「07式のオペレーションシステムに接続!コントロールをそちらに任せます!」 誠の言葉にモニタの中でぼんやりしていた要が頷く。抵抗する厚生局の07式の左わき腹の装甲板を引き剥がされてマニピュレータで有線でシステムに侵入されても07式のパイロットは投降する意思を示さなかった。 『しばらくそのまま抑えていてくれ。西園寺がシステムを掌握すれば私達の仕事は終わりだ』 安堵の表情。いつも緊張して見える画面の中のカウラの顔が笑顔に変わる。誠も自然と集中していたために額から流れていた汗に気づいて苦笑いを浮かべながら空調の温度を下げた。 『シュバーキナ少佐隊は一階まで制圧したらしいわ。後は……』 『あの化け物の回収か……』 首筋のスロットにハブを差し込んで何本ものケーブルをぶら下げている要のつぶやき。ここにアイシャがいたなら『アンタのほうがよっぽど化け物じゃない!』と突っ込みを入れていたろうと思って、誠の頬にも笑みが浮かぶ。 『誠。にやけて何考えてんだ?』 要の言葉に心を見透かされたように感じた誠は意味も無く頭を下げた。 『システムを制圧した。カウラ。マリアの姐御に連絡して07式のパイロットを抑えさせろ』 誠はようやく力が抜けてだらりとシートに身体を投げた。すでに日付をまたごうとしていた。07式の機能停止により東都警察の機動隊は投光車両を並べて一斉に誠のアニメヒロインの描きこまれた誠の機体と大破した灰色の07式を闇夜に映し出している。 『痛々しいなあ、オメエのは』 そう言いながらタバコを取り出そうとしている要に目をやっていたときに誠の意識に強烈な一撃が走った。 『おい!』 カウラが叫んでいる。誠にはそれが聞こえるが身体が言うことを利かなかった。意識が朦朧として、そして何か恐怖のようなものが全身を走り毛根に血液が流れ込むような感覚が芽生える。 『どうした!神前!』 再びカウラの声が意識から遠くなっていくような状況で聞こえた。とりあえずわずかに言うことをきく左腕でオートに設定して07式に取り付こうとする機動隊の隊員達から離れるのがやっとだった。 『誠!どうしたんだ?顔色が悪いぞ』 要の声も聞こえるが、まるで電波の悪いところの無線通信のような聞こえ方をしていた。異変に気づいたカウラがモニターの中で地下で作戦行動中のランの隊に連絡をつけようとしているのが見える。 『そうか……ランちゃん達が出会ったのかな……彼等に……』 かすかに意識の果てに浮かぶ誠の思い。そしてそれゆえにこの異変があの法術師開発用の生態プラントにされた難民達の意識のなせる技であることを確信していた。 「決着は……ついていないんだ……」 そう思うと誠は全身に自分の力を流し込もうとしてみた。
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