そして一年後・・・・・・・・。
徹夜明けの僕を一時の睡眠から引き剥がすように、携帯がけたたましく鳴る。 かおりからだ。 時計の針は朝の五時前を指している。 相変わらず時間には無頓着だ。
「ねえ。招待状は出してくれた?」
そんな彼女の不意打ちに、僕は一瞬うろたえた。
「うっうん・・・。昨日全員に出したよ。」
「流石にそつが無いわね。頼りになるわ。」
「まあね。」
そう言って慌てて電話を切った僕は、そっとスーツのポケットの中身を確かめた。 今日こそは忘れずに出さないと・・・。 そうそう、間違いなく出席してくれる筈の先輩に、チャイルドシートが付くのかも忘れずに確かめないと。
そう、僕たちは一ヵ月後に結婚する事になった。 少し通勤が厳しくなるけど、郊外に一軒家も購入済みだ。 僕たちの収入ではそれが精一杯だったけど、どうしてもガレージが欲しかったから。 彼女がどうしても譲らなかったのだ。
まあ、ドライブに適した峠には近いし、悪い事ばかりでもなさそうだ。
もっとも、最近僕は運転していない。かおりがキーを持っていってしまったから。
「あなたにこのクルマは任せられないわ。」
彼女に言わせれば、僕には運転の才能は無いらしい。 ちょっと心外ではあるけれど、決して寂しくはない。 むしろ喜んでいるくらいだ。 なにせハンドルを握っている時の彼女はすこぶる機嫌がいいのだから。
そんな僕だけど、結婚式までに忘れずにしないといけない事がひとつある。 かおりには内緒な事だけど。
あの日、アメリカから彼女が帰国した日、僕たちの空白の三年間をあっという間に取り戻してくれたこのポンコツ車にお礼をしようと思っている。 ちょっとキザだけどファミリアに花束を贈るのだ。
これからも色々な事が僕たち二人を待ち受けているだろう。 でも僕は心配していない。 そんな時はまた一緒に走ればいいから。 タイムマシーンのように、いつでも二人をあの日に戻してくれるファミリアで。 完
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