日米を比較すれば軍事力は対等としても生産力、資源などは圧倒的にアメリカが上回る。とすれば、『とすれば、生産拠点、資源を中国に求めた?』と梅雲。ということになりますね。
 坂本は台湾ビールを飲む。『それは家族のために取り寄せたものです。いけますかな。しかし、その判断は甘かったのでは』志淵が続く。判断以前の問題です。『といいますと』息子の志明が話に加わった。情報収集です。正確な情報を正確に収集して分析しておれば、歴史はどう動いたか、私にはわからない。ため息ともいうべきか、沈黙が覆う。『坂本先生はバギオから梅雲を救出にいらっした、お疲れでしょう。今日はここまでに致しましょう』許細君が坂本を部屋に案内する。

 シャワーを浴びると坂本はすぐ眠りに落ちた。夜中に喉の渇きを覚え水を飲む。酔い覚ましの水は格別だ。人の気配に振り向くと天女が立っていた。下弦の月が部屋に淡い光を射していた。手を伸べて坂本を招く。その妖艶さはなんだ。妖魔の化身か。諸手を首に巻きつけ唇を押し当ててくる。坂本がそれを激しく吸ったとき絹のガウンが滑り落ちた。白い裸身が月に濡れ、顔の紅潮と胸の動きが照り出されていた。めくるめく時間は夜明けとともに終わりを告げる。薄れ行く意識の中で妖魔が立ち去って行く気がしたが、精も根も尽き果て不覚にも熟睡してしまった。
 坂本が目を覚ましたとき空腹をおぼえた。気だるさは残っていたが空腹感に耐え切れず起き上がる。シャワー浴びて冷たい水を飲む。ここでは水が最高の飲み物だ。電話がなって食事に呼ばれる。食卓には陳の家族4人が席についていた。粥が美味い。ゆで卵が口でとろける。卓上に料理の数が増えてゆく。
食欲も増して来る。蟹と卵の料理は精がつくとか。肉魚野菜果物、味だけでなく見た目にも楽しい。『坂本先生、フィリピンはどうですか』志明が話しかける。食事が不味い。『連中は空腹が満たされれば十分なのです』かもな、お前たちはこんな美味いもの食ってどうして太らないのだ。『唐辛子は脂肪を燃焼させる、だから大丈夫。いっぱい食っていっぱい女を愛する、最高の幸せ』志淵が話をつなぐ。性食同源か。細君と梅雲がくすっと笑う。細君の眼が怪しく光った気がした。もしかして妖魔は?『こうして家族で食事できること幸せね』親兄の眼が梅雲に向けられる。うれしそうに頷く梅雲は可愛かった。
 外は灼熱のマニラだが高層ビルの部屋は風が良く通る。食後に中国式の按摩をされて坂本は心地よく眠ってしまった。夢の中で二人の美女が代わる代わる坂本の身体を舐めていた。坂本が大きく成長すると一人が目を見張る。それが快感をもたらすの。それを貴女の中に入れなさい。ゆっくり腰を動かしなさい。そう、どの部分が感じやすいかを確かめてゆきなさい。気持ちいい、感じる。マ、愉快。死にそう。大丈夫、死ぬほど気持ちがいいでしょう。アイヤー!あとは自分の感じるままにやりなさい。マー、愉快、アイヤー。やがて坂本は激しく揺すられる自分を見ていた。全身に痙攣が走り女の腰を引き寄せる顔は幸福に満ちていた。女がのけぞって坂本を締め付けると坂本は腰を浮かして女を持ち上げる。放たれた精は女の奥深く達し、女の顔は恍惚に満ちていた。

次回 ユキ1


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 15841